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第8話-4・〜硝子の天使は崩れた笑顔で

最近、更新が遅い……。申し訳ないです(´`)今回は8-1の続きですね。お知らせがあるので後書きは読んで下さい。

「それが……私の」

 レイラは一口水を含むと私達を見渡した。

「そうです、それが青薔薇姫の所以です。そして我々も――」

 回りの皆は悲しげな顔をし、その中でティーティだけは涙を流して話し始めた。

「私はね、魔物が水晶を渡したあの少女なの。彼が世界を振り出しに戻した後、私は水晶のお陰で妖精に生まれ変わったわけよ」

「貴方が……?」

 ティーティはこくりと頷き、首についた小さな水晶の玉を触った。

「私は妖精になった今でも、あの少女のまま。だからあの時の記憶は全て残っている。私は歴史の記録者(レコーダー)なのよ」

 力なく羽をひらひらさせるとティーティは再び、レイラの肩に座り込んだ。薄く様々な彩りを見せる羽は光に透け、まばゆい輝きを見せる。

 ふわりと飛ぶと朝顔の形をした洋服は精気を溢れさせ、羽からは光の粉が零れて更にまばゆく感じた。

「お話はまだ終わっていないわ」

 そう言うとティーティはレイラの肩に座り、小さな手でぽんぽん叩いた。

「まずここにいる皆がその話に出てきた生まれ変わりで魂が受け継がれていると言うこと。この銃だって魔物が持っていたものだし、ティーティは少女、ナヨタケは君、ナヨタケの従者達は僕ら。そして僕達が生まれて出会えたのはほんとに運が良かった。比較的、苦労せずに済んだからね」

 銃を私に手渡すとレイラはきゅっと口を閉じる。回りの皆も急にしんとし始めた。

 風が私達に吹き付けて全てを乱すように、静粛は私の心を乱す。

「魔物は?」

「魔物は神を殺した。罪を償わなければいけません。なので再び、人の皮を被った魔物としてこの世を彷徨っていて、人間達が罪を犯しすぎた時、罰を与える。それは時には罪の無い人をも大勢巻き込むような何かが起きる」

「どういうこと?」

「馬鹿だな。それを抑えるのがお前、青薔薇姫の役割って事だろ? いい加減分かれよ、そろそろ」

 世の中の誰が見てもムカつく顔で、ジャイロはそう答えた。警告色の黄色の瞳はどことなく真剣な表情で私をじっと見つめている。

 でもジャイロが言っている事は確かに間違っている訳ではないのだ。まだ私に青薔薇の自覚が足りないんだと思う。

「私の役目、青薔薇姫の? でも私は何も」

「それは任せて、私達が貴方に色々世間を教えていくわ」

 サブリナは髪をなびかせると、妖艶な唇を横に広げ、にっこりと笑った。

「そうよ、姫様は心配する事ないわ。私達は元々、ナヨタケを護っていた使いなんだから」

 アリシアもそう言って笑うと、スコーンにクロテッドクリームをつけて一口齧る。

 始まった、いつもこうして流されてしまう。でも今日の今日はだめ。娜夜竹さんの事も知ってしまったんだもの。

「待って。なんだかアバウトだわ!」

「俺が言おう、いつもレイラに任せっぱなしだしね」

 珍しくクロウが口を挟んだ。いつもにやけた顔のクロウが真顔で私を見つめる。

「まず趣旨をはっきり言おう。何処かにいる【堕ちた魔物】を君の中で眠るナヨタケの魔力、俺ら従者、そしてティーティの水晶を使って眠らせてあげて欲しい。世界が潰される前にね」

「はぁ……」

 なんだか難しい話だ。どこからこんな事になってしまったのだろう? だってよくよく考えると私が青薔薇だと100%言えないじゃない。あと私が娜夜竹さんの魂を受け継いでいるかとか魔力使えるかとか。ここまで来ると彼らが従者なのかも怪しい。

「フツキちゃん」

「はいっ!?」

「怪しみすぎ」

「はい……」

 どうやらサブリナは私の心を読んだようで、頂けない表情を浮かべている。

 だって……。でも難しい話よ。仕方ない、自分の事ですら名前しか分からないんだから。

「そうね〜。レイラ君、そろそろ時期なんじゃないかしら?」

「でも……」

「レイラ君」

 サブリナは私にはしないような恐ろしく、険しい表現でレイラを睨み付けた。

 普段、私達のリーダーとして頼もしいレイラなのに紅茶色の瞳は珍しく弱さをたたえ、一瞬の迷いを見せ、重い瞼を伏した。瞼から生える長い金色の睫毛は小刻みに震え、哀歌(エレジー)を奏でる。

「……分かりました」

 レイラは右足をたてて、片方あぐらを崩すと目を閉じた。

「僕達使いが求め、護り続けたナヨタケの意志を受け継いだ青薔薇姫。彼女は人間の化けの皮を被った魔物の退治を運命づけられた。哀れな魂の制裁という聖職を、残りの神々は彼女へ罰として与えたのです」

 なんとなくわかるけど……。とりあえず私が魔物と世界を助ければいいのよね。なんか色々ありすぎて、どんな事言われても慣れてきた。でもやっぱ重たい、世界だなんていきなり言われても。

