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何もなかった


 その辺の岩陰に連れ込まれて、お嫁に行けない体にされそうになったものの、尋問に屈することで事なきを得た私。

 肉を切らせて骨を断ったわけだよね!

 え?

 違う?

 ま、まぁいいのだ。

 転生のことまで喋らされたけど、死亡フラグが消えた以上、私のこれからの人生は長い、はずだ。

 ということはつまり、ここでこんな変態シーフにとっ捕まるわけにはいかないということだ。

 うん。

 まだ大丈夫。

 捕まってない。

 恩義は感じてるけど、だからって嫁にはなりません、絶対。


「……なんだよ、センセイ」

 膝の上に抱っこされている現状には目を瞑ろうと思う。

「よく信じたでござるよな」

 転生した件について、普通は一度や二度は『本当に?』ぐらい言われそうなものなのだが、ジャンは『そうか』で終わった。

 脳筋だから、本能で受け入れたんだろうか……?

「この後に及んでセンセイが嘘つく理由が分かんねぇ。

 そもそもディーノさんが言ってた、”ラビウサだからなんでも知ってて当たり前”って原則が崩れたわけだろ?

 知識を教えてくれる相手もいないんなら、生まれる前の知識って可能性も、あり得なくはない」

 ……ん?

 

「ジャ、ジャンが賢そうなことを言ってる……?!」

 脳筋の本能じゃないのだろうか?!

「あ~……まぁ、ソルほど頭良くはねぇけどな……」

 そもそもソル君と比べられるレベルって時点で脳筋ではないような……。

 いや、最近の脳筋はちょっとお利口さんなのかもしれない。

 時代の流れが変わってきてるのかも。


「さ、最近の脳筋はちょっとラビーが知ってる脳筋じゃないのかもしれないでござるな……」

「失礼だな、センセイ。

 俺だって多少は考えてるぞ?」

 うん、まぁそうみたいなんだけどね?


「センセイがなんか隠し事してるってのも分かってたし。

 レベル上がっても全然嬉しそうじゃねぇから、弱いのが原因で俺らから離れる覚悟してたわけじゃねぇってことは分かってたし。

 ラビウサの寿命とか持病とかなんかあるのかって思ってたらまさかのモンスターだったし。

 ……迷宮の主とかいうオチじゃなくて、それは良かったけどさ」

 ぎゅうぅぅぅ~と、抱きしめる腕に力を込められた。

 ジャンの力でいったら、私を絞殺できるぐらいの腕力は持っているはずだが、苦しいけど苦しすぎない拘束で、手加減されているのがなんとなく伝わった。


 心配かけたんだな……。

 私はそっとジャンの腕に頬を寄せ――ようとして我に返った。

 ほ、絆されてなんかないっ!

「わ、悪かったでござるよ」

 でも、とりあえず謝ってみた。

「俺もセンセイに頼りっきりだったから、おあいこだな」

 くっ、なんかジャンがイケメンっぽいこと言ってる……っ!

 だ、騙されちゃダメだっ!

 こいつは女好き、こいつはハーレム野郎、いけいけハーレム、ハーレム万歳……。


「……センセイが、無事で良かった」

 っだ~っ!

 絆されてない!

 湿気を帯びた声を耳元に落とされて、初心な私が狼狽してるだけだっ!

 ”恋の錯覚☆吊り橋効果♡” なのだっ!

 私はハーレム要員じゃ、ないっ!




 勇者達の元に戻ってみると、ルーナとディーノさんが露骨に安心した顔をした。

 心配してたんなら止めてくれ、と心の底から思った。

 男慣れしていない私が、ひょんなことで悪い男に騙されたらどうしてくれるのだっ!

 ……だが、ソル君はいつも通りのソル君だった。


「あ、ラビー。

 もう一度プリンに戻ってくれるかい?

 ジャンにムーンピアスを盗ませるから」

 

 ……はい。

 分かってる。

 っていうよりむしろ、分かってた。

 ソル君がこういう人だったって。


「じゃ、変身するでござるよ」

 ムーンピアスのためなら、もう一度プリンにだってなるしラビウサの裸体だって晒すさ。

 ……ジャンの目から隠すように背中を向けたのは、ちょっと自意識過剰だったかもしれないけど……変態が、何に興奮するのか分からないからなぁ……。


「ラビーちゃん……ついに危機意識に目覚めたのね!」

「ジャン……何をした……?」

 ルーナ、ちょっとその評価はどうかと思う。

 無防備ヒロインにそんなこと言われるのは、いくらルーナ相手でもちょっと……。

 あとディーノさん。

 特に何もなかったけど……ま、いいか。

 楽しそうデスね、師弟対決。


「ラビー、以前と違って色が変わっていないか?」

 そしてソル君はどこまでも平常運転だな!

 稽古以上殺し合い未満の師弟対決に動じないなんて、ちょっと人としてどうかと思う。

「あ~、なんかソル達を撃退したら進化したらしくて、それで色が変わったでござるよ。

 亜人化もその時に覚えたでござる」

「綺麗な色ね、ラビーちゃん」

 えへへ。

 女子好みするピンクだからね。


 師弟対決を強制終了させたのは、ソル君だった。

 驚くべきか、必然と取るべきか……。

「ジャン、ディーノさんもいい加減にしてください。

 遊んでいていい状況じゃないでしょう。

 ただでさえジャンとラビーのせいで時間を取られたというのに……」

 わ、私のせいなの?!


「……すまない」

「悪ぃ」

 え?!

 だから私のせいなの?!

「さっさと盗め、ジャン」

 ありがたいムーンピアスを盗める封印モンスター様にその言いぐさ?!


 盗まれるのは痛くなかったけど、心のどこかが痛んだよ……。




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