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第5話・心盗人

書いていて我ながらかなり恥ずかしかったです(汗 レイラがちょっと…イメージダウンかも

「何考えてんの?」

「それどころじゃなかったんだ」

 再び始まるレイラとアリシアの喧嘩。いつも通りレイラは冷静に押し黙りアリシアは叫び倒している。

 もちろんレイラを気遣うアリシアだからこそ、なのだが。

「私ってそっんなに弱いかしら? あなたがとても強い事くらい知ってるわよ! でも」

「アリシア」

「何ッ?」

 レイラは少し間をおいてアリシアに冷たく言い放つ。

「そんなに怒るとしわになるよ」

「もうっ、ばか!」

「いッ!」

 アリシアは消毒液をたっぷり染み込ませたガーゼをレイラの首の傷口に思い切り叩きつけて、きつくきつく擦りつけた。

 荷車の中は消毒液のアルコール臭で充満し、彼の足元には血塗れのガーゼが多量に落ちている。

「なーんでここまで無茶するかなぁ? あと少しで動脈だったよ!?」

 黙っているだけのレイラにアリシアは無償に腹が立つ。

「だいた……」

「だーっやかましい! いいじゃないか! 皆、無事……」

 レイラは思わず、はぁ……と重い溜め息を漏らす。

「なんで姫様に銃を渡しておいたの? しかも安全装置をわざわざ外して。こうなる事は想定外だったわけ!?」

「へぇ、これは驚いた。君は想定内だったわけなんだ〜?」

 レイラは黒い笑いを浮かべながらアリシアに尋ねる。

「すみませんでした」

 レイラの鋭いつっこみにアリシアは謝罪しか言えず、彼の首に優しく包帯を巻いた。

 静寂が流れて二人は少しの間、見つめあっていたがアリシアがふいとそっぽを向く。

「もう動いていい?」

「だめ。しばらくは安静」

「めんどくさい……」

 レイラは小さくそう呟いて肘をつき、手に顎を乗せながらじっと窓の外を眺める。

「だめよ、ちゃんとしてね」

 アリシアがレイラにそう忠告した時、ふと光るものがひらひらと傍を通り過ぎた。

「ねぇ、そろそろ出発しましょーよぉっ」

 ティーティは口を尖らせて愚痴りレイラの髪を引っ張り、小さいなりのアピールを繰り返す。

「ティーティ、馬操ってくれます?」

「え……」

「街までお願い」

 レイラはにっこりと笑い、明らかな断るなオーラを醸し出す。

「……言われなくてもするよ」と捨て台詞を吐き、ティーティは表へ出た。

「ともかく急がないと……。時間がなくなる」

 しばらくすると鞭がしなる音が聞こえ、馬車はゆっくり動きだした――。










 彼らの馬車は甚だしくライトアップされたある騒々しい店の前で止まった。

「レイラ、ここ……」

「アリシアもティーティも姫と一緒に待ってて」

「安静にしてなきゃ、一人だと何があるかわからないわ」

 レイラは服の袖や裾で殆ど見えていないがあの蔓のせいで手首や足首など首という首に包帯を巻いていた。

 そんな彼をアリシアは心なしか不安げに見つめる。

「女性が入るような店じゃありませんから。大丈夫」

 レイラは前髪をあげ、髪をセットして香水をふる。そして優しくアリシアの肩を抱き、ティーティの頬をつつくとすぐに戻りますから、とだけ告げてネオン灯の中へと入っていった――。






「いらっしゃい、あら……いい男ね。あたしと遊ばない?」

 美しいが体の半分以上を露出して匂いのきつすぎる香油をつけた受付嬢が僕にまとわりついてくる。

「いえ、結構。パピヨンに用があるんです」

「パピヨン!? あなたお金は?」

「これでも、ですか?」

「きゃっ! んっ!!」

 彼女の口を濃厚に舌で舐め、そのまま壁に押し付けた。もっと深く舌を侵入させると彼女の口のから唾液と甘い溜め息が零れる。彼女は僕の背中に手を回すとぎゅっとしがみ付いて、爪を立てた。

