表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/37

第7話-5・〜blind

最近、更新遅くて本当にすみません!

 どこからともなく、というか私の回り全体で機械音が鳴り響く。耳障り……。耳が重たい。体も重たい。そういえば私、なんでこんなに疲れているんだろう? なんでなの?

「!!」

 ふと私は重たい瞼を開けた。いつの間にか、椅子に座って眠っていたようだった。

 そうだ! 私は腹立たしい軍人っつーか隊長に捕まって、見知らぬ女の人に血を――

「抜かれてるし」

 腕には針が刺さったままだった。

 さっきまで私の体内を流れていた赤い液は針と繋がっている管をずっとずっと通って……ガラスの容器に入れられている。

 ちなみに容器の形はビーカーに近くて、半分くらい溜まっている。えーと目盛りは……

「700ミリリットル……!」

 どんだけ抜くんだよ! 献血!? これで半分? もはや献血じゃなくて捧血じゃん! 死んじゃう! 私、死んぢゃうって!

 一人でツッコミを入れていると一瞬、目の前がモノクロワールドになった。世界が白黒になって頭にクラクラとした物が私に取り憑く。その後はずーんとした何かがのしかかり……。

「ひ……貧血」

 やばいって……、捧血の危険性について討議した方がいいよ。あぁ、ダメ。頭がクラクラして……。世界がだんだん黒くなってきてる。

「皆っ……」

 私は何者なの? 私は誰? フツキ=エリニュエス=アザミ姫ですって? 知ったこっちゃないわ。そりゃ皆と出会えて私は幸せよ。でもどうして追われるの? 何故護ってもらわなければいけないの? どうして? 何故?

「私はただ普通に生きたいだけなのに……」

 その時、重たい足音が聞こえてきた。

 違う、何かが違うの。確かに男の人の足音だとは思うんだけど歩くと同時に何か……水滴みたいなのが沢山落ちる音も聞こえるの。いえ、水滴じゃないわ。そんなに可愛いものじゃないはず。水滴ならあんなに響かない。

 どうしよう……。しかもいつの間にか電気落ちていて何も見えない。目が慣れないわ。

 迫ってくる――。確実にゆっくりとこちらに。きっと来る。



ガタガタガタッ!

「ひっ!」

 思わず叫び声をあげる。幸い、扉には鍵がかかっているみたい。

 でも扉の向こうにいる奴はなんとかして開けようとドアノブを壊しそうな勢いで回している。

 まさか……壊すの?

 赤い管で繋がれ、世界がモノクロの私には為す術がない。これを抜いたら死んじゃうかもしれないし。

 ただ黙って固唾を飲む。何も出来ない。まただ、またこのシチュエーション。 嫌嫌嫌。何か出来ないの? 拳を握ると手の熱が二倍になって伝わってくる。

「出来る事はしなきゃ。皆にもう一度会うの……」

 バタンともガシャンとも違う音を立てて扉が勢い良く外れた。

 急にまぶしい廊下の蛍光灯の光が差し込み、私の目を刺激する。

 再び、大量の液体が落ちた音がして大きな足音が聞こえた。光に負けず、目をしかめてみるとぽたりと黒い何かが落ちている。


 私はその姿を見る事しか出来なかった――。


 それは呑まれていた。内側から。もうそれは人の形と成してなくて、肌の部分部分から血と共に黒くドロッとしたものが溢れだしてはそれが床に落ち、まるで生きているかのようにうねるの。

 どうすればいいの……! 結局は出来ることなんてありゃしないじゃない! だって冷静に考えなさいよ、フツキ。これ打ったまま動けないし、武器だって何一つ持っていない。あの銃も取られちゃったし! おまけに私の敵はアレ。

 ……あれ?

 敵は何故か微動だにしない。ただじっとドアがあった場所に立っていて、赤と黒のモノを落としているだけ。おかしい。ていうか襲ってこない敵の方がある意味怖い。

 ちょっと動いてよ、ちょっと。あ〜やっぱ動かないで欲しい。

 パリン――。側の棚からガラス製何かが落ちて、砕けた。

「ヴ……ヴオオオオ」

「!?」

 突如、敵は私の方に突進してきた。やっぱ動かなくていいィィィ!

 私は覚悟を決めた。いえ、決めてない。私は呑まれない。呑まれても……助けてくれるよね。きっと皆はこんな奴に負けない。私みたいに弱くも、丸腰でも無いもの。

 きゅっと目をつぶり、静かに時が過ぎるのを待った。

 が途端に、けたたましい轟音が響き、棚から沢山の器具の雨が私に降り注いだ。

「いたっ。……!?」

 敵はひたすら棚に向かって突進し、ぶつかり、呑み込もうとしている。その度に体からは黒い虫のような形をした液体が気味悪く飛び散り、固まる。

 ……そうだ。これは聴覚が鋭い代わりに目が見えていないのね……!

 なら話は簡単。音を立てなければいい。最悪、その場から動かないのも手。

 今、敵は私がいるものだと棚に向かって攻撃を繰り返している。これだと知能も低そう。私でもなんとか出来るかも。知能戦なら……これには負けない。

「フツキ姫様ぁっ!」

 この声は――!

「今、助けますから待っていて下さい!」

 息を切らして、愛らしい声で私を姫様と呼ぶのは一人――。

 彼女が黒い立ちリボンを揺らしながら急いで私の元へ駆け寄る度に、カツンカツンとピンヒールを鳴らして走りだした。

 【危険】の警報が鳴り響く。

 そして敵はぴたりと動きを止めて、確かめるようにゆっくり振り向いた。

 ダ……メ。お願い、逃げて! 駄目よ、来ないで! 駄目!!

「来ちゃだめ! 戻ってアリシア!」

 私の痛切な願いとアリシアを襲おうと吠えた敵の咆哮が同時に部屋の中で震えた――。


次回は新キャラ登場かも←再びあくまで予定です

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