幻の秘宝を求めて
笑っている優也を嬉しそうに見ていたジーナはふと我に返った…
「そうや…姉ちゃんがあの男に…助けなアカン!」
踵を返して神殿から出ようとしたジーナをヴァルプルギスは呼び止めた…
「ちょっと待て!お主…見当はついておるのか?」
「きっとあそこや…丘の上にあるバビロナ空中庭園…あそこを二人の愛の巣にするっちゅーて話しとったわ…」
僕達は神殿から出て木々の向こうの広大なバビロナの北側を眺めた…
神殿の横には大きな川が流れており、それを遡って行くと丘陵地帯…山岳地帯へと続いていた。
「あの山の麓の辺やわ…」ジーナが指差した方を見ると小さくしか見えないが…なるほど…確かに芸術的な造りの建造物らしきものが見える…
僕は横にいるジーナに気になっていた事を訊いて見ることにした…
「ジーナ…一つ理解らないことがあるんだ…」
「は、はい…殿…今まで隠し事をしていてすんません…もう何でも訊いてください…」
「何故…そのバビロナを支配しようと企んでいる男は君達を狙ったの?王朝は千年以上も前に滅びているのを知らなかったの?」
「…その男は国王ながら不遇により国を追われてしまったと言うてました…
ウチらを襲った…あの怪物の背に乗り…空から現れたんです。最初に降り立ったんは皆さんもご覧にならはったあの城下町…」
「あの誰もいない荒野のような街だね?」
「はい…ウチらバビロナで生き残った全員が精霊として新たに生を受けました…殿もご存知やとは思いますが私達の身体は光の粒子…魔法の類は効かへんのです…ただ…一つを除いては…」
「それは…?」
「殿もご覧になったんでしょ…ウチが石にさせられたんを…」
ヴァルプルギスが横から口を挟んだ…
「石化の呪い…じゃな…?」
ジーナは小さく頷いて…話を続けた…
「バビロナが滅び…それを滅ぼした国々さえも忘れ去られた今、森から出てウチや姉ちゃんのように人間の姿で暮らす者の方が多くなりました…
姉ちゃんはシャブリヤール様の意志を継いで精霊の街としてバビロナを復興させようとしたんです。
そしていつか…」
「…いつか?」
「…いや…えーっと…城下町の人に言葉巧みに取り入ったあの男はバビロナのとんでもない秘密を知ってしもうたんです…」
「秘密…?それは一体…?」
ジーナは辺りを見渡して…「殿だけにコッソリと教えますさかいに…内緒にしといてくださいね!」
そう言って彼女は僕の耳元で囁いた。
「わ、分かった!」
「バビロナには古くから伝わる幻の秘宝があるんです…使った者が何でも一つだけ…どんな願いも叶えて貰えるという凄いお宝です!」
「えっ!何でもかい?一体そのお宝とは…」
「ズバリ!魔法のランプです…」
「ま、魔法のランプ…!」