「ちょ一体っ、誰……?」

「誰でもありませんよ。―通して下さいますよね?」と彼女の太股を撫でる。

「―いいわ」

 ありがとう、と告げて入り口に片足を入れたが振り返る。なぜなら証拠を消さなければいけないから。

「やはり全て忘れて下さい」

 彼女の黒い目が更に黒く濁る。

「はい……」と呟くと彼女は僕の魔法で床に崩れ落ちて眠ってしまった。

 更に深く、店の奥へ入っていくと陽気に、激しく流れる音楽と男女が愉しみあう声が聞こえ、少し暗目のライトの中で酒と香水の匂いが入り交じって鼻をくすぐる。

 ふと奥を覗くと予想通り色んな女がバーを使ったり、派手な衣裳を使ったりでガラスケースの中で踊り狂っていた。

 そして男達は鼻の下を伸ばし、嫌らしい目つきで見物の女達を見物している。

 その中でも最も人が集まっている舞台の前に行くとやはり見るからにどこかの業界の金持ち軍団が集まっていた。

 勿論、僕にはそんな大金は無い。だからあんな事したのだけれど。

「世の中の野郎共は欲求不満……か」

 ふと傍らから盛大な歓声が聞こえてきて、アンコールがかかっている。

 ……いた。

 舞台上で踊る彼女に見えるように男達を押し退け一番前に行ってみる。

 (くび)れた腰と紫の長い巻き髪を淫らに回し胸を寄せてジャストで服……ではなく布切れを脱ぎ始めている彼女。

 周りが歓声をあげるのとは逆に恥ずかしさで思わず目を背けた。

「やっだ、レイラぁ〜!?」

「ぶほぉッ!」

 その彼女は舞台から飛び降りて無駄に大きい生胸で僕の顔面にアタックしてきた。

 うっくっ……苦しい! てか服服服! 服は!? 服着ろってェェェ!

 そして回りから罵声、罵声、罵声の嵐。

 これはヤバい……!

 とりあえず彼女の手を引き舞台裏へ逃げ込んだ。















「レイラどうしたの〜?」

「どーもサブリナ。あー、ここではパピヨンでしたっけ。見事なショーでしたよ」

「ふふ、ありがと」

 僕は思わず溜息をついて彼女に背を向けて立つ。彼女の部屋はまるでインドのどこかの民族の部屋のよう。派手な装飾だがパピヨンと言うにはどこか殺風景だ。一切、無駄な物は置いておらず衣裳や生活用品のみだけが並べてある。つまり個々が派手なだけで必要最低限の物しかないということ。

 すると再び彼女はふふ、と笑って僕を見つめた。見返すと……裸のまま。

「あの……これ着て下さい」

 僕は側にあった真っ白なバスローブを手渡した。

 恥ずかしすぎて彼女を見る事など不可能だ。もうここまでくると目の毒っつーか毒レベルで納まらない。もはや爆薬。

 人間、欲しいモノって手に入らないから余計、欲しくなる。でも欲しいモノをこう……曝け出されると熱って一気に引きますよね?

 まさに今、僕はこの状態。

 これ見るくらいならフツキ姫のネグリジェ姿の方がよっぽどぐっと……。

「フツキちゃんて私より色気あるんだ〜」

「っ!」

 図星すぎて思わず振り向いた、が前全開のバスローブを羽織っただけの素晴らしい女体が見えたので直ぐ様前に向き直す。

「あっ、サブリナって人の心読め……」

「るんでしたっけ。でしょう? そうよ。私は心盗人(こころぬすびと)だもの。これでもね〜」

 そんなサブリナは僕の後ろで鼻歌を歌いながらバスローブを着ているようだ。

 彼女は僕などとは比にならないくらい強力な魔力を持っている。それ故、無意識の内に人はおろか、生きてるモノ全ての心を読むことが可能だ。

 彼女がパピヨン、つまりその店で一番売れる踊り子なのは彼女自身が放つ妖しい魔力に男達が魅入られているから。

 そして魔力の無い彼らはそれにさえ気付かず、彼女の虜と化していくのだ。

「行きましょ」

「え?」

「予め荷造りはしてあったのよ」

 振り向くとサブリナはいつの間にかバスローブから高そうな毛皮のコートを羽織っていて、大きなキャリーバッグを引きずり、まるでどこかの貴族の婦人のようだった。

「……店はいいんですか?」

「好き好んで働いているお店じゃないしね。あくまでもこの世を生き抜く為。私もガードとしてフツキちゃんを護りたいし」

「では行きましょうか」

 僕はサブリナに手を差し出す。

 まるでさっき半裸で踊っていた女性ではないような柔らかい頬笑みを僕に向けると彼女は手を取り、頷いたのだった――。


我らがサブリナ姉さんの登場です!クロウと並び定番キャラでしょうかね(^O^)

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