第3話 ウソ
「……ねぇ、大丈夫?」
「……あぁ」
何か言わないと。バカな頭をフル回転させる。
「……あのさ」
「……うん」
「幸せになってくれて、ありがとな」
「……何それ?」
なんだろな。希子が愛しくてたまらないのに、口をついて出た言葉はそれだった。やり直したいとか、あきらめきれないとか言えなかった。希子が好きだから。
希子が幸せになることは俺の幸せなんだ。本当は俺のすることが希子の幸せにつながってほしい。でも、俺が希子を喜ばせることができなくても、希子が幸せであるのなら、さみしさよりも喜びが上回ってしまう。
希子の笑顔を見られたのに、俺が文句を言えるわけがない。それに希子の前でつい笑みが浮かぶのは、いつものこと。俺にとって当たり前のことなんだ。
「あれからどうしたかなって思ってたんだ。元気そうで安心したよ。俺もさ、今、就活がうまくいきそうなんだ。ちゃんと稼いで自立したカッコイイ大人の男になるつもり。それまでは恋愛とか結婚とか夢みてる場合じゃないって現実がわかったよ」
「そっか」
「俺は大丈夫だから。希子ももっと幸せになっていいからな」
「うん、もちろん……ありがとう」
最後は笑って別れたくてウソをついた。就活なんてやってない。けど、ホッとする希子を脳裏に刻み込むことができたからよかった。
別れても心配してくれていたと思う。これでよかったんだ。笑って手を振ろう。神様、いつも信じてなくてごめんなさい。都合よく利用して悪いけど、どうか希子の幸せを守って下さい。俺は大切な人を大切にすることもできないクズヤローだけど、希子は幸せになるべき資格のあるやつだって、雲の上からチェックしてわかってるんだろう?頼む、神様。
つづく




