心から溢れ出す涙
そして苦しむ優也に寄り添うように側に立ったヴァルプルギスは天に祈りを捧げた…
さっきと同じ白い光のスポットライトに照らされる彼女に舞い落ちる数えきれないほどの白い羽…
幾千と降る白い羽に包まれてそこにあらわれたのは真っ白な花のヴェールに包まれたウェディングドレス姿の美しい一人の女性だった。
いつもの巻き髪ではなく、長いロングのストレート…ゴスロリ風のドレスではなく綺麗なAラインのノースリーブドレスに長いウェディンググローブで美しい花のブーケを両手に持っている…
ただ…凛とした赤い瞳がヴァルプルギス本人だという事を示していた。
「ホーリー…」花嫁姿のヴァルプルギスは小さく呟いて…ブーケの花束を優也に当てた…
その瞬間…ブーケの花束に優也の体から出た紫色のオーラのようなものが吸い込まれていった…
穏やかな表情になる優也…
「ソーディアの王女よ…彼の体力が回復するように回復魔法をかけてあげてください…」
「は、はい…!」
青く澄んだような空のようなヴァルプルギスの声に少し驚いたナギだったが…優也の為に両手を合わせて全精力を注いだ全回復魔法を
優也にかけた…
緑色の風に包まれた優也は頬にあたる空気に気づいて目を覚ました…
「あれ…?皆さん…?わっ…!」
キョトンとした優也に涙を流しながら飛びついて抱きつくプラティナ…
「ダーリン…ダーリン…ダーリン…!」
「優也さん…!」続いてナギも涙を拭わずに優也に抱きついた…
「何よ…二人ともずるいわよ…うううう…」
泣きながらアイも優也に駆け寄った…
ゴルドとマサムネもその様子を見て微笑む…
そして医務室のドアが開き…ミスとリルが優也の元にやってくる…
「わーい!パパ…もうだいじょうぶだよね…?」「ばあばがパパはママがついててくれたらきっとげんきになるって…ほんとうだったね!」
優也は二人を抱きしめて「ああ…本当だよ…
パパはここにいるみんなが居てくれるからもうすっかり元気だ…もちろん…ミスとリルもだよ…」
「パパ…わたしたちのこと…ママとおなじくらいすき?」
優也はミスとリルに笑顔で頷いた…二人には言葉なんか要らなかった…その笑顔で優也の気持ち全てが伝わった…
「パタン…」
軽く部屋のドアが閉まる音がした…
二人の子を抱きしめていた優也は「ゴメン…ちょっと行きたい所があるんだ…」
ベッドから降りた優也はみんなが見つめる中、ゆっくりと歩き出す…そして部屋の外に一歩踏み出す…
…廊下の隅で向こうを向いているヴァルプルギスを見つけた優也はゆっくりと彼女に歩み寄った。
「げ、元気になったのか…?」
照れ臭いのか…上擦った声のヴァルプルギスにクスッと笑った…
後ろから彼女を抱きしめて優也は耳元でそっと「ありがとう…」と呟いた。
抱きしめる優也の手に彼女の頰を伝って落ちる涙が一粒…二粒…
初めての感情に…心から溢れ出す涙を止める事が出来ず…ヴァルプルギスは愛する者の名を呟くのがやっとであった…
「…優也…」