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第7話-6・〜黒の呼ぶ、その方へ

よっしゃああ!早い更新+予定通り新キャラ登場はしましたよ!でも登場は、です。アリシアのある台詞がお気に入りです★

「姫っ……! フツキ!」

「レイラ君どうしたの!?」

 サブリナはレイラの顔を不安げに覗き込む。

「姫が……フツキ姫が助けを呼んでいます! 行かなくては! 姫が恐がっているんです!」

 レイラは再び、鎖を外そうと身悶えした。

「そんな……」

「やはり軍人ですかね……、それとも?」

「……おかしいわ。何かがこの建物の中にいる。軍人じゃないモノよ。魔力は強くないけれど邪悪な感じ」

「くそっ……」

 空気の糸が張り詰める。

「そんなの動けるようになったら即行、始末してやりますよ」

「おい、レイラ=フィリス=シャンゼリパーグ。イカレ姫の執事様」

 六人のうち一人の軍人がレイラをそう呼び、全員で笑った。そんな彼らの一人の手には、赤、青、黄の不気味な注射の入った箱が握られていた。

(なんですか? あれは)

「レイラ君、私が知るわけないでしょ」

(見た目からしてかなり怪しいんですけど……)

「どうする……? え、ちょっ、どこに連れていく気!?」

「サブリナ!!」

 サブリナは半数の軍人によって解放された。がすぐに別室に移されていったのだ。

「ほら、執事! さっさと動け!! こっちは忙しいんだからよ!」

「いッ!」

 レイラは三人の軍人により枷を外されたが髪を引っ張られ、すぐに冷たい石の壁に押さえつけられた。二人に両肩と腕を押さえ付けられて動けなくなる。背中には冷たい衝撃。そして独特のアルコールの匂いが鼻をついて、腕にひんやりした感覚が。

「何するんですか!?」

「見て分かるだろう。あんたにこれを打つんだよ」

 一人の軍人がレイラの目の前で赤い注射器の空気を抜いた。針から膨らみ、流れ落ちる赤い液。落ちて、怪しく、音も立てないで床に赤い染みが出来た。

 その時ふっ、と得意顔で笑ったのはレイラ。

「何故笑う?」

「それが何の薬だか知りませんが貴方達は容疑者に注射を打ちたい時、わざわざ枷を外すのですね? 共犯者も別室に移して」

 軍人達は一瞬にして黙り込む。レイラは更にそれに追い打ちをかけた。

「打つ時、押さえるくらいなら枷を外さなくてもいいんじゃないですか? どうなんでしょう?」

 にこりと笑うレイラ。引きつる軍人達。

「質問に答えて下さい」

「お前には関係ないだろう……!」

 軍人はそう吐き捨てる。レイラは一瞬、真顔になると再び嘲笑った。

「そう。ならいいですよッ」

 セリフと同時にレイラは前にいる軍人に激しい頭突きを一発かます。ゴツッと鈍い音がし、たちまち軍人は泡を吹き、失神してしまった。

「洒落臭い」

 もう一人の顔面には蹴りをいれて、更に鳩尾(みぞおち)を殴る。

「おま……!」

「御苦労様でした」

 土星のピアスが一瞬だけ揺らめき、煌めく。その瞬間、レイラの両手から炎のように魔力が燃え盛り、彼がそれをぐっと握り潰すと残りの軍人達はまるで煙のように消えてしまった――。

「別にそこまでしなくてもいいんじゃないの〜?」

「貴方こそどうしたんですか、サブリナ」

「私は縛っただけよ。そんな空間移動させなくても」

「ヤだな〜。縛る方が酷じゃあないですか、どうせじわじわ縛り付けるんでしょう? 暴れる度に苦しくなるやつ」

「ふふ。おあいこってとこかしら」

「ですかね。――じゃあ行きましょうか。こっちです」

 レイラは【彼女】が呼ぶ場所へと駆け出す。



赤と青が繋ぐその場所へ。



















「アリシアっ!」

 さっきのモーションと同じ。ありえない俊敏さで、アリシアを呑み込もうと闇を開いた。

 器具の雨音の代わりに、固い床にバタンと倒れこんだ音が暗い部屋に響きわたる。

「アリシア! 後ろに下がって、音出さないで!」

 私の言葉を瞬時に聞き入れたアリシアは間一髪で魔の手を避け、バック転し、後方に下がった。金髪の中で黒い立ちリボンが再びひらりと揺れ踊り、ピンヒールが音を立てて舞う。

 すると敵は動きを一瞬停止させ、足を一歩こちらに向けた。

 次は……私。声を出してしまった。でも後悔してない、でしょ?

