第8話-1・哀史〜或ル昼下ガリニテ
相変わらず亀更新で申し訳ないです(´`)今回はとうとう青薔薇姫についての話がわかる!……前振りですm(__)mコメディー的なんでお軽くどうぞ☆
冷たい風が頬に当たる。でも痛いとか、苦しいものじゃなくてとても気持ち良いの。
そして皆の笑い声が聞こえる。とても楽しそう。私も混ぜて欲しいな……。
葉に付いた露が陽に反射してキラキラ輝き、濡れた青い草の香りがふわりと香る。少し眩しいけれど心地良い。
「目覚めましたか?」
「レイラ……?」
気付くと私は芝生で横になって眠ってたみたい。あんな事の後だったから、芝生に寝転がされても気付かなかった。ま、そのくらい深い眠りだったって事。
大きな木の下で、木漏れ日がちらついている。昨日の事が嘘みたい。本当にこういうのを嵐の後の静けさって言うのね。
私の横にはレイラ。レイラは頬杖をつきながら寝転んでて、いつものように優しい笑みを浮かべている。何度も癒されたこの笑顔。いつ見ても素敵。
「木漏れ日が心地良いですね」
「ね。……皆は?」
「昼食を摂ってますよ」
「私……あの後どうなったの? てかこの服……」
私は肩と背中が大きく出た白いブラウスに黒の三段スカート、ちなみにスカートの一番中の生地は黒ベールで少し足が透けている。そして大きく背中が開いていて、青い固めの生地のチョッキというかベストを着ていた。裾から胸の辺りまで縛ってある革のリボンが付いているのがおしゃれだと思う。更に少し高く、茶色い長めの綺麗なブーツまで履いていた。
「クロウがあなたを助けてくれたんですよ。でそれはその後、服担当だったジャイロが買ってきてくれたものです。ちなみにそれ赤バージョンもあるんですよ」
「そうなんだ。あの誰が……」
「アリシアとサブリナが君の着替えをしましたからそこはご安心を」
お互い顔を合わせて頬笑み合う。私はレイラの紅茶の瞳を見つめたまま尋ねた。
「ねぇ。私達、これからどうなるのかな」
「分かりません」
「……」
「未来なんて、誰にも分からない物だから」
レイラの顔が何かを物語っていた。悲しみなのか決意なのかは分からなかったけど。
私は上に向き直す。幾千の木の葉が私達を見下ろしていた。
彼にはどんな秘密があるのだろう。レイラ、あなたは何を隠してる――?
「姫? どうしてそんな泣きそうな……」
「わかんない」
何だか眩しい。木漏れ日が二人の瞳を包むからなのかな。
横に向きじっとレイラを見据える。
「……レイラ?」
どんどん悲しい顔になるレイラ。なんで貴方が泣きそうなの?貴方は関係ないじゃない。
「わかってるんですよ、僕だって。でも今はまだ教えられない、絶対に。でも信じて。僕達は君を護りたいんだ。闇から、悪から、そして積年の思いから。だから……」
「嫌よ!」
叫ぶ私を驚いた顔でレイラは見つめる。
荒っぽい風が吹き渡り、寝転んだままの私達の上を走馬灯のように駆け抜けていく。
「私、何も出来ないのはもうウンザリ。皆が命を懸けて私を護ってくれているのを見るだけだなんて……」「姫……」
「こんな私にだって出来る事ないかな? でも自分では何すればいいか分からない。……分からないよ」
レイラが震える手で優しく私の頬に触れた。
「姫、僕達は本当に君が君のままでいてくれるならいいんですよ」
レイラはそう告げると私に少し哀しげな笑顔を向けた。
「本当に?」
「えぇ。誓いますよ」
するとレイラは哀しげな笑顔のまま口唇をそっと私の方へ近寄せてきた。
このままでもいいかもしれない、これが彼の誓いなら。そう思った。
私もゆっくりと目を閉じる。顔に熱い吐息がかかり、二人の鼓動が確実に近寄って――。
「レイラ!」
「うわぁぁッ!!」
「ひきゃっ!?」
そこにいたのはびっくりしている二人に首を傾げるアリシア。私達は跳ね起きて、即座にある程度の距離をとった。
ちょっと……ファーストを奪われそうになっちゃった。は……恥ずかしい。早まるな。早まっちゃいけない、フツキ。
「あっ、姫様! 起きたんですね!? 良かった〜」 いつものアリシアのハグ。やっぱり可愛い、あぁなんてアリシアはフランス人形みたいに可愛らしいんだろ? てかこんな事、思っちゃう私ってやっぱ変態?
