第7話-1・囚われ姫の存在理由〜新たな真実と
再び長くなりそうな話がやって来ました! 頑張りますよ〜っ
フツキは足にひんやりとした独特の冷たさを覚えたが手足が重くて自由に動かない。
ゆっくりと目を開ける。
「皆!?」
いつの間にか自分もレイラもアリシアも、そして見知らぬ女性も手足を鎖で縛られていた。
「私……生きてる、皆も……」
目覚める前の記憶では確か私は銃で……自殺を。
首筋に手を当てて確かめようとしても周りは暗いし後ろの壁に繋がれた鎖で自由が効かない。
もう……死んじゃったとかないよね!? そんなのやだやだ!
「アリシア! アリシア起きて!」
ちょうど向かいにいるのはアリシアだった。
ぐったりと首が垂れたままアリシアは眠っている。 レイラは何か完全に爆睡だしどうすれば……?
「フツキちゃん」
私の左横にいた女性が私に声をかけてきた。
髪は紫でとても長く、先はまるでソフトクリームのようなくるくるの巻き髪。 右は明るい緑の目で左は少し濁った黄色の目。何もかもを見透かされそうな感じですごくミステリアス。ベージュの毛皮がついた上着を羽織っていて、スカートは生足が透けるような紫のレース生地でとてもセクシー。
「大きな声を出さないで。私はサブリナ。サブリナとかサブって呼んでね。実は私も貴方の従者の一人なの。貴方が眠っている間に私もパーティーに加わったわ」
「初めまして、サブ。えっと……ここはどこ? どうして私達はこんな所で……」
「捕まっちゃったのよ、軍にね。――レイラのせいで」
「レイラ!? 彼が何かしたんですか?」
「んーまず貴女を連れ出して助けた時、軍の人間に魔法をかけて半殺しにしたの知ってる? 半殺しにする必要は無かったと思うんだけど……ムカついてたのかもね? で何人か死んじゃったから……まぁ殺人罪?」
すぐにあのテレビのニュースの事なのだと悟る。
「そんな……殺人罪だなんて」
知っている。レイラが彼等を半殺しの目に遭わせたのは私を護る為だと。
ただ悲しくなって茫然となる私をサブリナは心配そうな目で見るが続けて話す。
「まだあるのよ。まず私の働いていた店でレイラは恐らく魔法を使ってお金払わないで入ったの。これは私がお金で揉み消すつもりだったんだけど、捕まっちゃったし彼もバッチリ監視カメラに映ってたみたいだし……罪として扱われるわ。まぁ彼、今はフリーターのようなもんだからお金無いし私に会う為には仕方なかったし言っちゃえば当たり前なんけど。あと……」
「え、ちょちょちょ! ちょっと待って下さい!」
何? 何なの!? 私が寝てる間に話がぶっ飛びすぎて訳わかんないんだけど!
「まぁ寝ている間に話がぶっ飛びすぎるのは仕方ないわ」
「!?」
え? セリフ引用された?
「うん、引用した。私、人の心読めちゃうから」
「へぇ、すごーいっ! ……て違う! レイラが今はフリーターって昔は働いてたの!? まだあんな若いのに!?」
「レイラ君は物心ついた頃からずっとそこで働いていたわ……。それでねレイラが一番重たい罪を犯したのはそこでなの」
「嘘よ! レイラはそんな事――」
「――誘拐よ」
「え……?」
「レイラは物心ついた頃からある城で育ち、そこにいた同年代のお姫様の遊び相手や世話役、そしてガードをしてたの。執事とでも言うべきかしら。でもね、ある事がきっかけでその姫を誘拐したの」
「姫……って?」
まさかのまさかで――私、とか?
