第7話-4・〜注射器
なんか題名思いつかなくてこんなんに(汗)てか本気で更新遅くてごめんなさい!
「いやああああああ!!」
「アリシア!?」
突如、発狂し始めたアリシアにレイラは思わず戸惑いを隠せなかった。
「レイラ君、演技よ。脱獄するらしいわね」
サブリナがレイラにアリシアの心を伝えた。
「な!」
「アリシアちゃんはとりあえず牢獄を出て、フツキちゃんを助けようとしているのよ」
「そんな危険な!」
「仕方ない! 今は私達の命を、フツキちゃんの命をアリシアちゃんに賭けるしかないわ」
「なんだなんだ?」
まんまと罠にはまり、軍人達は急いで駆け寄ってきた。
暴れたくるアリシアは軍人達の手によって拘束具を外されていく。がアリシアは尚も暴れ続け、軍人達を殴りかかりそうな勢いだ。刹那、アリシアの足が一人の軍人の腹部に直撃した。
「ってぇ! 何だこのアマ!」
アリシアは一人の軍人に殴られ、短い悲鳴をあげたが再び、発狂し始めた。アリシアの頬は膨らんで、赤くなり、見るだけで痛みが伝わってくる。
「お前、女の顔殴るなんて正気か!?」
レイラは怒りを隠せず思わず怒鳴り、彼の滑らかな額には幾筋もの青筋が立った。が狂女と化したアリシアは軍に連れられて行かれそうだ。
「あ〜悪ィな。まさかどっかの姫様がこんなにイカれてるなんてな。あんたもこんな女に駆け落ちさせられたのか? 憐れな執事さんだな。あははっ」
軍人はそう言うと再び、扉を閉めて直ぐ様、アリシアを連れていったがレイラとサブリナは一瞬、アリシアがこちらを向いて頬笑んだのを見逃さなかった。
「アリシア、アリシア……姫」
レイラはただただうなだれてそう呟く。罪悪感と己の情けなさにレイラは責め立てられた。
「レイラ君……」
「正直な所、僕ってアリシアに嫌な思いばかりさせているんですよね」
レイラはまるで、独り言のように話し始めた。
「僕はアリシアがすごく可愛いですよ。アリシアを……アリシア姫を護りたい。でも……今はフツキを護りたくて仕方がない。逆らえない本能というのでしょうか。でも最低ですよ、アリシアまで巻き込んだりしてるんですから、僕は――」
「でもフツキちゃんとも会えたのはアリシアのお陰なのよ? アリシアは優しいから。……あなたがフツキを愛すのは宿命、あなたがアリシアを愛せないのも宿命。それは変えられない。お互い受け入れなきゃいけないのよ」
「どうして僕達だけなんですか? 僕達だけどうしてこんな思いを? ――どれもこれも全部父さんのせいだ……」
「レイラ君、そんな事言っちゃダメ!」
「貴女に分かりますか? 父のせいで僕らはズタズタにされてるんですよ!」
「私達の使命はありとあらゆる敵からフツキ姫様をお護りし、彼女を育てる事。これが運命であろうが今は関係ないわ」
「関係ないわけないですよ! 青薔薇の命がかかってるのに僕達は……」
「でも受け入れるしかないのよ! 前を見て、真実を見つめて。目を逸らさないで! 貴方は紅の豹……、紅薔薇の従者。そうよ、フツキ姫様の第一の従者なの。――もっと自覚して」
「……分かっています。取り乱しました」
「レイラ……」
レイラはサブリナに見えないように血が滲むくらい口唇をきつく、きつく噛んだ――。
「あんたらなんか、あんたらなんか!!」
「うるせぇな。なんだ? お前、本当に姫様なのか? まさかこんなイカレ姫だったなんて、スキャンダルだな」
一方のアリシアはずっと叫んでいる。が、取り押さえていた軍人はアリシアを俵担ぎにして牢獄とは反対方向に進み始めた。
(何すんの、この男。まぁいいわ。別の牢獄に入れられないなら、そこで決めればいいのよ)
「姫様にいい物やるよ。静かにしろよ、ばれたら即死刑だぜ」
(いい物……?)
アリシアは一度黙り、ついていくことにした。
軍人は先程までの明るい廊下とは外れ、薄暗くて壁も埃に汚れた廊下を進んでいく。
「ほら、着いたぞ」
ふと扉を見てみると、保管所のようだ。
「俺、ずっと気になってたんだ。ここの部屋に運び込まれる物が。軍のお偉いさんが丁寧に運び込んでるんだよ。不思議だろう?」
軍人は大事そうにポケットからカードキーを取り出すと、カードリーダーに通した。ピーッと音がして、ランプが赤から緑に変わる。
重そうなドアはゆっくりと開いていき、とうとう大きな口を開けた。
軍人は下手くそな鼻歌まじりの歌を歌いながらアリシアを部屋に入れて、自分も中に入る。
(何、これ……!!)
中にあったのは大小様々な注射器や小瓶。中に入っている液は桃色や緑、橙色などで美しいが、薬品としては薄気味悪い色をしていた。
「すっげぇ〜」
思わず軍人は感嘆の声をあげた。もちろん医療に携わるアリシアはもっと感動していた。
(見たことない薬品がこんなに山ほど……! すごい、すごいわ! でも成分は? ここ……怪しい)
「これ新作だな。ついさっき運び込まれたんだ」と軍人は今日の日付が書いてあるラベルがついた赤い液体の入った注射器を手に取る。
アリシアが危険を察して、避ける前に軍人はアリシアの手を掴んだ。
「これ、どんなのか気になるんだよ」
軍人は不気味な笑みを浮かべ、アリシアの白い腕に注射器を刺そうと掴み掛かった。
「っ、なめんじゃないわよッ!!」
アリシアは注射器を持った軍人の腕を逆手に持ち、足を引っ掻ける。軽々と軍人は持ち上げられ、体は弧を描き、アリシアよりは二回りも三回りも大きい大男は一瞬で床に大の字に叩きつけられた。間髪入れず、アリシアは軍人の背中に乗り掛かり体重をかけた。軍人の手を掴み、どこかに縛ろうとアリシアは辺りを見渡した。
「軽いな、あんた」
「ぅあっ!」
小柄なアリシアは軍人に持ち上げられて、壁に叩きつけられ悲鳴をあげる。辺りの試薬瓶が棚から落ちて、足元で砕けた。
あちこちで怪しい匂いが漂い、薬品同士が混ざり合って足元に溜まる熱気と軍人がアリシアをじわり、じわりと追い詰めていく。
(痛〜っ。もう……やるしかない!)
「ここまで騒がれたら殺るしかないな、お姫様」
軍人は注射器を床に投げ捨てて、腰の銃に手をやり、再びアリシアの両手を掴み掛かろうとした、がアリシアはひらりと手を退けて軍人の背中に回った。
一瞬のスキだった。アリシアは軍人の手の下を潜り抜けて、注射器に手を伸ばした――。
最近、体育祭予行や文化祭の事などで忙しくて……。頑張ります(><)