第4話 友だち
なんとか生きていこうと就活したり、バイトの面接行ったりしたけど、ダメだった。どこも欲しいのは優秀な人材だった。人手不足と言っても、優秀な人材が不足してるだけで、クズは何人来ようが門前払い。若いから何とかなるよ、縁がなかったね、そう言われてどこも拒まれた。優秀そうに見せかけても通用しない。ちゃんとクズを選別してつまみ出す目を持っている。
そうこうするうち金が尽きた。電気が点かなくなり、水も飲めなくなり、住む家も出なくてはならなくなった。友だちの家に転がり込もうとしたが、友だちも給与が安くて生活に四苦八苦。とても俺の面倒まで見きれない。実家にも帰れない。実家が火の車だから大学入学と同時に上京したのだ。仕送りも断ってバイトで大丈夫って言ってあるから、今更金くれなんて迷惑かけられない。
希子と笑って別れてから半年経ち、季節はとうに冬。いつの間にかもうすぐクリスマスだ。それまで生きてられるのかわからないけど。
寒さと空腹で足取りは重い。必死の思いで友だちの浅山を呼ぶ。泊めてくれなくていいから、何とか1食だけでも。すると、1回きりの約束で浅山は来てくれた。
「バイトはしてたろ?」
「クビになった」
「市瀬は?付き合ってたろ?」
「……別れた」
「……まあ、しゃあないわな」
「あぁ……仕方ない」
近況を話しながら、浅山のおごってくれるショウガ焼き定食を食う。あったかいし、うまいし、泣いてしまいそうだった。呆れつつ話を聞いてくれた浅山は、俺の話を一言でまとめた。
「やっぱり何だかんだ言ったって、世の中金がすべてなんだよな」
「……あぁ」
「学校じゃ理想ばっか押しつけられるけど、現実は愛情があっても金が無いと生きていけない仕組みだ」
「……そうだな」
「逆に言えば、愛情は無くても、金さえあれば生きていける世の中だ。市瀬のことは残念だが、バイト見つけて何とか踏ん張れ」
「……何とか、なるかな……」
「何とかするしかねえよ。金さえあれば愛情は買えるんだからやる気出せよ」
「……愛情って買えるのか?」
金持ちがモテるという意味なのか、それともキャバクラとか水商売のことなのか。どちらでもなかった。得意気な顔をして浅山はスマホを取り出す。
「実は俺、結婚したんだ」
「え!?」
「子供もいるんだ。男の子と女の子」
「本当か!?おめでとう!知らなくて悪ぃ、結婚祝いとか……え、いつ?」
「ま、バーチャルだけど」
「ん?え?」
見せられたスマホには、『オンリーがぁ~る』というオンラインゲーム画面が表示されていた。ツインテールの女の子はアニメ絵で、そういえば浅山はアニメオタクだったことを思い出した。
つづく