「違う。姫の名はアリシア。あの子よ」
思わず正面にいる彼女を直視する。まだ首は垂れ、白くて細い足と淡い金髪が目に入る。
アリシアが姫……? そんな話聞いた事無い。
「サブリナ!」
いつ目覚めたのかレイラはどこか疲れたような顔でサブリナを叱った。
「勝手に話さないで下さいよ……」
「話す気あったの? レイラ君、貴方ったらフツキちゃんに何も話してないのね? 町で歩いている普通の女の子なら知らない男の子に理由も知らずついて行ったりしてくれないわよ?」
「わかってます。でもジャイロが来てから話をしようと思ってたんですよ」
「ジャイロなんかクロウ二世みたいなもんなんだからいつ帰ってくるかわからないでしょうが! しかも私達は捕まっちゃったし!」
静かにしろと言った張本人が叫び倒し始めた……。あぁ、何が何だかもう分からない。話が……難しい、頭が痛い。
「あのねぇ、旅っていうのは仲間同士の絆や信頼が無いと成り立たないの! フツキちゃんも今はノコノコついてきてくれるかもしれないけど、いい加減何も話してくれないあんたに愛想尽かして消えちゃうかもしれないのよ!? それでもしフツキちゃんが殺されたりしたらどーすんの!? 自分の気持ちだけで隠しちゃダメ!」
ノコノコって……。私は誉められてるのか貶されてるのかどっちなんでしょう……?
レイラもサブリナのお説教にはタジタジみたい。
「ハイハイハイハイ! わかりました! わかりましたから!! 話すからまずは脱出を試みましょう、逃げなきゃ何も始まりませんよ? 話はそれから。ね!?」
レイラは一瞬、明らさまに鬱陶しそうな顔をした後、一瞬で笑顔を取り戻したがサブリナは不機嫌になり、ぷいとレイラから目を逸らした。
「う……」
「アリシア!」
「姫様……。大丈夫?」
「それはアリシアの方でしょ! 何言ってるの? 私は全然大丈夫よ!」
「……ならいいわ、良かった」
「〇★Φ※§!」
暗かったのに急に明るくなったせいで全員が目をしかめる。
一体、誰? 眩しくて見えない。ていうか何語喋ってるの?
でもその人の姿が見えた時、私はおぞましさのあまり吐き出す言葉も無くなった。
それは紅の軍人。きっとあの時、私を殺そうと銃を向けてきた軍人達の一人。
「隊長……」
「君がレイラ君かね? 魔法のせいか君の顔が思い出せないが。よくも私の軍を滅茶苦茶にしてくれたね」
暫くの間、彼は目を見開いて驚くレイラを嘲笑っていたんだけど私の方に目をやると私にもわかるようにこう言った。
「おや、これはこれは。今日は、フツキ=エリニュエス=アザミ姫様」
え――?
それが……私の本名? 聞きたいけど怖くて私はただ口を開けようとしたけどまばたきすらも出来ない状況に陥った。
彼はレイラにもしたように私を嘲笑う。
悔しくて悔しくて。でも怖いから何も出来ないの。私はそんな自分に余計、悔しくなる。
「下がりなさい外道! 口を慎め!」
「アリシア……?」
「彼女を侮辱するのはこの私が許しません!」
アリシアはいつものやんわりした笑顔でなく、まるで般若のような形相で軍人に睨みを効かせた。
「どういう事なのかこの場で話しなさい!」
「今のあなたにそんな権力は無いのですよ? 執事と共に駈け落ちしたアリシアお嬢様」
「っ! レイラの事、馬鹿にしないでよ! あんた達は何も知らないくせに!」
「アリシア。落ち着いて」とレイラが優しくアリシアを宥める。
がそんな皆の声を無視して隊長は私の手錠や足枷を外し始めた。
「なっ」
「フツキ様はすぐにお返し致しますよ。まぁ、その頃には君達は棺桶の中かもしれませんけどね」
カチャリと手錠や足枷が外れて私は隊長に手を引っ張られる。
「嫌っ! 離してよぉっ!!」
「大丈夫。あなたを殺したりなんかしませんよ」
私はどんどん引っ張られ、レイラ達から離れて明るい廊下へ出る。
「フツキ姫を離して下さい、隊長!」
「レイラーーーっ! 皆ぁっ!」
「姫!」
「姫様っ」
「フツキちゃん!」
助けを懇願した私の叫びは虚しく響き、ついには口を塞がれて外で待機していた軍人達によって攫われていった――。
次話、少し謎が明らかになっていきます(あくまで予定)