国立高校入学編・第一征「入学試験」
␣␣␣天を統べる、天下統一とは誰が始めたものだろうか。いや、この際誰でも良かった。結局は誰が始めるではない。
――――誰が終わらすか、だ。
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␣␣␣桜の花びらが一種の大吹雪の様に舞い荒れる四月。学生の本分は学校で勉強をする――――それがこの社会の常識である。つまり、四月は自らが勉学をするにあたり、適する環境で適した雰囲気の場所に入場する時期である。
――――――――誰が決めたんだと心の底から腹の奥から叫びたい。
␣␣␣······俺は校門の前でただ呆然にこの「学校」という建物を見上げて愚痴を心の中でこぼす。本当は外に零したい気分だが。
「······はぁ」
俺、高橋大輝はため息を吐きながら俯く。この高校というのがおおかた半分そのため息の原因だが残りは全て自分に対して、だ。
␣␣␣この高校、『鉾山第一高等学校(普通科)』は茨城県の中では群を抜くほどの就職率であり日本政府の手厚い資金援助(要はコネ?)を受けていた。日本にはここともう一つ東京にデカい高校があるが、そっちはもっと凄いらしい。
␣␣␣と言っても、この学校も相当だと俺は思う。何たってまず、敷地の広さが0.172平方キロメートル丁度ぴったんこで東京ディザスターランドの半分である。
「はぁ」
「ため息吐きすぎだろ。お前」
␣␣␣今度は現実的なこの『国立』の高校にため息を吐くと、後ろから声を掛けられる。気だるげに俺はゆっくり振り向くと、そこにいたのは茶髪で右目の上の眉毛に縦に傷痕の残る厳つい顔をした正にヤンキー!と相違ない男が立っていた。
「何だよ神足。俺の脳内に干渉するじゃあない。だからヤンキーって言われるんじゃないのか?」
「それを言ってるのはいつもお前だろ······。じゃなくてだな」
␣␣␣俺の友達とも言える存在、神足俊輔が周りをきょろきょろと見回す。神足という苗字は因みに、両親が京都生まれだかららしい。
␣␣␣ともかくつられて俺も神足の視線の先に目をやる。すると、その先で見たのは何とも冷たい視線を送る女子生徒だった。女子生徒は一人で白い髪白い睫毛白い肌青い目でこちらを彼女の全体的な色彩表現通り、氷のようにこちらを睨んでいた。
「······」
␣␣␣見事に目が合ってしまいお互い引けない状態に。うぅ、こういう時はどうすりゃええのですかいと、悩んでいると向こうが愛想を尽かした様にぷいと顔を背けてそのまま昇降口の方へとすたすた歩いて行く。······何なんだよ。
「なんだぁ?あいつぁ」
␣␣␣どう見てもお前ヤンキーだろ、と言わんばかりの目付きと口調で先程の女子生徒を目で追う。どうやら他の生徒と思わしき人間はチラ見した後足速にその場を去っていったが、あの女子生徒は一人立ち止まりこちらを睨んでいたらしい。初日で初対面なのに酷いもんだな······。
「いいから、はよ行こうぜぇ」
「お前を待ってたんだろが」
␣␣␣俺が気にするなよと視線を送り話し掛けると、元々気にしちゃいねぇよと言いたげな目で返答して、そそくさと昇降口に向かう。スポーツバッグをリュックみたいにしょうな。ヤンキーだお前。
␣␣␣兎にも角にも兎も鹿も、こんな経緯で入学式初日を迎えた訳だが、この時点では思いもしなかった。この高校がどれほど残酷なのかという事を。そして、この時の俺の「ここを卒業したら俺、しこたま遊ぶんだ」というフラグ的な意気込みも、見事にフラグ回避をしてしまう事を······。
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␣␣␣まず一つ。
クラス分けがされていなかった。
␣␣␣普通の高校というものの原理を俺が詳しいかとなると真っ赤な嘘となるのだが、教室に直接向かい座席に座り担任の話を聞くというのが普通だと俺は考えていた。というかそれ以外あるかい?
「何が何だか······」
神足が昇降口を入ってすぐの電子掲示板に記された内容を読んで嘆く。うんまぁ、理解はしていたがここでか。
␣␣␣俺はどうして日本に二つしかない『国立』高校が県立高校と同じ一般的な試験だけで合否が出るのだと睨んでいた所だった。だがまぁ少し俺の考えとは違うな。俺はてっきり実力至上主義な学校だと思っていたが早とちりだったらしい。
␣␣␣······さてさて、現状の学校の指示によって、動きの早い奴とここで屯する奴の二手に分かれたわけだ。ここら間違いなく前者が良い選択だと思う。
「おぉい、こうたりくぅん。体育館行くぞ」
「は??······分かった」
␣␣␣飲み込みが早くて結構結構。神足は見た目の割に空気だけは読めるからなぁ。とにかく俺達は、体育館へ直行する事にした。
······とと、
「もっかい確認しておくか。······
『〜国立・鉾山第一高等学校教員からのお知らせ〜
これから本校体育館にて〔入学試験〕を行う。生徒達は早急に体育館に集合するように。また、試験中には完全にお手洗いに行けないため、注意する様に。また、時間内に体育館に入場出来なかったものは即時失格とする。試験内容は現地での説明となる。以上』······ふん、成程」
「何だ?何か書いてあんのか?」
「別に」
「エリカァ!古いわ!」
␣␣␣神足が遂におかしくなり始めたので体育館に行く事にした。これから始める〔入学試験〕というものがどういうものなのかは全く検討がつかなかったが、やるべき事はもう既に決まっていた。俺達は足速に目的地に向かった。その――――
トイレへと。
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