金色に輝くジーナ
…夜が明けてまた水平線から太陽が昇った。
ジーナさんは目覚めて…そして僕の首に手を回して口唇にいきなり口づけてきた…
「ジ、ジーナさん…」「…ウチ…本当に殿を愛してしもうたみたい…二人きりでいる今、
殿が生まれてからの事…愛する人の事を色々教えて欲しい…」
僕にはティナという愛する妻がいる…そして愛する家族達や仲間達の顔が脳裏に浮かぶ…
でも彼女に僕の事を話す事自体は決して裏切る事にはならないと思い、僕の生い立ち…愛ちゃんとの高校時代、ティナとの出会い、魔界の人との出会い…ナギさんやソーディアとの絆が深まった事などを彼女に話した…
ジーナさんは自分の事のように時には身を乗り出すように聞いてくれた…
話が一段落して僕達二人は辺りを見回した。
大陸らしきものはまだ見えて来ない…このまま辿り着けない事を考えると…
「ジーナさん…引き返そう…今ならまだ間に合うかもしれない…」「……」しばらく考えて彼女は悲しそうな目で僕を見つめながら「…はい!殿の言う事に従います…」と今にも泣きそうな声で返事をした。
…海に落ちても構わない…泳いででも故郷に帰りたい…彼女の目はそう語りかけていた。
僕は準備してきた大きなリュックから毛布と一緒に真空パックに入れてきたライフジャケットを取り出した。
「ジーナさん…これを着るんだ…」「えっ…」「落ちた時の事は落ちてから僕が考えるよ…君は自分の身を守る事だけを考えるんだ…このまま行くよ…」「…殿…」
ジーナさんは嬉しそうに僕の腕にしがみついて僕をじっと見つめてきた…僕もジーナさんの目を見つめる…本当に可愛い美女だ…こんな美しい彼女を何とかしてバビロナに…
「あっ…」彼女が声を上げた。「ど、どうしたの…?」「殿…あ、あれ…!」ジーナさんが指差した先には小さいが島のような陸地が…
「し、蜃気楼じゃないよね…」「殿…ウソやない…ホンマに陸地が…」どんどん近づくに連れて島のように見えていた陸地がどんどん広く大きく見えて来た…「や、やった!取り敢えず上陸出来る所が見つかった!」「…殿…嬉しい!」
その時だった…じゅうたんの前に大きな波が押し寄せた…
ザッパーン!!!
僕はジーナさんを庇ったが二人ともずぶ濡れになってしまった…
「…と、殿…」「……!」知らず知らずのうちにじゅうたんの高度は低くなり水面近くまで降りてきてしまっていた…
「フッ素樹脂のコーティングの効力が無くなったのか…」無理も無い…ずっと一昼夜潮風に吹かれて来たのだから…徐々にじゅうたんは水分を吸って重くなってきたのだった…
撥水スプレーはかける布地のものが乾いた状態でスプレーをして更に乾いてから効果を発揮する…今、スプレーを使ったところで逆に水分が沁みやすくなってしまう…
ジーナさんはまた僕の顔をじっと見つめた…
「…殿…ウチ…ここまで来れただけでも嬉しいで…もし、波に飲まれたとしてもウチは全然悔いは無いわ…ウチを置いて殿は陸まで泳いでな…男の人一人なら何とかなるかもしれん!ウチは足手まといになりとう無いねん…」