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第4話-7・〜妖精の隠し部屋

「アリシア。」

「おっそい!」

アリシアは先程までの白いネグリジェからいつの間にかオレンジのかちっとした生地の、上下セットの丸肩スーツに中は白いキャミソール、ストレートのミニスカート、ニーハイソックスにピンヒールという至って僕には見慣れた格好だった。


「相変わらず露出が激しいな。」「うっさいな。…この格好が一番動きやすいのよ。」

ハッとレイラは鼻で笑う。「防御がなってないよ。だいたいそんなの銃で撃たれたら終わりだし。」

「レイラだって金属施してあるベストなんか着てたらいざという時、俊敏に動けないでしょー!?」

アリシアは今にも噛み付きそうな勢いで声を荒げる。

「僕は男なの。鍛えてるんです。君とは違いますよ。だいたいピンヒールなんか履いてたらいざとなった…あ、そっか〜ピンヒール履かないとただのチビですもんねぇ。ごめんごめん、気付かなかったよ〜。」

レイラは、あははと声を出して嗤うが目は全くと言っていいほど笑っていない。

アリシアの額には一筋の青筋がたちフランス人形のような顔がレイラの一言一言で崩れていく。


「レイラなんか地獄に堕ちればいい。閻魔様に舌を抜かれれば良いのよ。十字架に磔の刑にしてもらった方がこの世の為だわ。」


死ねば良い、死ねば良いとぼやくアリシア。がチラリとレイラを見るとアリシアは溜息混じりに口を開く。


「甘ーい顔しといてさ格好もどっかのホストみたいなくせにどんだけドSなの?………だからクロウさんの方が好きなのよ。」


「それは結構。」

とレイラはふっと笑う。


そうして二人は歩きだしあの部屋に向かった――。



「着いた…。やー、それにしてもこのお屋敷大きいわねぇ!」


妙にテンションの高いアリシア。まぁ、仕方ないか。ここはそっとしておくのが一番だろう。


「いくよ…。」

懐にあった鍵を取り出し鍵穴にはめる。ガチャンと大きな音を立てて施錠は外れ扉が一人でにキィィと嫌な泣き声をあげて開く。


「レイ…」「分かってる。大丈夫だから。必ず…姫を守りきるんだ。」


ゴオォと中から魔風が吹きつける。重たい魔力。思わず体がよろめいたが直ぐに僕もアリシアも姿勢を立て直した。


「わかっている!目覚めたんだろう!?」



くすくす…



僕達は異変を感じる。

「やはり…目覚めたのね。」



そうよ、だって青薔薇姫が扉を開けたんだもの



「ティーティ!!」



私に勝てると思ってるの、馬鹿らしい。私に勝てるのはクロウくらいじゃないかしら…もしくは―――



「やってみなきゃわからない。ティーティ…君にも戻って来てもらいますよ。」



あら、ご冗談。いいの?どうなっても。

今までだって私を持って死んだ人は何人もいるわ。



「あなたがいないよりよっぽどいる方がいいの。でもどうして…」



…そう。そこまで言うならやってあげてもよろしくてよ。覚悟は決まったのね。………いくわよ



扉は勢い良くバタンッと閉まり僕らは中へ入った。バチッと音がして灯りがともる。まるで子供部屋のように積み木や人形がたくさん置いてあって壁にはヴェールのような布が辺り一面にかけられている。なんとも幻想的な部屋だ。表現するなら【妖精の隠し部屋】というのが最も相応しいだろう。

がおかしい点が一つ。


ぐったりし眠っているように静止している少女が部屋の真ん中に置いてある椅子に座っている事。いや、座っているというよりリボンで縛り付けられている感じだ。




そう、彼女がティーティ。



翠の長髪と目、尖った耳を持った少女。服は着ておらず体にいろんな色のリボンを巻いている。


が、彼女は目を見開け白い歯を見せにやりと不気味に笑うといきなり僕とアリシアの間に疾風が吹きつけた。

二人とも咄嗟に左右に避ける。


アリシアがまずティーティに向かって走っていき、壁を蹴りティーティに飛び掛かる。


「はあぁッ!!!」


が、ティーティは蜃気楼のように椅子から姿を消す。


「っ…!」

ガタンと派手な音を立てて椅子と共に崩れ落ちたアリシアは痛そうに(うめ)いた。


「アリシア…!」

レイラが叫んだと同時にアリシアの後ろにはリボンを引きずったままのティーティ。ティーティは長い爪の生えた手でアリシアの首を掴もうと腕を伸ばす。


「くそッ!」

レイラはそっと瞳を閉じて口に指を当て呪文を唱える。紅茶色の瞳をかっと開けた刹那、ティーティの腕は神経が浮き出て固まった。それはまるで木に蔓が絡み付いたよう。


ティーティの動きが一瞬止まった時、レイラはアリシアを抱き抱え後ろへ飛躍した。



「ご…ごめん……。」

「馬鹿。この阿呆。なんで一人で飛び出す?―っと!」

ティーティはまだ暴走し続けレイラの足目がけて、神経の浮き出た手を…長い爪を床に突き差す。が辛うじて傍にあった積み木の上に飛び乗った。


「ティーティ!!どうしたんだ!?」



別に何もないわ。

レイラも多少は強くなったのね?昔よりは。



「はは、そりゃそうですよ。」

アリシアを降ろしレイラは高い積み木の上から弧を描いてジャンプする。その間に金色に耀くダガーをきつく両手に握り締める。




レイラは容赦なく切っ先をティーティに向ける。




「悪く思わないで下さいね、ティーティ。アリシアを傷つけようとした代価はかなりの代物ですよ?」


あまりのレイラの早さにたじろいだティーティ。




勝負アリ―――。

この時点で彼女の負けは決まった。



レイラは彼女の鎖骨辺りに施してあった宝石を躊躇せずに割りにかかる。


ピキッとヒビが入り光が溢れだす。



うわあぁあぁぁーー!



パキーーンと鮮やかな音を立てて石は砕け散りティーティの姿はどんどん小さくなる。



「レイラ!」

グラグラと屋敷が―青薔薇城が揺れ始めた。二人の平衡感覚が奪われる。


―崩壊の始まり。


レイラはティーティを抱き抱えた、が直ぐにアリシアに託す。


「もうすぐ城が崩壊する。…ティーティを連れて先に逃げて。僕はフツキ姫を迎えに行くから。」「そんな私も―!」「逃げるんだ!!」


アリシアはビクリと体を震わす。


普段、簡単に怒鳴らないレイラが…。


「わかった。―必ず戻ってきてね。」


アリシアはレイラの頬に軽く口づけをし部屋を出た。

レイラもダガーを懐に仕舞い、ティーティが幽閉されていた部屋を後にする。


扉を閉めた途端、ティーティの部屋が断末魔の悲鳴をあげ崩れ落ちる音がした。思わず背筋に悪寒が走り、頬に冷汗が流れる。




―フツキ!




「急がなければ…そう長くはもたない。」




レイラは落ちた瓦礫や砂埃を避けながらフツキの部屋へ足を急がせた―。







アリシアがすっごく弱くなっちゃいました(汗 そんなつもりじゃなかったんだけど…

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