遥かなる面影
「コ、コッカトリス…?」
「そうじゃ…空を自在に飛ぶ上に特筆すべきはその超スピード…ベヒモスと同じで魔法無効のオーラに覆われておる…イミテもこちらの手は知り尽くしておる以上…拘束するのは至難の技よ。
となるとおチビ達のガンマータも使えん。
それに奴の石化や毒の呪いは広範囲攻撃…他にも面倒くさいことをしてくるからイミテの阿呆にはピッタリの奴じゃ…」
ナギさんが首を傾げる…「でも何故あのボートから脱出出来たのでしょう?魔法や召喚術が使えないように結界を張ってあったのに…」
「ソーディア王女よ…結界というものは完全に魔力を封じられるものではないぞ。実際お主達はテレパシーで話したりはしておるじゃろ。それに外からの働きかけには強いが中から外に働きかけることには意外と盲点があるものじゃ…例えば微弱な召喚魔法で小さなネズミのようなモンスターを出して縛られていたロープを切らせる事くらいは出来るじゃろうて…そしてボートから海に飛び込んで召喚魔法で呼んだそのコッカトリスに乗れば何処へでも行けるというカラクリじゃろう…波が高くとも一瞬で召喚が可能なら飛び込んでも大丈夫だと思うぞよ…」
「な、なるほど…」
僕達はヴァルの説明を聞いてイミテが追放されてからの彼の行動を想像することが出来た…
「…感心しておる場合では無いぞ…問題はどうやって奴の動きを止めるかじゃな…もう以前の方法はイミテも分かっているし、コッカトリスのスピードの事もある…これは一筋縄では無理じゃな…」
こ、この人ら…本気や…私ら精霊でも石に変えられてしまう怪物に本気で挑もうとしてる…
ウチも姉ちゃんも…バビロナの人らはみんな逃げて…生き延びてきた。だから姉ちゃんもみんなを守ろうと…命を繋ごうと頑張っている。それが間違っている事では無い…でも…
ジーナはテーブルに着いてみんなと意見を出し合って考えている優也の顔をそっと見つめた…
優也の面影にバビロナの人々を逃すために刀を抜いて神殿から侵略者に向かって飛び出して行った…ジーナとジーニャが最後に見たシャブリヤールの姿を思い出した。
そうだ…シャブリヤール様は私達の為に闘って下さったんだ…逃げるだけじゃなくて私達も闘わなきゃ…今の私は殿と未来を勝ちとるんだ…
ジーナの瞳に小さな…とても小さいが…確かに光る決意の光が現れた。
「殿、皆さん…あの怪物の動きを止められたら良いんですよね…!」
「ジーナ…何か良い案があるのかい?」僕は彼女を見つめた…
「姉ちゃんにも手伝って貰わんとアカンのですが…
姉ちゃんの使うグラビトンという魔法は空間の一部の重力を驚異的に上げる事が出来ます。私らでアイツをその空間に追い込めたら…」
「グラビトンじゃと…」
「ヴァル…知ってるの?」
「ああ…忘れ去られた極大重力呪文…
レガシーと呼ばれる魔法の一つじゃ。
まさかバビロナ王女が使えるとは…」