七つ首のバケモノ
そのくすんだ骨董品のような金色のランプをジーニャが手に取った…
「遂に…遂に…見つけた…」
ジーニャは魔法使いの前世…精霊としての今世が頭の中で走馬灯のように流れた。
そして…自分の嫌な所も曝け出して…
それでもその全てを受け止めてくれる東方の異国から来た仲間達との出会いに心から感謝した。
「優也様…皆様…本当にありがとうございます。
我儘かもしれないですが、私は私の前世…あの豊かだったバビロナをもう一度蘇らせたい…
願いが叶ったら私は国の為だけではなく、私を仲間だと受け入れてくれた皆様の為に尽くそうと思います…
願いを叶える事をお許しください…」
ジーニャを見つめて笑顔で頷く優也達…
「勿論ですよ…それはバビロナの宝物です。
バビロナの為に使う事が当たり前なのですから…」
溢れてくる涙をジーニャは拭わなかった…
優也達に向かって頭を下げて彼女は心から
「ありがとうございます!」と伝えた。
自分の姿が曲面に歪んで映る金のランプ…しかし…永い間使われてなかったからか埃が溜まってそのせいでくすんでいるのだろうか?
その時、ナギさんがジーニャさんに淡い緑色のハンカチを差し出された。
「こんな綺麗なハンカチーフ…よろしいのですか?」
「差し上げますわ…どうぞお使いください…」
「ナギ様…お気遣いありがとうございます…」
ジーナはナギをジッと見つめた…
「ありがとうな…アンタ…姉ちゃんにも優しくしてくれて…
プロやと思ってだけど…ウチの思い過ごしやったんやな…堪忍してな…」
「え…?プ、プロ?」
「な、何でも無い!こ、こっちの話や…アハハハハ…」
ジーニャはハンカチでランプを磨き始めた…
すると…
ランプの先から煙が立ち上がった。
「わっ!」「おおっ!」「きゃっ!」
優也達は驚いて…
取り分け驚きのあまりジーニャは持っていたランプを床に落としてしまった…
不思議なことにランプは光を放ち床にゆっくりと落ちて…まるで置かれたかのようにしっかりと立っていた…
煙は天井に着く勢いでどんどん大きくなっていく…
やがて煙の中から僕達の眼前にとんでもないモノが姿を見せた…
僕の身長を越えるかというくらいの巨体に長く蠢く一、二、三…七本の首、四本足の竜の様な化け物…
「しょ、召喚獣かっ!」
僕達全員が魔法で撃退しようと身構えたその時、
「待つのじゃ…優也…!」 「えっ?」
ヴァルが僕達の前に立ち、左手で僕達を制した…
「あれを見るが良い…」そう言ってヴァルは七つ首の化け物の背中を指差した…
言われるようにヴァルが示した先を見ると化け物の背中にジーニャやジーナのような服装の女性が乗っていた…
…この召喚獣の召喚主か…?
そう思った僕はその綺麗なアラビア衣装の女性の顔を見てギョッとした…
「ガ、ガイコツ…」
そう…服から覗いているその女性の顔や身体の部分は骸骨であった…
後退りする僕達に骸骨の女性は重く…周囲に響き渡るように口を開いた…
「わらわを呼び出したのは誰じゃ…?」