「それは世界政府にも広まり、政府は青薔薇姫を探し始めた。貴女のその計り知れない魔力を国家の……いや人類の計画に使うためにね」

 国家の……てか人類の。規模でかいよ。一体、どんな計画なんだ。重い……、私にはヘヴィーだ。

「その計画の名をギュイトバルサ」

「……何それ」

「分かりやすく言い換えると人類破滅計画ってとこですかね」

 私は目を見開く。

「それなのにこんなのらりくらりしてていいわけ?」

「はい。まだ貴女には力が身についてませんから。まぁ、手をひっぱたかれた時に魔力で血が吹き出たのは驚きでしたが……」

「は」

 思わず口をぽかんと開ける私を見て、レイラは悪戯っぽく笑い、引っ掻き傷のついた手の甲を私に見せた。私がつけた傷は今だに深く、黒く残っている。

「意識せず魔力を出せるなんて、やはり貴女は素晴らしいですね」

 あれはじゃあ引っ掻いた訳じゃなくて私の魔力だったのね……。ごめん、レイラ。

 なんだかこんなちっぽけな私の中の秘められた物凄い魔力に少し恐怖を覚えてしまった。もちろん世界政府にもだけれど。

「ごめん。話戻すけどどうしてそんな計画を?」

 レイラは首を振り、わからないという意思表示を表す。

「もちろん貴女を護るのは僕達の役目です。でも万が一の為、貴女にも強くなってもらわなきゃいけない。僕らも加減してましたが、もう貴女をこれ以上甘やかしはしません」

 真剣だ……、レイラがいつもよりも強く、緊張した声でそう言う。

 そしてまるで己自身にも言い聞かせるように。

 レイラ……。皆……。

 私は真っ黒なスカートの裾を握り、静まり返るレイラの次の言の葉を待つ。

「貴女はアザミフツキ。漢字だと薊 深月と書きます。年齢は15歳。はるか極東の国の者の血を引いていて、幼い頃貴女の叔父・タチバナヨシヤは貴女と青薔薇城で暮らしました」

 は……? 何言っているの、どうして貴方がヨシヤ叔父さんの事知ってるの? ものすごく嫌な予感……。

「そして……」

 血の気が引いて、くらりと目眩がする。さっきまで聞こえていた草むらの唄は私の聴覚から消え去り、ただ響くのは甘く、残酷な彼の一声。

「魔物の生まれ変わりはヨシヤ、貴女の叔父様だという説が最も有力です」

 ただ何よりも重く響いた言葉に私はただ揺れる。そして何より頭をいきなり鈍器で殴られた感じがして、軽く吐き気を覚えた。ていうか背筋がぞぞっとするってこういう事。嫌な汗が音も立てずに背中を伝ったもの。

 馬鹿な……、そんな事あるわけがない。叔父さんは私の事、手塩にかけて育ててくれた。

「絶対に違う。冗談止めてちょうだい、レイラ。貴方が芳也叔父さんの事、知ってるわけないじゃない」

 無理な笑いを作って、レイラに向ける。ふとレイラの方を見てみるとレイラはこの世の終わりじゃないのかなってくらい哀しげな瞳。形の整った眉は少し垂れて、目がとろんとする。

「私、叔父さんが魔物なら協力しないから! だいたい叔父さん、死んでるかもしれないし」

 もしかしたら生きてるかもしれない、と小さく付け加えた。

 強がりしか言えない私は可愛らしくないね。つくづく嫌になる。

 太陽が雲に隠れて、木陰の暗さに加え、辺り一面が薄暗くなる。大きく出た肩と背中がひんやりして体が少しぶるっと震えた。揺れる気持ちのせいなんかじゃない。

「僕は真実なんか知りませんし、貴女一人でさえ護るのがままなっていません。しかしこの世界を救う力があるのは貴女、ただ一人なんです」

 そして哀れな魔物の魂を救えるのも、とレイラは一言つけ加えた。

 するとレイラはズボンのポケットに手を突っ込み、ある物を差し出す。

「これを貴女にお返ししましょう、青薔薇姫」

 これというのはチョーカーだった。彼が時期が来れば渡すといったあの時の。

 私はレイラから奪うようにチョーカーをぶんどった。

「何よ!!」

 レイラはただ無言で目を少し見開きながら私をじっと見た。

 そんな彼を見てチョーカーを握る力が更に増し、手がふるふると震える。

「あなた達、皆何も知らないみたいな顔して私に近寄ってきて勝手に人のことを青薔薇呼ばわりしてさ!」

「避けられない運命だってあるもの、逃げてばかりじゃ話にならない」

 レイラは普段よりも強い口調で私に言った。

 分かってる、分かってるわよ。ひどいじゃない、嘘ついて、焦らせて、叱り付けて。

「何よ! この嘘つき男!」

「なっ!」

「ハゲバカナスビ気障っぺドS鬼畜!」

「なぁッ! いくら貴女でもそれは許せませんよ! 今すぐ謝って下さい!」

「知らない!」

 とにかくここにいたくなかった。また裏切られた気がしたから。あの時のように体の中から全てが抜けていく感じ、触れたら今すぐにでも崩れそうな硝子の器のような折れた翼の天使。 もう強がりなんか言えなかった。

「ちょ待っ……」

 手首をぎゅっと握られて体が引っ張られる。彼の言葉が途切れてなんとなくわかった。すぐに背を向けたけど……。

「一人にさせてよっ……」 悲しい、ただ無償に悲しいの。涙の訳は聞かなくても悟ってほしい。

 貴方ならわかるでしょう、レイラ。

「……」

 最後にきゅっと力が込められたけど、ただ黙ってレイラは手を離した。

「ちょっとレイラ! フツキも待ちなさいよ!」

 ティーティがレイラと私を呼ぶ声が自然と耳に入る。

 ただ私は走り続けた。まだズキズキと痛み、コントロール出来ない左腕と柔なココロを抱えながら。


私、もしかしたらケータイを解約されちゃうかもなんで更新がいつも以上に遅れたり、連絡が取れない恐れがあります。 あぁ、ごめんなさい(ノд<。)゜。頑張ってすぐ復活しますから!!

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