第7話-3・〜Action!
グロテスクな表現があるので気を付けて下さい。更新遅れてしまい申し訳ありません!!
「離してッ! 痛い痛い!!」
私は一生懸命、抵抗をしたけど軍人達は離そうとしない。どんどん、どんど私はレイラ達から引き離されていく。
軍人に囲まれて私が歩くのは、ただ真っ白い廊下。あとは時々、自動ドアがあるくらいでほぼ何もないに等しい。
そんな機械的な場所で響くのは、ひたすら抵抗する私の声だった。
「何するの!?」
「大丈夫さ。取って食べたりなんかしないよ」
そんな私は為す術も無く、ただひたすら引っ張られていく。
あぁ、悔しい。何も出来ないだなんて。
「貴方達、誰?」
「国家の軍ですよ。それにしてもレイラ君は最低ですね、易々と人を半殺しにするのだから」
「レイラをどうしてそんなに馬鹿にするの!? 彼は貴方達よりは義理堅くて、優しくて、素敵な男性よ!」
「フツキ姫……。あなたはレイラ君を信頼してるようですが彼はそんなにいい人間ではありませんよ。生まれるべきでなかった人間だ」
「人を馬鹿にするのもいい加減にしなさいよ! 国家の犬のくせに!」
「何処かの箱入り娘如きがそんな口を……!」
「何ですって! この腐れ根性、あんたなんか地獄に堕ちちゃえばいいのよ!!」
私は自分で言ったのに、そんな暴言を発した自分に驚きを隠せず思わず顔が引きつる。
「なっ……!」
隊長は怒りを隠し切れずブルブルと震え、掴んでいた私の手を無理矢理引っ張ると、自動ドアを開けて側にあった部屋に私を投げ込んだ。
「痛ッ……」
「せいぜい悪夢を見ればいいよ、所詮力無きお嬢様なのだから」
嘲笑う隊長を私は睨む。が自動ドアが締まり、私は何も見えない真っ暗な部屋に一人、取り残されてしまった。
「ああいう奴こそレイラにでも殺されればいいのよ」
死ね死ね、バーカ。と私が心の中で呪っているとカツン、カツンと足音が聞こえてきた。息を堪えて、ただその人を逃れようと押し黙ると声が聞こえた。
「こんにちは」
バンと音がして部屋に明かりが一気に灯る。むしろ明かりというより光で眩しすぎるくらいだ。そのせいで前に立っているのは女性と分かるのだが顔が全く見えない。
「……誰?」
「ここの研究員。貴女がフツキなのね」
「私に何するの?」
「血を貰うわ。殺しはしないから。死なない程度に」
「私の血で何をするというの?」 私は恐怖で後ろに一歩下がる、が女の人もその分一歩私に詰め寄る。
「それは国家機密だから……。ごめんなさいね。でも悪い事に使われてしまうのは確かよ」
「どうして? どうして私なのよ? ねぇ、お願いだから皆を傷つけないで、皆を助けて! 貴女は分かっているじゃない、善悪を。なのに何故?」
「……とうとう従者達が迎えに来始めているのね」
「何か知っているなら教えて。誤魔化さないで」
「……言えない。でも聞いて。いい? 貴女は貴女だけの従者達だけを信用なさい。それ以外は基本、信用しないで。分かった?」
その女性は私の腕を優しく掴み、引き寄せる。
普段だったら突っぱねて逃げてる所だったけど、何だかこの女の人には安心感を覚えた。
「世界を導くのが貴女の役目よ、フツキ。ただ自分の道を、正義を貫きなさい」
「あっ……」
腕にチクリとした痛みを感じ、血を抜かれているのを察する。
「ねぇ……教えて。何が起きてるの? 私は……」
「世界の主役は貴女よ」
そう告げられると同時に意識が朦朧となり遠退いていく。
――ねぇ、貴女は誰?