「姫様、ちょっと出血多量で危なかったんですよ〜。もうほんと心配しちゃった!」
「え? アリシアが助けてくれたの?」
「はい、私こんなんだけど医学には詳しいつもりです。沢山、勉強してきましたから」
アリシアの事だし、勉強してきたとか笑顔で言うけど本当は辛いくらい頑張ったんだろうな……。
「ちょっとアリシア! ななっ……何しに来たんですかっ!?」
「何って……。レイラが朝からずっと姫様の傍にいるの知ってたから、作ったご飯持ってきたの」
少し小さめのプレートには色とりどりの野菜やサンドイッチ、熱々のベーコンが乗っていた。
アリシアが作っただなんて本当にアリシアは才色兼備、文武両道なのね。
「姫、お腹減りましたか?」
レイラもさっきの事が恥ずかしく思われたのか、私と目を合わせないまま尋ねた。
「うん、ちょっと減ったかな。私も食べたい!」
「じゃあ向こうに行きましょう! 皆、待ってるわ。レイラも行きましょう」
「はい、そうですね」
アリシアがにこにこ笑いながら私の手を引く。
「行こ!」
「だからなんでお前がいんだよ」
「なっ……、失礼ね」
ジャイロがこっちを睨み、ものすごく嫌そうな顔をした。
「も〜、ジャイロってぃもいい加減にしなよ」
「そのジャイロってぃっての止めろ! チービ」
「私、変身したらチビじゃないもんっ! ね、レイラ」
すごく小さな妖精が辺りを飛び回っているんだけど誰? というか何? 私、青薔薇城から眠ったままだったからこの人の事よく知らないんだけど……。
「フツキ姫、彼女は妖精のティーティ。君が住んでいた青薔薇城の地下に眠っていたモノです。ティーティ、姫に挨拶を」
「……言っとくけど、あんたでも私のレイラやクロウ取ったら許さないから」
「はぁ……、よろしくね」「ティーティ、心配しなくてもフツキなんかに取られねぇよ」
「っ……」
本当にうざいよ。うざいよ、あんた達!
「そうそう。ところでレイラ! 返事は!? 私は大き――」
「うん、ティーティは大きいですね」
あ、顔は笑ってるけど今のは明らか適当に返事したよ。ちゃんと見納められました? 皆さん。
てかさなんなんだ、この妖精。本当になんなんだ、特にこのジャイロとかいうガキは。人を貶す事しか出来ないんじゃない? ジャイロ、好感度10%下がったわよ。
「フツキちゃんのジャイロに対する好感度が10%落ちたって」
「ちょっ! サブリナ!」
「あら、ごめんなさい。うふふ」
絶対に反省してない。
サブリナは楽しそうに笑っているけど、こっちはたまらない。ジャイロの目から出る嫌悪感のビームがきつくなって、痛い。
「お嬢を弄っちゃダメだよ、サブリナ。ね?」
いやいや、クロウ。貴方ももういいから。
「……」
「なんで黙るのさ、あ。口にケチャップついちゃった。とって☆」
「は?」
え、☆マーク付きですか? そこまさかの☆マークですか!? えっ!?
クロウはどんどんこっちに身体ごと寄せてくる。
むかつく事にかなり綺麗な顔だし。うわ……、クロウもずっとこのままならいいのに。従者と名乗り出る皆、本当に綺麗な顔してるのよね。代わりに変なのが玉に瑕だけど。
「ってだめだめだめ! ちょ、顔がくっつくって! ちょっとーっ!」
「俺はくっついてもいい」
「わたしはいいくない!」 どんどん近寄られてほとんど私は寝転んだ状態、クロウは押し倒す状態になった。
クロウも変! おかしい! 本当にありえない!
「そうですよ。クロウさん、フツキは姫なんですよ?」
アリシアがクロウに向かって苦笑いしながらそう言った。
笑ってないでそこしっかり止めようよ!? この悪ふざけを裁こ!?
「ん〜、だね。でもいいじゃん、皆仲良しで」
「誰が仲いいのよッ」
私は傍にあったナフキンをクロウの口に当てて思いっきり押した。
「わっ! 痛っ」
「〜っ!」
クロウの身体は私に押されたせいで勢い良く吹っ飛び、近くに座っていたレイラに直撃した。
どうやらクロウは後頭部をぶつけ、レイラはぶつけられ口を切ったよう。
「レイラの顎痛い。レイラって意外と骨太?」
「ふざけないで下さい。クロウのせいで口が切れたでしょうが。僕にはそんな趣味無いんですけど」
「俺だって無いよ。嬢に言いなよ〜、それは」
「うっ、クロウの髪が口に……」
レイラは苦虫を噛み潰したような顔をし、クロウの口に着いていたナフキンを剥がし取るように奪った。そうしてクロウの口についていた面とは反対の面で口を拭き始める。
うわ……。これはどっちも痛いね。私のせいでごめんなさい。そんなつもりじゃ無かったんだけど。
「嬢〜」
「なっ何?」
「君、自分の力考えた方がいいよ」
「しっ失礼ねっ!」
クロウは痛そうに後頭部を擦りながらも、顔はいつものにやけ顔でそう言った。
「いい加減、魔力の使い方を教えたらどう? そこのお姉さん」
……魔力?
「わかってる。でもそれはそこの口から血を出しているお坊っちゃんがお話をしてからよ」
サブリナは目だけは笑っていない笑顔でレイラを指差した。
「……頃合いですね、そろそろ話をしていきましょうか」
レイラはナフキンをレジャーシートの上に置いて、一つ深い深呼吸をした。
「貴方は【青薔薇姫】の話をご存知ですか?」
私は首を横に振る。
「とある所では長い間語り継がれてきた物語があるんですよ」
そうしてレイラは目を閉じたままゆっくりと語り始めた――。
来ました!次話は必見ですからね☆ちなみにタイトルの送り仮名をカタカナにしたのはノリです←