2.白猫と黒猫
新キャラいっぱいです。
突然目隠ししてきた男の顔を見るため、いちおう振り返ってみる。
美しい水色の髪、夜空のような深い紺色の瞳。僕がよく知る、吸血鬼のカインだ。吸血鬼という種族は日の光が苦手で(とはいっても灰になる訳では無い)、夜行性らしい。
年上だからなんとなく、僕は先輩と呼んでいる。
「先輩、ヒマなんですか?」
「だってさー、起きたらみんな寝てんだよ?」
夜に起きたらみんな寝ているのは当たり前だ。先輩は暇潰しに、部屋に来た人へちょっかいをかけているらしい。
「あー、でも…」
「え、なんかあったんですか?まさか、誰かの血を吸ってきたとか…?」
少しの間が空く。
まさか、本当だったんじゃ…
「……正解っ!」
「え、うそ!?」
「うそに決まってんじゃん。美味しい料理食べに行っただけ。あと、お酒たくさん飲んできちゃった。」
なんだ、お酒か…。だからテンションが高いのか。
「でさ…」
「いいから先輩は休んでてください!もう朝ですよ!」
「扱い雑だね!?いちおう先輩…ぎゃっ」
さっきからしつこく話しかけてくる酔っ払いを、近くのベッドに投げる。少し強引すぎたかもしれない。
…さて。
テンション高めの先輩は放っておいて、準備をするとしよう。
〈魔王の城 食堂〉
街の地図、お金、短剣、回復薬、本、その他いろいろ…をまとめた鞄を持って、再び食堂へ戻る。レイナもちょうど同じタイミングでやって来た。
さっそくレイナと魔王の元に向かう。
「詳しい説明は任せたぞ、コスモス」
「はい、お任せ下さい!」
魔王の使い魔コスモスが説明してくれるようだ。
コスモスの見た目は黒猫だが二足歩行もでき、すらすらと言葉を操れる。別の姿に化けているところも見たことがある。隣にいる白猫のノアが相方らしい。
「お2人には、魔王様と街に行ってもらいます。何か買ったりするのは構いませんが、ばらばらにはならないでくださいね?」
コスモスは僕らをじっと見てから話を続ける。
「あと、街では怪しまれないようにお互いの呼び方を決めてしまいましょう。じゃあ…」
そういえば、まだ名乗っていなかったんだった。
僕はレオナルド。みんなにはレオと呼ばれることが多い。名付け親は、孤児だった僕を救ってくれた師匠だ。この話もいつかしよう。
「レイナとレオはそのままでいいですよね?私達は、いつも通りでいいですよ。魔王様は…」
そういえば、魔王は名前が長いんだった。確か、ベルンハルトと名乗っていたはずだ。本当はもっと長くて続きがあるらしいが。
城の図書室に、ここの歴史の本があった気がする。いつか調べてみよう。
コスモスは少し悩んで、あっと小さく叫ぶ。
「そうだ、ベル様にしましょう!」
ポンっと音がする。ノアとコスモスが人間に変身していた。ノアはメイド、コスモスは執事の姿のようだ。猫の耳が生えているが、そこは気にしないでおこう。
コスモスが話し出す。
「ということで、今から街にいきますよ。移動手段は魔法です。」
ノアが、呪文を唱え始める。
すると、目の前が眩しい光に包まれた。思わず目を閉じる。
辺りが騒がしくなる。着いたのだろう。
隣の国。どんな場所なんだろうか。
期待しながら、閉じていた目を開く。
レオくんの秘密、同じ部屋の吸血鬼さんの話、喋る黒猫と白猫…。ワイワイしてきましたね。