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青年の主張

作者: 野脇幸菜

改行が何度してもうまくいかなかった箇所があるのですみません。

TVカメラを持った人までわざわざ日本から取材にやって来て、話を聞き回っていた時には腹が立った。


やつをここの英雄だと想ってやがるのか。


冗談じゃない。


どうせ何年かしたら帰国して、昔発展途上国で人助けをしてましたみたいに思い出話をするくらいだろ。


英雄でもなんでもないんだ。


こいつは俺たちの知らない知識を知っていると崇められて優越感に浸ってただけさ。



こいつに俺たちの何がわかるっていうんだ。


こいつがここにやって来てから、みんなこいつを信用して頼りにしていた。


まるで神のような扱いだった。


日本という国で学校教育を受けて、食べ物にも困らなかっただろうこいつに俺たちの何がわかる。


みんながこいつを信頼することでこの村のコミュニティーも崩れてきていた。


村長の立場をみんなが軽視し、あいつに視線が集まっていた。

村長自身も自分の娘を日本人の嫁にしようと必死な様子だった。


どうせ日本に娘を連れ帰ってもらえたとしてもすぐ捨てられただけさ。


こいつが来なくても俺たちのペースで問題は解決していたはずだ。


俺たちには俺たちの時間の流れがあるんだ。


考えがあるんだ。


それをこいつが崩してしまったんだ。


しげみに殺した遺体を捨てても青年の苛立ちはおさまらず、遺体を見下ろし続けていた。手に握りしめた奴のポケットの中身を燃やそうと、マッチを出した。


少しでも発見を遅らせる方がいいだろう。


夜中に連れ出したせいか現金は持っておらず、紙が二枚入っていただけだった。


一枚目にマッチの火をかざすと手書きの村の地図だった。


どこに誰の家があるのか、その家に誰が住んでいるのか書かれていた。


燃やしてやった。


もう必要ないこいつには。


死んでるのだから。もう一枚の方にもマッチをかざした。


日本語で書かれている文章のようだった。


しわくちゃの紙で汚れた指のあとがいくつも付いていた。


何度も読み返していたのだろう。


大切に毎日持ち歩いていたのだろう。


マッチの火が消えたのでもう一度つけた。


もう一度かざした。


汚れたあとに隠れるかのように(にじ)んだ文字がいくつもあった。


涙のあとだった。紙がしわくちゃなのは涙が乾いたせいでもあったのだ。


奴のすり減ったスニーカーの裏側を見つめながら青年はその一枚の紙を燃やせないでいた。

批評してもらえたら嬉しいです。

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