ルーナの戦い
最後の、”己の影”との闘い。
それは、月の女神の戦闘で、幕を閉じることになる……。
『いやぁ、注目の女神対決、解説は高橋さんです』
『どうも、高橋です』
『さて高橋さん、この試合、どう分析されます?』
ルーナとは影であっても、死んでも戦えないチョーローソル君。
ジャンとディーノさんの脳筋師弟は、はなから一騎打ち推奨。
そんな中でルーナが取った戦法は、やはりというか信じたくなかったけどもしかして、という一騎打ち。
「私、自分の力を試してみたいんです。
癒すだけじゃなくて、誰かを守る力が、私にもあるのかって……」
ルーナ、気持ちはすごく真摯なんだろうけど、残念ながら取る戦法がジャン達と同じなんだよぅ……!
『レベル、ステータスいずれをとってもルーナ選手が有利ですね。
ですがこれはあくまで戦闘。
ルーナ選手の勝とうとする気迫が勝敗を決するでしょう』
『なるほど!
おぉっと、ルーナ選手、イミテーションと向かい合ったぁぁぁっ!』
ルーナはイミテーションと向かい合った。
何故かルーナのイミテーションだけ、かなり露出の際どいドレスを着ている。
チラッチラッとソル君がイミテーションを見やっては、罪悪感に満ちた顔でうずくまっていた。
まぁね。
プルプルのお胸をはみ出さんばかりに詰め込んだ、タイトな黒のロングドレス。
もちろんスリットが太ももの上まで入っている。
背中もV字にぱっくりと開いていて、なんていうか……ダークルーナ、って雰囲気だ。
一方のホワイトルーナは、うさ耳フードを羽織り、上品なローブドレス姿だ。
ホワイトが緩く髪を一つに束ねているのに対し、ダークは髪を下ろして右側にまとめて垂らしている。
お色気勝負はダークの勝ち、彼女にしたい勝負はホワイトの勝ちって感じ。
『ルーナ選手、イミテーションが防御魔法を唱えている隙を狙って、いきなりの多段魔法攻撃、”サクラメント”をぶっ放したぁぁぁっっ!』
『守りを固めるよりも、先手を取ったわけですね。
攻撃は最大の防御なり。
回復役が取るとは思えない、見事な戦法ですね』
『流星の煙で周りがよく見えま――あ~っと!
ルーナ選手、煙に紛れてイミテーションに急接近!』
『これは――まさかの、物理攻撃ですねっ!』
解説の高橋さん、嬉しそうなのが伝わりすぎてるよ……。
ステータス上げによって物理攻撃力まで急上昇したルーナ。
もちろん、ルーナの攻撃力までカンストさせる時間はなかったけど、今のルーナならレベル80のステータスそのままディーノさんぐらいの攻撃力は持っている気がする。
『おぉ~っと!
イミテーション、詠唱していた”サクラメント”を物理攻撃で中断されたぁぁっ!』
『これは……ハメ技ですね』
『ハメ技っ!』
『”サクラメント”と物理攻撃を組み合わせることで、イミテーションにはなんの行動も許さずに圧勝する戦法です。
……まさか、これほどとは……』
『あ、ソル選手、若干顔色が悪いように見えますね。
高橋さん、夫婦喧嘩になったらどっちが強いと思います?』
『お互い本当に殺し合うつもりなら、ソル選手に軍配が上がるかもしれませんが……いえ、ですがルーナ選手の自己回復力によってじり貧に追い詰められる可能性も……』
『そんなに強いんですか?!』
『…………。
やはり本気を出せばソル選手の勝利は間違いないでしょう。
ですが、本気を出せずに持久戦になった場合、ソル選手は不利ですね』
『なるほどぅ!』
『ですがそもそも戦闘が成り立たないように思いますね。
戦闘開始と共にソル選手の土下座で、ルーナ選手の不戦勝が確定するでしょう』
『ま~さ~にっ!
コンビ名、”天使と悪魔”ですねっ!』
ルーナ、これまでルーナの天使イメージは百合持ったガブリエル様な感じだったけど……今日から改めるよ。
戦闘派大天使の、ミカエル様って……。
ルーナは頬を紅潮させた可愛らしいお顔で戻って来た。
最強ロッド、帰蝶を携えて……。
ハメ技、恐るべし……。
「すっげぇなルーナ!」
「……見事な戦いぶりだった」
褒め称える脳筋師弟。
ルーナは嬉しそうだ。
ソル君は、
「怪我がなくて良かったよ」
と、ダークルーナを見ていた若干の後ろめたさを滲ませつつも、そう気遣っていた。
「ラビーちゃん、これで私も、ラビーちゃんを守れるって分かったでしょう?」
ルーナの誇らしそうな、それでいて愛情のこもった眼差しに、私の胸がキュンとなった。
「ルーナ~っ!
脳筋に汚染されたって思って悪かったでござるよぅぅっ!
大好きでござるぅぅぅっ!」
ばふんっ、ぎゅうぅぅっと抱きついた。
ばふんっはおっp――お胸に私の顔がぶち当たった音だ。
ルーナは駆け寄ってくる私に対して、すかさずしゃがんで受け止めてくれたために実現した、夢のパラダイスとも言える。
「脳筋……汚染……」
ジャンの微妙にショックを受けたような呟きが耳に届いた。
豊満な膨らみから顔をぷはっと抜け出して私はジャンを見た。
「全てを筋肉で解決しようとする。
それが脳筋でなくてなんだというのでござるっ?!」
ガーンってなってるジャンを鼻で笑ってやった。
「そうだね。
ルーナと私は筋肉じゃなくて魔力だからね?
ラビー、勘違いしないで欲しいな」
「う、うん……??」
……あれ?
魔力だから脳筋じゃないんだっけ……?
そ、そっか、じゃあやっぱりルーナは脳筋なんかじゃないんだねっ!
「さすがルーナは可愛くて綺麗で美人で格好良くて強いでござるよぅぅっ!」
再びのハグにつき合ってくれるルーナ。
そうだよね、まさか私のルーナが、永遠のヒロインルーナが脳筋なんて、そんなはずないもんね。
私ったら、とりあえず戦いでゴリ押して解決しようとする人間は、みんな脳筋だと思ってたよ。
やだも~、恥ずかし~な~。
「――……で、ソルさん。
ああいう服の女の人が、好きなんですか?」
冷やっとした空気がルーナから溢れて流れ出た。
え?
え?!
「ち、違うんだルーナっ!」
ま、まさかの夫婦喧嘩、ここに勃発?!
ルーナの腕から下りたにも関わらず硬直する私の頭を、ディーノさんがポン、と撫でてくれた。
「大丈夫だ。
……どうせ土下座で終わる」
…………っ!
解説の高橋さんだっ!
ここに高橋さんがいたよっ!
読んでくださってありがとうございます!
ディーノさんは高橋さんじゃ、ありません(笑)




