己との闘い
魔法陣のあった、日差しのある明るい部屋から扉をくぐり、薄暗い洞窟に下りていく。
洞窟には広間が4カ所あり、その広間でイミテーション戦が待っているのだ。
そして!
そしてここが大事な所なのだが、2カ所目の広間を通り過ぎた所で手に入る宝箱の中身が……ジャンの最強防具なのだっ!
裏ボス戦までに勇者達の最強武器防具が揃う、この気配りに満ちた流れ。
ゲームプレイ時も思ったことを、現実世界の今も叫ぼう。
「神様、ありがとうっ!」
洞窟に入っていきなりシャウトした私に、勇者達がギョッとした顔を見せる。
はっ?!
「……で、ござるぅ……」
ラビウサ伝統の喋り方を放棄するとは、なんたる失態。
照れた顔で笑ってみせると、皆がはぁ~っとため息をついた。
ソル君とジャンのため息は痛くもかゆくもないけど、ルーナとディーノさんのは堪えるねっ!
「ラビーちゃん、あのね、無理してそんな喋り方しなくていいのよ……?」
なにぃっ?!
「そ、そんなぁっ?!」
私があまりにガ~ン!という顔をしていたからだろうか、ディーノさんが頭を撫でてくれた。
「……お前がなりたいものに、なればいい……」
そ、そうだよねっ?!
「もうっ、ディーノさんだけラビーちゃんにいい顔して、ずるいですっ」
何やらルーナがプンプン怒っている。
軽く頬を膨らませる、プラチナブロンド絶世の美女。
お胸大きめ。
くっ、この正当派ヒロインめっ!
「あ~、で、あれか?広間って」
わざとらしい咳払いをしながらジャンが顎で示した。
曲がりくねった隧道の向こうがぽうっとうっすら光っている。
誰が灯しているのか不明の、広間の明かりだろう。
「だろうでござる」
「……不自然な喋りも可愛い……っ」
変態がプルプル震えている。
スルーが一番だろう。
「一番手は誰だい?」
本当に心底、ソル君のノーマル具合に安堵する。
いや、そりゃディーノさんもノーマルなのは分かってるけど、やっぱり恋愛対象であるルーナが近くにいるから、安心感が違うよね。
「ジャンでござる」
そう答えた瞬間に湧き起こる、変態シーフの殺気。
殺気っていうより、闘気なのかもしれないけど。
よくある異星人の戦闘民族的な。
「ソル、ディーノさん」
ギラッギラに目を光らせたジャンに、ソル君はやや引きながら、ディーノさんは深く頷いた。
「うむ。行ってこい。
己と向き合ってくるといい」
「……危なくなったら、加勢はするけどね」
え?
「させねぇよ」
にやり、と笑ってジャンが一人で広間に進んでいった。
……え?
まさかというか、やっぱりというか……一騎打ち……?
おぉう、さすがは脳筋。
広間の入り口付近から、私達はジャンの人外戦を眺めていた。
本当に、”眺める”だけで終了した。
よくあるお子様アニメの異星人みたいに、宙を舞いながら忍刀を交わしている戦闘に、誰が介入できるものか。
ジャンがすごいのもあるけど、それに対応しているイミテーションがすごい。
なぜあんな人外を模せたのか。
イミテーションのコピー能力が半端ない件。
だが、そんなイミテーションの健闘も、ひとしきり撃ち合って満足したらしいジャンによってあっさり止めを刺されていた。
あんなに熱くヤリ合ったのに、男ってひどいよね……。
それにしてもジャンの戦闘スタイルって、晴人君も好きだったBF13に似ている。
BF13は、アクションRPGで、ジャンがやってるみたいに空中を飛び交ったりする人外戦が主だ。
……おかしいよね、人として。
どういう原理で重力に逆らっているのかさっぱり分からない。
全く、変態ってだけでも規格外なのに、戦闘能力まで規格外って誰得だよ、と思っていたら……。
次のディーノさん戦では、ディーノさんも宙を舞っていた。
おかしいよ?!
ジャンならともかく、がっしりした重量級のお侍さんが空を飛ぶのは絶対におかしいと思うよ?!
しかもディーノさんは最初、一撃で屠ろうとして、その攻撃をいなされてから目の色が明らかに変わった。
バーサクモード、解禁……!
宙を舞い、壁を走りながらイミテーションに襲いかかるディーノさん。
に、逃げてっ!
逃げるんだっ、イミテーション~っ!
晴れやかに大剣を担ぎ直すディーノさん。
その背後に、薄れながら消えゆくイミテーション。
……合掌。
ジャンとディーノさんの最強武器は、忍刀・天魔に刀の上総守。
ディーノさん戦後に拾った宝箱の中身はコウガグローブ。
二人はいずれも一騎打ちで完封勝利。
脳筋が勝った瞬間だった。
「は、ははは……」
ソル君、笑顔が強ばってるよ。
「ディーノさんもジャンさんも、すごいですね!」
純粋に健闘を褒め称えるルーナ。
ちょっとルーナの目がきらめきすぎて、逆に心配になってくる。
ルーナ、アレを目指しちゃ、ダメだよ?
次の広間はソル君戦だ。
「ソルも一人で行ってみろよ。
自分と戦えるなんて、滅多にない経験だぜ?」
脳筋の言葉に、ためらうソル君。
「なんっで一騎打ちする必要があるでござるよっ?!
ルーナにもそんなことさせる気でござるかっ?!」
がうっと一喝すると、ジャンが渋々口を閉じた。
この流れは良くないと思うのだ。
キラキラした目で脳筋戦法を見ていたルーナが、何か勘違いして頑張り始めたらどうしてくれるのだっ!
「……いや、やはり私も頑張るよ。
ルーナの影だとしても、ルーナ相手にまともに戦える気がしないからね……」
憂鬱そうに呟いたソル君は一人で第三の広間に進み出て……見事、最強杖の自在天を入手して戻って来た。
憂鬱そうに出かけていった割に、ノリノリで
「ふっ、そんな魔力の込め方で私に勝とうなど……」
とか言って、容赦ない魔法の撃ち合いで相手を焼き焦がしていた勇姿は忘れないよ。
あのさ、なんかこの流れ、良くないんじゃない……?




