えええええええええ!
マザーハーロット様は険しい表情で呟いた…
まあ…骸骨だから細かい表情の事は僕にも分からないが…
「な、なんでや…姐さん…アンタ…グラスが葡萄酒で満ちたら願いを叶えたるって言うたやないか…」
当然はしゃいでいたジーナの表情もすぐに変わってしまった…
「杯をよく見るのじゃ…」 「えっ…」
マザーハーロット様は祭壇の上に葡萄酒の杯を置いた…後少し…なみなみと注がれているとは確かに言えない…
「こ、こんなもんやで…こんなもんやないと…ちゃんと持って飲めへんやないか…
ええやん…姉ちゃん…これ位で…」
「それだと願いは叶わぬかも知れんぞ…」
「……!」
マザー・ハーロット様の発した一言で興奮していたジーナも言葉を失ってしまった。
「お主達は昔のバビロナを完全な形で復活させたいのであろう…?時間を全て巻き戻す事は不可能かも知れないが…お主達が失ってしまった時間は取り返せるやも知れん…
しかし…その為には完璧を期せねばならん…
中途半端なチャレンジはやめておいた方が良いのではないか…?」
僕はガックリと座り込んでしまったジーナの肩に
手を置いた…
「…と、殿…どないしよう…このままやったら…」
「ジーナ…何故…そんなに落ち込んでいるんだい?
さあ…次の式を始めようよ…」
「えっ…?殿…今…何て?」
その時、ジーナにビビッと電流のような感覚が走った…彼女に急に笑顔が戻る…
「…分かった!殿…!天才やなあ…もう一回式をやり直せば良いだけやん!そしたらウチがもう一回…」
「ダメじゃ…」「えっ?」
「そなたはもう婚礼を挙げたではないか…
婚礼というものは全てを相手に委ねて相手の全てを
受け止める…覚悟を皆に披露するような儀式よ…
そんな軽い気持ちで行うと逆に葡萄酒が減ってしまうかもしれんぞ…」
「そんなあ…」ガックリと項垂れるジーナ…
「ええやんか…姐さん…後一回だけ…な!な!」
「ジーナ…無理は言っちゃダメだよ…」
僕は彼女を慰めようと歩み寄った…
「うわぁぁぁぁん!殿…どうしたらええんや…
ウチ…ウチ…」
「こら、お主…泣くでない!泣いても何も解決せんぞ…」
僕とジーナの側に実体化したヴァルが現れて彼女を慰めようとしてくれた…
「そうだよ…ジーナ…ヴァルの言うとおりだよ…
ところでヴァル…もう準備は出来たの?」
「は…?準備…?優也…お主何を言っておるのじゃ…わらわが何の…」
「そんなの決まってるじゃない!僕と君の婚礼の式だよ…嫌だなあ…」
「そ、そうか…わらわとお主の…
えっ!ええええええええええええ!」




