四話
次の日の朝、坂川は寝起きして目を開く。視界には昨日までとは打って変わって、見慣れない天井が映る。満(夢……か)坂川は大きく息を吐く。心臓が激しく脈打っているのを感じる。坂川が息を吐いた時、「…………」
それは安堵の溜息ではなくただ呼吸をしただけのようだった。それでも坂川は少しは気が楽になった。満「良かった……」坂川はそう呟くと空を見遣った。今日の空は雲一つない快晴の空が広がっていた。太陽の光が坂川の目を掠めていくようで眩しいほどに目の奥が染みる。坂川が寝ていたベッドの横の机はワックスが塗られているのでその反射で余計に光が眩しい。満(あぁそうだったな、僕は異世界へ来てたんだった、この見慣れない天井も机もいつかは見慣れたものになってしまうのかなぁ…。) 机の上には時計が置かれていた。満(今は7時か、朝食は8時からって言ってたし、そろそろ行った方が良いかな?)そんな事を考えながらベッドの毛布を整えてから着替えを始めた。数分後、用意された白地の服に着替えた坂川は自室を出て階段を下ると食堂へと続く廊下に出た。食堂では、修道女達が朝食の準備をしていた。
「おはよう御座います!」と、坂川が挨拶すると、 修道女達も「おはよう!」と返した。修道女達の手伝いをしてしばらく待っているとキッチンから良い匂いが漂ってきた。そして数分後、坂川の目の前には美味しそうな朝食が置かれていた。ちなみに今日のメニューは白米・コーンスープ・和物である。坂川は手を合わせて「いただきます。」と言うとその朝食を食べ始めた。それから坂川は修道院(避難所)を出て街の散策を始めた。最初は中央広場にある大きな噴水の近くで朝市をやっている露店を見て回った。武器屋に行った時にはある剣にどうしても目が行ってしまい思わず手に取った。剣の刀身は綺麗な模様が彫られていた。鞘から抜いてみると刃の部分も綺麗で、切れ味も良さそうだった。見るからにとても良い品だと思った。
「この剣はいくらですか?」と、坂川は武器屋の店主に尋ねた。
「金貨5枚だよ!」と、店主は答えた。坂川は舌打ちをして剣を棚に戻した。
修道院からは生活必需品は支給されても、お金は支給されないのである。「どうされましたか?」と、武器屋の店主が尋ねた。
「この剣が欲しいのですが、お金を持ってなくて」と答えた。「ああ、そういうことかい…すまないねぇ、こっちも商売でやってるから…我慢してくれ。」と、武器屋の店主は言った。
坂川はオーバーに肩を落として凹んだ。そして「やっぱり……異世界でもお金がないと何もできないのか……」と呟いた。「わかりました。」と、坂川は俯きながら言った。「すまないねぇ、でも何か困ったことがあったら話を聞いてくれ。話を聞く分にはタダだからよぉ!」と武器屋の店主は言った。坂川は残念そうな顔をして店を出た。あとになって坂川は(お金を稼ぐ方法を見つけないとな……)と思った。坂川は、異世界で生活するためにお金を稼ぐ方法を考えた。
夕食を済ませて食堂でくつろいでいると坂川が修道女に声をかけた。「あのっ、ちょっといいですか?」と、坂川が言うと修道女は笑顔で答えた。修道女「はい!何でしょうか?」満「あのぅ…職を探したいんですが……」と言った。修道女「そうですね…それでどのような職業をお探しですか?」満「それがそもそも就職したことないし、というかどの職業もよく分からないので何とも…」修道女は「えっと…それは難しいですねえ」と、言った。「そうですよねぇ…」と坂川は肩を落とした。さらに修道女は続けて「よければ修道院の畑仕事を手伝ってくれませんか?ちょうど人手不足ですので……」と、言った。それを聞いた坂川は思わず天にも昇るような気持ちでガッツポーズを取り、飛び跳ねた。この修道院では公共事業のような事を修道院自ら行っているらしい。坂川は喜びを体現したまま「はい!喜んでやらせてもらいます!」と答えたのだった。
翌日から坂川は修道院の手伝いを始めた。朝起きると朝食を済ませて修道服に着替えると、修道院の畑へと向かった。まず手始めに鍬を使って土を耕した。その後、雑草を抜いていく。そして種を蒔いた。それから水やりをする。最後に収穫した野菜を修道院に運んだ。坂川は、この仕事をするうちに体力がついてきたような気がした。坂川はフゥっと深く息を吐いて気合いを入れると作業に取りかかった。やがて時は過ぎ、「ふぅ……疲れたなぁ……」と、坂川は思った。「お疲れ様です!お昼の時間でーす!」と、修道女が労いの言葉をかけた。
その後、昼食を摂ってから午後の作業に取りかかった。今度は開墾作業だ。鎌を使って雑草を刈り取り、一箇所に集めることの繰り返しだ。坂川は黙々と作業をした。その後は夕食までずっと働いていた。坂川は修道院に戻ると夕食を済ませて自室に戻った。直後、ベッドに倒れ込むと深い眠りについた。