「ガードがお固いねぇ……さすがお国。でも10人くらいなら一人で倒せるし」
クロウはいつも通り、真っ黒なタートルネックに腰にチェック柄のショールと黒い羽でできたショールを巻き、青薔薇のついたシルクハットを被っていた。
彼がふわりと軽やかに塀の上から飛び降りると彼のドクロと十字架のペンダントがユラリと揺れ、ドクロの頭に不気味な三日月が浮かび上がる。
「なんだあいつは?」
「おい、侵入者だぞ!!」
ガード達が無駄に騒ぎ立てる。
「この俺に向かってあいつだなんて……。礼儀のなってない外道だね。僕が調教けてあげようか?」
「なんだとお前!!」
クロウはガードが発砲した銃弾をひらりと躱す。
そして――。
「うわぁぁぁ!」
次の瞬間にはスパン、スパンと音を立て次々と舞うガードたちの生首、生首、生首。それらは目をしっかり見開き、驚いたような表情で膠着している。クロウは何処から出したのか大鎌を、まるで手で転がすように扱い、振り回していた。
「ゆ……ゆ、ゆ許して下さい!」
最後に残ったガードが必死に許しを請い始める。回りには血が吹き出している身体達ばかりだ。その場で土下座し、血に濡れた赤い地面に頭を付けた。手はガクガクと震えて、明ら様に怯え切っているのがわかる。
「ザ ン ネ ン」
スパン――。
辺りが一面、紅に染まり最後の一人の体がバタリと倒れ、首が泣き面でごろりと転がった。クロウは鎌の柄で地をコンとつく。
「今宵、君に死というオマージュを……」
クロウは手についた血を少し舐めて、ニヤリと笑うと門を抉じ開け、中へ入っていった。
「死ねばいいのよ、あんな男!」
「アリシア。落ち着いて下さいってさっきから何度も……」
「レイラは黙って!」
アリシアにこう言われるとレイラも黙るしかない。怒れるアリシアを止められるのは誰もいないのだ。
レイラはただ溜息をつく。
「アリシア。とりあえず脱出法を考えま……」
「サブもうるさーいっ!」
「……」
「僕が処刑される時が一番のチャンスかも」
「レイラまで何言うの! 死んだら第一の従者いなくなっちゃうでしょう!?」
「僕が処刑されるわけないでしょう。18年しか生きれないなんて嫌だし。……くっそ。こんな鎖さえ無かったら!」
レイラもかなり苛立っているせいか、鎖を外そうと手足をじたばたさせた。
「この鎖、魔法が使えなくなっているわ。魔法が効かない」
サブリナも魔法が効かなくては何も出来ない。
「全員、武器取られたし」
従者達は個人が得意とするパーソナルの武器と銃を必ず持っているのだ。ただし今は、軍の手によって全て没収されてしまったのだが。
「私がやるしかないね」
「え?」
「私がやるって言ってるの」
レイラは目を見開き、アリシアをじっと見つめた。
「アリシアが?」
「だって武器無しでそこそこの対応できるの私だけじゃん!」
確かに体術に精通しているのはアリシアである。
「僕だって並みよりちょっと上くらいは体術使えますよ」
「いやいや、容疑者が暴れてどうしますの。そんな事しようもんならその場で即行死刑ですよ、あなた」
「かもしれませんが……。あなたを一人にする訳には」
「大丈夫。私にやらせて」 アリシアは二人を安心させるため、満面の笑みを二人に向ける。
しかし口調は普段のアリシアからは微塵も感じられない気迫があった。
「姫様を何としてでも取り戻さなきゃ……。フツキがいなきゃ私達の存在価値は、皆無」
その時、軍人達がこちらへ近づいてき、重い金属音をたてて牢獄の南京錠を外した――。
今回、更新が遅れたのは藤咲が合宿だったのと加え、今、始めから小説を書き直しております。新たに増えた台詞や動作がありますので良かったら読んでみて下さいね。