4-1 金髪碧眼の美少女
黒目黒髪の青年、大湊進士は、ごくごく普通のサラリーマンである。
ちょっとブラックな会社にお勤めなので、ふだんは何もしたくないダメ人間である。
祖父母から管理を受け継いだ少し古いが大きな一軒家を下宿屋に改装して、二名の美少女と住んでいる。
ある日の日曜日。
大きな荷物を持った金髪碧眼の美少女が訪れる。
アンネロッテ・ヴァルウッド。年齢十六歳。
片言の日本語でそう言った。
髪は絹のようなサラサラな金色で、青い空色の瞳。透き通ったような真っ白な肌色。
肩は細くて小さいスレンダー体型で、西洋人形のように可愛らしい少女だった。
「進士またやったのね?警察に出頭する準備はOK?」
「またってなんだよ」
今どきの美少女の花方雪奈の言葉に、進士は冷や汗を流す。
新手の詐欺か?
いや、そもそも日本語しか話せない俺に外国人の知り合いなんて存在しない。進士は訝しんだ。
「これ よんで」
西洋美少女アンネロッテは、そう言って進士に手紙を手渡した。
幸い手紙の内容は日本語で書かれていた。
差出人は世界一周旅行に出かけた進士の祖父母であった。
アンネロッテは、ミッション系の女子高に編入するため来日したことがわかった。
しかし、手違いで日本のホームステイ先が見つからず困っていたので、進士に手助けするように書かれていた。
「書類も整っているし、とりあえずこの高校に連絡をしてみるか。しかし、今からホームスティの受け入れ先を探すのは大変そうだな」
「あら?うちでいいじゃない。この下宿にはまだたくさん空き部屋があるわよ。それにこの子、なんだか他人という感じがしないのよね」
「あえて話題を避けていたのに。また女性が増えるのはちょっと……」
すでに手遅れのような気がするが、女性がいると気をつかう。
「あんた本当に下宿屋を経営する気があるの?」
「食費しか払っていないおまえが言うな。えーと……受け入れ先が見つかるまではこの下宿で面倒をみるよって、英語でなんて言うんだ?」
「私が話しましょうか?」
そう言って、小柄な美少女の白上美春がアンネロッテに英語で話しかけた。
「美春さんカッコいい」
進士たちは尊敬のまなざしで美春を見つめた。
美春曰く。
「外国人のお世話をすることもあるので日常の英会話も習得済み」とのこと。
美春は、こう見えて家事がなんでもできる万能家政婦さんなのである。
「みなさん しばらくのあいだ おせわになります」
そう言って、アンネロッテはちょこんと頭を下げた。
西洋美少女アンネロッテの下宿が決まった日の話である。
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登場人物紹介
アンネロッテ・ヴァルウッド
海外出身の「アンネロッテ・ヴァルウッド」は異世界転生者である。
金髪碧眼の色白スレンダーショートカットの西洋美少女であり、端正な顔立ちで西洋人形のように可愛らしい。
前世では、空を飛ぶ特技を持ち、索敵と遠近両方の戦闘をこなせる魔法騎士として、勇者を助け仲間たちと共に魔王城まで到達したが、あと一歩のところで敗北した。
通称、天空城の魔法騎士。
現世では、前世の記憶を持たず海外の貧しい家に生まれたが、成長するにつれて前世の 記憶をおぼろげに思い出している。
記憶力と運動能力が抜群に高く、成績優秀者として日本に留学する。
内心は義理堅く、前世と現世で受けた恩は絶対に返そうと思っている。
彼女は、進士の祖父母から託された手紙をもって日本へ旅立った。
「このご恩。お金はありませんが、代わりに身体を使って返します!」