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六話

山の中、どこからか何かがひび割れるような音が響く。そして森の景色の一部が砕けた。まるで鏡が割れて砕け散るかのように粉々になっていく。ふとその割れた景色の一部から坂川が飛び出してきた。坂川は斜め45度より急な山の斜面をだんごむしのように転げ落ちていった。坂川はうっそうとした森の中を転げ落ちていったがやがて視界が開けてゆき草花がクッションとなり、その場でうずくまるようにして動きをとめていた。29分後、坂川が目を覚ますと「あれ、ここはどこだ?クッソ、暗くてなんだかよく分からない。」と最初の一言がこれだった。坂川の周囲は既に360度全てが暗闇に満ちた世界に覆われており、視界の届く範囲がせいぜい1メートルが限界だった。深い闇の中、浮かんで見えるのは自分の姿だけなのだ。自分の近くに流れ込む涼やかな風が、どこか気分が酩酊する様な不快感を伴っている。駆ける足はまるで地に張り付くように、踏み込み一つごとの気力を奪い取る。感触こそ地面の上を踏んだ感覚があるが、眼下はうっそうとした暗闇に呑まれていて識別ができない。ふと振り返れば、先ほど坂川が歩いてきたはずの地面の足跡すらも、暗闇に呑まれて見えない。息は白くなり、坂川はそれを眺めて空を見上げる。空は丸い月が浮かび、清浄に満ちた輝きが大地に降り注いでいるにも関わらず、目の前の世界は暗すぎる。まるで、闇に落ちたように。そこには空以外に何一つ見えるモノの無い夜が広がっていた。

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