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第6話・囚ワレテ攫ワレテ

少し物語が進展してきますよ〜

「サブ! 久しぶりっ!」

 アリシアは小さな体でサブリナに駆け寄り、ぎゅっと抱きついた。

「あら、アリシア! 久しぶりね。貴方、少し女らしくなったんじゃない?」

「本当!? 嬉しい〜」

「何言ってるんですか、サブリナ。アリシアの貧乳ぶりには哀れ過ぎて全世界が涙しますよ」

「黙れ気障男!」

「サブリナから少し貰ったらどうですか?」

「刺していい? 刺していいよね、この人!?」

「刺せるものなら刺してみる?」

 サブリナはまぁまぁと睨み合う二人をなだめる。少し幼稚な時の二人の仲介役はいつも彼女のようだ。

「サブ〜」

「へ、ティーティ!? 貴方は青薔薇城で封印……」

「これもワケありで解放したんですよ」とレイラは少し面倒臭そうに言う。

「なんとなくわかるけれど。な〜んかややこしい事になってるわね」

 サブリナはティーティを指に乗せながら腰に手を当て、頭を傾ける。

「問題は彼女ですよ」

 レイラは側にあった大きな白いタオルケットをばっと(めく)った。


 そこにあったのは銃を首に当てたまま眠っているフツキ姫――。

「まだこの子には早過ぎるわ! 貴方にもよ、レイラ君」

「そんな事わかってます!」

 レイラは顔を背けながらそう叫ぶ。荷車の中でレイラの少し低めの声がこだました。

「わかってる、僕だって……。だから貴方を捜しに来たんです」

「そう……」

 レイラは小さく呟いてから拳を作り、手を震わせた。

「僕が責任を取ります。――フツキ姫は僕と会った時、いきなり銃を向けてきた。姫以上の根性はあるようで。でも銃の安全装置を外さなかった、いや外す事も知らなかったんですよ。ずっと籠の中の鳥だった彼女は。なんですぐに銃を取り上げアリシアの診療所に向かいました――」

 サブリナもアリシアもティーティもただ黙り俯く。

「だから僕はもし僕が居ない間にフツキ姫に何かあった時の為にわざと安全装置を外して渡したんです。これはフツキ姫や僕ら以外には銃の役割を果たしますし。――でも彼女がまさか自殺行為に走るとは思わなかった……!」

 レイラはフツキが眠っている寝台をドンッと叩きつけ、震える声で言葉を発した。

「お願いします。僕に力を貸して下さい……!」

「私じゃどうしようもないの。助けて、サブリナ」

 サブリナはレイラの背中に優しく触れて、アリシアをもう片方の腕でぎゅっと抱き締めた。ティーティもレイラの頭にちょこんと乗って小さな手で撫でる。

「ありがとう、皆……ごめん、フツキ……」

 レイラは柔らかく頬笑み、綺麗な瞳から無念の雫を一つ落とした――。





















夜――

 女性陣は荷馬車の外、少し朧気な青い月の下で待っていた。

「……レイラ君、大丈夫かしら」とサブリナ。

「だーいじょうぶ! 私は解放されたんだからレイラは魔力アップしてるのよー」と若干、場を読めていないティーティ。

「うふふ。そうね」

 サブリナはティーティを肩に乗せると指でつんつんとつついた。

 アリシアはただ一人黙り少しだけ涙を流していた。なぜならあんなに辛そうに悔しそうに涙した彼を初めて見たから。

(貴方ならできる、レイラ。私が確信してあげてるんだからね!)



