瞳の色
彼女は頰を赤らめながらもう一度優也の顔を見る…
「あの…」
優也が声をかけると黒髪の女性はハッと我に返った。そして悲しげに目を伏せた…
「姉ちゃん…やっぱりまだあの人を…」
ジーナも姉と同じような表情を浮かべた…
「申し遅れました…私はジーナの双子の姉…
ジーニャと申します。」
「ジーニャ…さん…」名前までソックリだ…
僕が不思議そうにしていると彼女は「バビロナでは兄弟や姉妹に同じ名前を付けるのはそんな珍しい事ではありません…ジーナも私もジーナとジーニャ…どちらを名乗っても良いのです。それでは皆さんにとって分かりにくいので私の事はジーニャとお呼びになってください…」と説明してくださった。
「…ではジーニャさん」「はい…」
伏し目がちな彼女だったが僕は遠慮なく「ここは間違いなくバビロナ王朝の神殿ですよね…」「そうです…」
「この神殿はバビロナ王朝の王宮でしょ?
城下町もそうでしたが何故この国には誰もおられないのですか?ひょっとしてジーナが言っていたバビロナ王と何か関係が…」
「ナニヲシテイル…ハヤク…オイカエセ!」
その時だった…彼女の頭の中に男性の不気味な暗い声が流れた…「うっ!」声を上げて苦しそうに頭を抱えるジーニャ…そのままその場にしゃがんでしまった…
僕は彼女に駆け寄り具合を伺った…「だ、大丈夫ですか?」
すると彼女はゆっくりと立ち上がって…「大丈夫…ウフフフフ…」本当に何も無かったように笑った。
僕達はジーニャの目を見てギョッと驚いた…
落ち着いたフォレスト・グリーンの瞳がワインのよう…そう、まるで血を連想させるような赤に変わっていた…
「おや…どうされました…?」「い、いえ…ジーニャさんが大丈夫ならそれで良いのです…」
彼女は玉座に座り直して僕達全員の表情を眺めた…そして口をゆっくりと開いた…
「皆様…こんな遠くまで我が妹ジーナを連れてきてくださって本当に感謝致しております。今後は姉妹で力を合わせて王朝を再建していきます…」
「ジーニャさん…先程のお話ですが…」
「ああ…あの件でしたらご安心ください…
ジュエラ王というのはあの方のご冗談ですわ…私達と力を合わせてこの国を更に盛り上げてくださると仰いました。とても信頼できる方です。」ジーニャは笑顔を見せた…
「でも…」僕が続けると彼女は顔色を変えて
「貴方方は恩人ですが…失礼ながら申し上げます。これ以上はバビロナへの内政干渉になります。本当に感謝致しております。もし褒美をと仰るのなら何なりとお申し付けください…ご用意させて頂きます。ですからこれ以上はバビロナへのお気遣いは無用です。どうぞお引き取りを…」
ジーニャの言葉に僕達は顔を見合わせた…
姉ちゃん…」不安そうな表情でジーナは姉を見つめていた…