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例えば俺の前世が勇者だったら、見知らぬ美少女が次々に押しかけて来たりするのだろうか?  作者: ゆす


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4-2 大きな犬とお弁当

 アンネロッテ・ヴァルウッドは、金髪碧眼の色白スレンダーショートカットの西洋美少女である。

 片言の日本語会話からは想像しづらいが、外国留学できるほどに成績優秀な才女である。



 ある日の朝。

 アンネロッテが来日して、数日が経過した頃。


 アンネロッテは、登校途中に「お弁当バック」が無くなっていることに気が付いた。

 あの万能家政婦の美春が作ってくれた、冷めても極上に美味しいお弁当が入っているバックである。


 思い返すと大きな荷物を持ったご婦人の手助けをしたときに、学生鞄と一緒に地面に置いた記憶があった。


 あわてて周囲を見渡すと、薄汚れた大きな野犬がお弁当バックを咥えて歩いていた。

 あっと、目が合ったとたんに駆け出す野犬。アンネロッテも野犬を追って駆け出した。


 アンネロッテは、人並み以上に運動ができるが野犬の走行速度にはかなわない。

 徐々に引き離されていく。

 やがて、野犬はひとごみを避けるように細い路地に逃げ込んだ。


 なお、アンネロッテは、通学路周辺の地形を完璧に把握している。

 そのため、最短距離を示すルートを素早く割り出すことができた。


 アンネロッテは、「本日工事休止中」と書かれたビルの建築現場をショートカットすることを選択した。


 ひらりと二メートル程の柵を飛び越えた。

 鉄筋で組み上げられた建築物の隙間を減速することなく、くぐり抜けた。


 アンネロッテは、工事現場の裏手には高低差があり、柵を飛び越えると5m近い段差があることを知っていた。

 だが、アンネロッテは、躊躇することなく柵の上端を蹴り飛ばしてさらに上空へと飛び出した。


「みつけた」

 宙を舞うようにふわりと跳んだアンネロッテは、お弁当バックを咥えた野犬を眼下に見つけた。


 野犬を飛び越えた先には電信柱が建っていたが、それも想定の範囲内であった。

 電信柱を斜めに蹴り飛ばす。

 減速しつつ軌道を変え、道路沿いの外壁を駆け下りて地面に転倒することなく着地した。


 目の前には、驚いた様子のお弁当バックを咥えた野犬がいた。

 そして、その後ろには一人の女性の姿があった。


「あら、アンネちゃん」

 その女性は、今朝別れたばかりの下宿屋の万能家政婦、白上美春であった。


 追い詰められた野犬が、圧倒的な運動能力を見せたアンネロッテと小柄な和風美少女の美春を比較してどちらを脅威と考えるかは明白であった。

 野犬は小柄な美春に向かって駆け出した。


 アンネロッテはあわてて追い駆けるが距離があるために間に合わない。

 周囲を確認せずに野犬を追い詰めてしまったばかりに、いつもお世話になっている美春を危険に晒してしまったことを心の底から後悔した。


「みはる よけて!」

 大きな野犬が小柄な美春に激突する。

 そう見えた瞬間、大きな野犬の身体が垂直に跳ね上がった。


 アンネロッテが困惑し、気づいた時には野犬は地面に横たわっていた。

 その野犬の上には美春が両足を揃えて座っている。


「これ……どういうこと?」

 地面に横たわる野犬は身動きひとつしない。


 おそらく、美春が野犬を投げ飛ばした。

 怪我をさせないようにやさしく着地させたあとで、絶妙な重量配分をもって野犬の身体を極めて、動けなくしているのではないかと推測した。


「忘れ物をお届けしようとしたのだけれど、途中で会えてよかった」

 そう言って、美春は立ち上がった。

 野犬は力量差を悟ったのか大人しく座っている。


 そのときアンネロッテは、昨夜見た夢の内容を思い出した。

 最近のアンネロッテは、前世の記憶を夢に見ている。


「みはるは まえに どこかで あったことが ある?」

 美春は、夢で見た淡い燐光を放つ妖刀を背負ったニンジャの少女にそっくりだった。


「あーその……下宿のみんなにはナイショだよ。ちょっと恥ずかしいからね」

 そう言って、美春は可愛らしく微笑んだ。



 その日の夕方。

 アンネロッテが帰宅すると下宿に新しい住人が増えていた。


 アンネロッテのお弁当バックを奪って逃走したあの野犬である。

 薄汚れていた身体は綺麗に洗われ、夕日を反射して金の光沢を放っていた。


 そして、現在は大人しくお座りをして、進士になで回されていた。

「なんで いぬがいるの?」


「おぉ、アンネさんおかえり。触ってみてよ。この子もふもふだよもふもふ」


「もふもふ とは?」

 アンネロッテがおそるおそる手を伸ばしてみても、大きな犬は大人しく座っていた。

 ゆっくりと撫でてみるとふんわりと弾力がある毛並みがとても気持ちよかった。


「おぉ、これが もふもふ」

 アンネロッテも、その手触りにはすぐに気に入った。


「うちで番犬がわりに飼いたいって、美春さんが連れてきた」


「そうか わかった よろしく もふもふ」

 そう言って、アンネロッテは微笑んだ。


 下宿に新たな住人「もふもふした犬」が増えた日の話である。



 もふもふした犬が考える下宿屋内の順位


 1.白上美春  (絶対的リーダー)

 2.花方雪奈  (なんだか偉そう)

 3.アンネロッテ(空を跳ぶ。足がはやい)

 4.(自分)

 5.大湊信士  (よわい。保護対象)


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