 その頃、レイラはタオルケットをのけて彼女のはだけたネグリジェを綺麗に直し、寝台の端に腰掛けた。「ごめん……フツキ。ちゃんと伝えておくべきでした。この銃は君と選ばれた第一の従者を見えない鎖で繋げておく為に存在するんだ。あ、もちろん僕が君の第一の従者ですけどね」

 レイラは微笑を浮かべフツキの頭を撫でながらそんな独り言を話し始めた。

「君は魔力が足りないままこの銃を使ってしまった。実はこれを使うには二人合わせてある一定以上の魔力が必要なんだ。そしてこれを使う事によって二人の魔力の均衡を保つ。でも僕は君を補える程の魔力は持っていない」

 何かを(しら)せるようにレイラの左耳についている金色の煌めく土星のピアスが揺れる。

「そうそう。これサブリナに作ってもらったんですよ。あの人の趣味変わってるから。ピアスに魔力籠めてもらう事になったんですけどサブリナが持ってたピアスでこれ以外は魚とか肉とか埴輪とか! 何だよこれってガチで突っ込みましたから」 普段、そこまで話さないレイラは無理に話していたせいか疲れて溜息を吐き出した。

「僕が悪いんです。でも許して。そして共に闘って下さい。大丈夫、君の全てを奪うモノは僕が許さない。僕は君を離さない。たとえ世界が終わったとしても」

 レイラは紅茶色よりも少し赤くなってしまった目を閉じてフツキの頬にキスを落とした。

 そして手に魔力を籠めフツキの首筋にくっついた銃口を剥がす。

 そこにはまるで血が滲んだような色の今にも芳香が香りそうな薔薇のタトゥーが。

 レイラは銃口を己の首筋に付けて少し深呼吸をした。人差し指一本動かすだけの動作なのに体に緊張が走る。

「……っ」

 僅かに手が汗ばんだぐらいの時、片方の耳を手で塞ぐと思い切って黒い引き金を引いた。

 パァァンッと耳が痛くなるような銃声が鳴り響いた。が平然と立つレイラはゆっくり目を開け、次は耳を押さえていた手で耳を押さえると銃口を引き剥がす。

 レイラの首筋に(のこ)ったのは深く蒼い薔薇のタトゥー。

 すると二人のタトゥーから何本もの鎖が延び、消えたり現れたり。しかしピンと張ると金属音を立てて砕け散ってしまった。

 これこそが契約の証――。

「終わっ……た」

 張り詰めていた緊張の糸が緩んでしまったのか、いきなり魔力を使い過ぎたのか突如、強烈な眠気と疲労感がレイラの体に襲いかかる。

 彼はフツキを起こそうと手を伸ばしたのだけれど瞼がどんどん重くなり思わずその場に崩れそうになる。足元がぐらりと揺れた感じを覚えて、青薔薇が眠る寝台にもたれかかり座った。 やがて銃が手から滑り落ちてレイラは深い眠りについてしまった。

「レイラ大丈夫だった!?」

 銃声を聞き、不安が入り混じった声でアリシアが荷車へ急いで入った。

「レイラ!」

 アリシアはすぐにレイラに駆け寄り、床に倒れている彼の頭を膝に乗せて脈を計る。

「生きてるじゃない……。良かった……」

 アリシアは彼の薔薇のタトゥーに触れるとレイラの首筋に顔を埋めて、再び啜り泣きを始める。

「アリシアっ!」

 アリシアは何かを危険な物を感じて振り向く。

と其処にはサブリナが紅の軍服の男達に取り押さえられていた。

「誰ッ!?」

 アリシアはさっと構えの姿勢をとる。

「君達を共犯者として逮捕する」

「は? 共犯? 誰の?」

「レイラ=フィリス=シャンゼリパーグだ。彼を逮捕する」

「は!? ちょっとどこ触ってんのよ、やめっく……っ!」

 アリシアは麻酔を撃たれその場で気を失う。サブリナも鳩尾(みぞおち)を殴られ全員が眠りに落ちた。

 次々と軍の手によって運ばれていく彼等。










 そんな彼等の運命を握るのは一人の堕天使である事をまだ誰も知らない――。

あっさり皆、攫われましたね。堕天使は誰なのでしょうか?ブログで予告を見た方はずれてしまって申し訳ありませんm(__)m

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