ジーナの秘密
「ヴァルまで…じゃあ…あのジーニャが愛する妹を石にしてしまったって言うのかい?」
僕にはどうしてもこんな事をあのお姉さんがジーナという大切な妹にするようには思えなかった…
「落ち着くのじゃ…優也よ…ミラールの王女もパルテも未来眼で全ての経緯が分かるわけではない…
だから本人に聞くのが一番早いのではないか?」
ヴァルは興奮気味の僕を諫めると祈るように両手を胸の前で合わせた…
暗闇のなかに光のスポットライトがヴァルを照らし出す…舞い散る羽の中に美しい花嫁衣装のヴァルが再び現れた…
…なんて美しい…僕をあの苦しみの中から救ってくれたのがあのヴァルプルガさんの力を受け継いだ彼女なんだな…その神々しさに彼女を見ているだけで心が落ち着いてくる…
ヴァルプルギス・ヴァルプルガモードと呼べば良いのだろうか…彼女は空から舞い降りてきた花束を手にして地上から少し浮き上がった。
「ホーリー」
僕が昔、彼女の力を貸して貰った時使った…全ての闇の力を浄化する呪文を呟くように唱えた…
するとジーナの姿をした石像から灰色の
気が彼女が翳したブーケに取り込まれていき…みるみるうちに石化は解けてジーナはいつもの
瞳の輝きを取り戻した…
「おのれ!……あ、あれれ…ウチ…何で…?」
短剣を振り翳して何かに挑もうとしていた彼女は
急に目の前の景色が変わって驚いた様子である。
「ジーナ…大丈夫かい…?」
ジーナは耳に飛び込んできたその優しい声に一瞬で涙が溢れ出す…
「…殿…無事やったんですね…良かった…うわぁ〜ん…」
「大丈夫だから…泣かないで。一体何があったんだい…?」
「アイツは恐ろしい奴や…怪物を操ってウチと姉ちゃんを…」
「怪物…?」僕が首を傾げると巻き髪といつものゴシックロリータ風の黒い装いにもどったヴァルは片方の口角を上げてニヤリと笑った…
「鶏とヘビが混ざり合ったような怪物…ジュエラ王を騙る詐欺師やけど強さはホンマもんやで…それはそうと…殿…一体どうやって毒抜きを…」
「あ、ああ…ヴァル…彼女が治してくれたんだ…」
「へぇ〜…チビっ子姫だと思ってたけど…なかなかやるやん!」「その言葉…お主はブーメランだとは思わぬのか?もう少し石になってたほうが良かったのではないか?」「なんやて…?石に…ウチ…石にされてたんか?」
僕は彼女の顔を覗きこむように気になってた事を訊いた…「ねぇ…ジーナ…お姉さんはどうしたの…?」
「姉ちゃん…姉ちゃんは…あの男と一緒に…」
そう言って彼女は目を伏せる…
「ほう…お前の姉は…石化された妹を放って男と一緒に何処かへ行ったというのか…」
「……」
黙っている彼女にヴァルは意外な事を口走った…
「…これだけ我々もお主やバビロナに関わろうとしてきたのじゃ…もうそろそろ本当の事を話してくれても良かろう…」