 まるでそこにいたのか、と言うように彼はうなり声をあげる。

 もう彼にニンゲンは宿っていない。ただの獣。私達の敵。

 敵はスピードをあげて、私に襲い掛かろうと突進しだした。

「姫様!」

 動けない。声を出してしまった私は負けなの。アリシアが助けに来てくれた事、嬉しかった。私、ここで死んだとしてもすごくすごく幸せよね、後悔なんてする必要ない。目の前が再び、モノクロに変わった。違う意味で私、もうダメだ。私の世界に色彩感がないもん。

 その時、ふわりとした甘い甘い花の香りと顔に強い衝撃を感じた。

「……アリシア! やめて、逃げて!!」

 アリシアは敵に背中を向けて私の所へ飛び込み、私についた腕の注射針や管を外し始めた。

 アリシアの白い腕や、細い足に黒いモノが巻き付いていく。

「姫様。すぐにレイラやサブやクロウが迎えに来ます。私がここを何とか抑えますから先に逃げて下さい」

「そんなの無理! お願いだから止めてっ!」

「大丈夫、レイラはあなたを必ず見つけだす。もし信じられなくなったら首にある赤薔薇の跡を触ってみて下さい」

 慣れた手つきでアリシアはどんどん針や器具を外していく。間にアリシアの体はどんどん黒くどろどろした物に覆われる。全てを外し終わるとアリシアは私の腕を引っ張り、黒い物の後ろへ突き飛ばした。

 私は思い切り尻餅をつき、床に落ちていたおびただしい数の黒い物体がぐちゃりと潰れる感触を味わう。

「いっ……。アリシア!」

「早く行って!!」

 無理……、無理だよ。

 アリシアは必死に抵抗し、力強い蹴りなどで対抗するけれど柔らかい敵にはあまり効いていない。どんどんアリシアは呑み込まれる。

「え?」

 アリシアの体はみるみる黒い物の中へ吸い込まれて、敵と同一化している。

「アリシ――」

「いいから行ってッ! 行きなさいって……生きなさいって言ってるのよ!」

 私は見逃さなかった。アリシアの目から涙が落ちたとこ。ダメ。行けない。逃げちゃダメ。出来る事を探すのよ。

 その時、ふと目についたのは、さっきまで私と繋がっていた注射針。オート式なのでずっと微妙な音が鳴り、空気を吸い込んでいてそのせいか私の852ミリリットルの血が泡立っている。

「フツキ!?」

「えぇいっ」

 紅の軍服のズボンをたくしあげ、彼に残った人間の足に注射針を深く刺した。が

「うわっ!?」

 刺した針の所から湧き出るように黒い何かが溢れて針がバキッと音をたてて折れた。

 いつしか黒いのが手にべっとりと貼りついている。最悪……なんて言っていられない。アリシアはどうなる!?

「うっく……」

 苦しそうにアリシアは呻く。

「待ってて、アリシア」

 ふと後ろについていたポケットに手をやった。さっきついたお尻についたのと手に付いた黒い物の触り心地と共に、何かが触れた。

「これは……」

 ずっと入っていたのだろうか。クロウが胸に残していったあの黒薔薇だった。

 あの時はまだ蕾だったのにいつの間にか満開になっている。てかなんで入ってる? 銃は取ったくせに薔薇は取らないの?

 薔薇を眺めていると、ふとクロウのにやけ顔が頭に浮かんだ。ぐっと薔薇を両手で握る。

 クロウ……、会いたい。――ねぇ、貴方の顔を見せて欲しい。

 でも今は私がアリシアを助けなきゃ。クロウ……、お願い。力を貸して。

「アリシアを離してっ!」

 思い切り、茎の先を黒い物の中へ刺す。

 この際、自分の手なんかどうでもいい。まだ完治していない左腕にも力を込めて更に奥へ突き刺す。

 敵はやっと痛みに呻き始めたけど、同時に私の体も敵の中へ吸収されていく。

「姫様やめてっ!」

 やめれない。私に力をちょうだい……!

 そんな私の切な願いは虚しく、貧血が私を襲う。

 ぐらりと頭が揺れる感覚に陥りながらも敵とモノクロの世界と目眩と闘う。

「誰かっ、……姫様を助けてぇぇぇっ!!」

 アリシアが泣きながら叫ぶ。

 あぁ、もう少しだから。あとちょっとだから。

 すると私の腕に温かい手が添えられ、後ろから誰かが私の腕を引き抜いた。

「どきな」

「ジャイロ!!」

 アリシアは驚いた声をあげる。

 ジャイロ? 確か、レイラがジャイロが来てからなんちゃらかんちゃら言っていたような……。

「消えろよ」

 廊下の蛍光灯の光なんかよりももっと眩しくて、違う閃光が走り、私の目の前は真っ白になった。


もうすぐ7話終わりそうです。あぁ、クロウは何の為に来たのでしょうか……。また彼はスベるかもしれません……!

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