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冬のひ

作者: 井濾鳥ユキ



 寒空の下、一軒の家。

 煙突から、白い煙が立ち上る。

 その中で、パチパチと燃える暖炉の火を、二人の人が簡素な椅子で、身じろぎ一つせずに、じっと火を向いていた。

 窓の外は、すっかり日が落ちて、暗闇が広がっている。

 空には分厚い雲が垂れ込めて、月はなく、星も一つもない。

 ほそほそと、白い雪が降り始める。

「そろそろかな」

 二人のうちの一人が、声を発する。

 その声は、とこか少年のような声だった。

 小さく、ぽそぽそと、隣に聞こえる最低限の声量で呟く。

 声をかけられたもう一人は、瞼を震わせると、閉じていた目をゆっくりと開いた。

 目に、火が反射して、微かに光る。

「そうだね」

 少女のような、比較的若い声が、短く返事をする。

 少年は、体の前で腕を組み、目を伏せると、深く、深く、息を吐いた。

 再び静寂が訪れた。

 時々、暖炉の中で、薪が爆ぜる音がする。それと、凍えるような北風が、建付けの悪い窓枠を、ガタガタと揺らす音。家が軋む音。規則的に、時を刻む音。

 不意に、時計が時刻を報せる鐘を鳴らした。

 二人が、同時に音源を見やる。

 一、二、三……。

 全部で、十二回。

 鐘が鳴り終わると、二人はまた、揺らぐ火に視線を戻す。

 火には、当初の勢いがなく、だんだんと消えるのを待っているようだった。

 どさり、と一本の薪が、灰の上に落ちるのを、二人の人間は、微睡むような目で眺めていた。

「そろそろだね」

 少女が、呟く。

「そろそろだね」

 少年が、答える。

 屋根の上が、銀色に染まる頃。

 最後の火は、小さな音を立て消えた。

 部屋の中は真っ暗になり、焦げ臭いにおいが、薄く広がった。



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