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Ex:05 天空城の魔法騎士(前世エピソード)

 異世界、大和の国。

 ここは日本の文化によく似た発展をした、異世界の極東の島国である。



 大和の国の勇者シンシの宿舎にて。


「シンシさん、お客さまです」

 ミハルが連れてきたのは、この国で見かけることのない金髪碧眼のスレンダーな西洋風美少女であった。


「どなた?」


「それが、言葉が通じなくて」

 ミハルが申し訳なさそうに言った。


「あなたは、私の言葉がわかりますか?」

 西洋風の美少女がシンシに話しかけてきた。


「ちょっと待って。俺は英語なんて話せないぞ・・・て、あれ?通じてる?」

 ちなみに、西洋美少女が話している言葉は現地の言葉であって英語ではない。


「良かった。言葉がわかるひとがいなくて困っていたのです」

 そう言って、西洋美少女が微笑んだ。


「西国の言葉が話せるなんてすごいですね」

 勇者スキルである意思疎通の効果であるが、ミハルは目をきらきらさせてシンシに尊敬のまなざしを向けていた。



 西洋美少女は、アンネロッテと名乗った。西国の天空城に住む一族だと言った。

 そして、しばらくは意思疎通ができるシンシが、彼女の面倒をみることに決まった。



「そんなに遠いところから何をしに来たの?」


「実は、天空城にも変質者が多発しており、大和の国から神官を派遣してもらえるように要請にきたのです」


 変質者とは、普通の人々が闇に浸食されて容貌や性格が変わってしまう現象である。

 変質者は容易に感染して広がるため、大和の国もこの原因不明の事件について頭を悩ませていた。


「大和の国も人手不足で神官の派遣は難しいんじゃないかなぁ?あっ、高額な献金をすると配慮してもらるかも」

 教会関係に詳しい、上級神官職のユキナが言った。


「うーん。お金はありませんが、代わりに私が身体で支払います」


「えっ」

 アンネロッテは、金髪碧眼のスレンダー体型で、西洋人形のように可愛らしいかった。


「私は、こう見えて天空城の魔法騎士です。きっとお役に立ちますよ」


「あぁ、そういう・・・」

 慌てたシンシの様子にアンネロッテは、不思議そうに首を傾げた。




 翌日。

 大和の国の町はずれの広場にて。


 シンシは、ユキナの伝手を使って教会騎士団の騎士団長を呼び出してもらった。


「本日は、お忙しいところをありがとうございます」

 シンシは頭を下げた。


「うわさどおりの風変わりな勇者だな。ユキナが世話になっている」


 ガチムチな騎士団長の圧がすごい。

 自分なにかしましたか?シンシは訝しんだ。


「本日は、天空城の魔法騎士アンネロッテさんの実力を披露したいと思います」


「この娘が魔法騎士・・・だと?」


 アンネロッテはスレンダーな西洋美少女である。

 ウエストも騎士団長の太腿よりも細い。


 今は、胸や手足などに簡易的な鎧兜を身に着けていたので、神話で活躍する戦乙女のような出で立ちであった。


「私の特技は二つあります。飛行と魔法です」

 そう言って、アンネロッテはふわりと宙に浮かびあがった。


 このときシンシ達は、アンネロッテの背中に白い鳥の翼を幻視した。

 アンネロッテはかなりの速度で広場を一周して帰ってきた。


「すごいじゃないか!これは貴重な才能だ」

 騎士団長が目をみはった。


「もう一つ。魔法をお見せしたいのですが・・・少し手加減が苦手で」


「ん?」

 通訳していたシンシは少し嫌な予感がした。


「彼女はなんと言っているんだ?」


「魔法の手加減が苦手なんだそうです」


「そうか・・・とりあえず彼女の能力を知りたい。

 遠慮しなくて良いからあれに向けて思いっきりやってくれ」


 ちょうどそのときに、運の悪い大型の飛行爬虫類がこちらに向かって飛んでくるのが見えた。

 その爬虫類はたまに村や町を襲うので駆除対象になっていた。


「あれに向けて魔法を撃って欲しいそうです」


「わかった」

 アンネロッテは、剣を抜くと飛行爬虫類の方角を指し示した。


「本当に魔法を使っても大丈夫?」

 心配そうなアンネロッテにシンシは無言で頷いた。


 次の瞬間、無詠唱の極大魔法が剣の先から発せられた。

 虹色の光の帯が一瞬で飛行爬虫類を消し飛ばした。


 さらに虹色の光は雲を貫き、はるか彼方まで直進しやがて消えていった。

 驚いて隣を見ると、アンネロッテは魔力を使い果たし気を失って倒れていた。


 その日、空を横切る虹色の光を、大和の国の住民の大半が目撃して噂になった。



 翌日。

 天空城への神官の派遣が決定した。


 アンネロッテの面倒は、継続してシンシが見ることになった。


「騎士団長さんはなんて?」


「アンネさんはシンシに任せるって。

 騎士団長さんは責任を取りたくないって言ってましたよ」


 シンシの質問に、教会騎士団に詳しいユキナが答えた。


「大和の国の姫様がお優しい方で良かった・・・」

 アンネロッテは、ほっと胸を撫でおろした。


「たぶん、アンネさんの実力を正当に評価した結果だよ」

 シンシは、困ったような表情でお茶を飲んだ。



 あの日、騎士団長は包み隠さず正確にアンネロッテの実力を教会の上層部に報告した。


 つまり「アンネロッテが上空から魔法を撃つだけで大和の国が消し飛ぶ」と報告したのである。


 教会の上層部は頭を抱えた。

 神官の派遣を渋って機嫌を損ねると、極大魔法を撃ち込まれると考えたのである。


 本人にその気が無くても、とんでもない強制外交であった。



「しばらくのあいだですが、お世話になります」

 そう言って、アンネロッテは頭を下げた。


 アンネロッテが勇者チームに参加することになった日の話である。


--

 このエピソード中のアンネロッテ

  レベル25程の魔法騎士。魔法の威力制御ができない。

  飛行と魔法は天性の才能。極大魔法を放つと魔力切れで倒れる。


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