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魔法は願いをかなえるか



「次の場所では…きっとうまくやれる…いや、やらなくちゃいけないんだ…」

 ひっそりと立つ一軒家の屋根裏、ぼんやりと光る陣の中心に立つ青年は、焦燥感に駆られていた。

 これが逃避であることも、禁忌に触れる行為であることも自覚していた。

 それでも、ここから遠く、誰も自分を知らない場所への渇望は抑えられなかった。

 腕に文字通り深く刻まれた紋様から血が滴り、陣へと落ちてゆく。


「これで…俺は…」


 輝きが増してゆく陣を、対価を支払い望みを叶えようとする青年を、満月の光だけが静かに照らしていた。



「次の生では…きっと今よりも恵まれた私であれる…そうでなければ私は…」

 大きな屋敷の奥深い部屋、用意された祭壇の前に跪く少女は、絶望に満たされていた。

 これが逃避であることも、禁忌に触れる行為であることも自覚していた。

 それでも、この生を全うしていくだけの心の支えを失った彼女には、もはや今の自分に意味を感じることはできなかった。

 静かに、複雑な紋様の描かれたナイフを手に取る。


「これで…私は…」


 その胸元に突き立てられようとしている鈍色のナイフは、満月の光を受けて怪しく輝いていた。



「「…もう一度、やり直せる…」」



 その日、その時、同時に発動した2つの魔法は、ともに世界に干渉し、理を改変するはずだった。

 魔法の発現後、1つは空間と時間を、1つは命の道筋を捻じ曲げ、術者の望みを叶えるはずであった。

 そのような魔法がそうやすやすと発動するものではない。

 発動のための最低限の対価は魔法師としての命、あるいは生命としての命であった。


 二人が発動した‘時空間転移’と‘輪廻転生’は、発現せずに不発となるはずであった。

 対価と手順は正しくとも、大規模な魔法は世界に拒絶されやすい。

 ましてや、同時に発現などするはずがなかった。

 魔法は失敗し、二人の若者は対価のみを支払い何も得ることなく終わるはずであった。


これは二人の若者の執念が起こした災厄か、あるいは奇跡か。


 その日、その時、発動した2つの失敗作は融合し、時間と空間と命の道筋を確かに捻じ曲げた。

 結果として神の御業ともいうべき‘異世界転生’が発現した。

 術者の望みとは違う形で発現したそれは、彼らを問答無用で導いた。


彼らの知らぬ場所へ、新しい命として。


しばらくは説明パート臭くなりそう

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