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詰んだ

 

 体の中に入り込んだジャンの拳が、私の中の大切な物を握りしめて引き抜かれていった。

 大切な何かを引きずり出され、一気に体から力が抜けていく。

 痛みより朦朧とした苦しさが全身を覆っていた。


 もう、これで、終わり――


「ルーナ!回復!」


 お祖母ちゃん、私、頑張ったよ――


「ケアレスト!」


 お兄ちゃん、憧れのルーナたんに、私会えたよ――


「センセイ、おいっ、大丈夫かっ?!」


 ――……んん?


「プリンだと分かりづれぇな……センセイ、いつものラビーに戻れるか?

 体、まだ痛むか?」


 …………どゆこと?




 男性陣と同じ背の高さだったプリンから、腰までの高さのラビーに戻る。

 ……体に異常なし。

 精神は……ただ今混乱状態だ。

 ただ、混乱しているなりに分かっていることもある。


「ジャン、先に盗めって言ったでござるよ!?

 あと、倒さないとダメでござろうがっ!

 せっかくちょっとは見直したってのに!」

 なぜ、五体満足なのだ、私が。

「……さすが失言女王、ラビー……」

 ソル君の無礼な呟きに気づいてきっと睨みつけた。

 その私にタックルしてくる、北欧美女。


「ラビーちゃんっ!

 どうして何にも言ってくれなかったの?!

 ジャンさんが頑張ってくれなかったら、ラビーちゃん死んでたのよ?!」

 ……え、えぇと?

 死亡フラグはまだ立ってるよね?

 事態は何も改善されてない……んじゃ?

「俺がやろうと思ったのだがな。だが見事だった、ジャン」

 なんか……やろうが()ろうじゃないように聞こえるのはなんでだろう?


「……センセイ。これ、なんだと思う?」

 ジャンが私の前にしゃがんで、かざして見せたアイテム。

 ……封印の鍵に見える。

 封印の鍵にはそれぞれの属性の色がついているから、これは火属性の鍵だ。

 つまり、私の鍵。

「へ?

 ど、どどどどどどういうことでござる?!」

 慌てて体をパタパタ探ってみた。

 体内にしまってあった鍵だから、それで見つかるものでもないんだけどね。

 気持ちの問題なのだ。

 そんな私にワンピースを着せかけてくる、ジャン。

 ……手慣れている。


「か~わいいプリンさんだったよなぁ、センセイ。

 あらかじめ言っといてくれりゃ、もっと最初から対策立てられたのによぉ?」

 チンピラだ!

 チンピラがいる!

「気配で探るのは難易度が高い。

 半透明なプリンで助かったな、ジャン」

「さすがにキマイラみたいなモンスターだったらディーノさんに任せてたんですけどね。

 プリンだったから分かりやすくて助かりましたよ」

「プリンでなかったら、俺でも失敗していたかもしれんがな」

 ジャンとディーノさん、ソル君にルーナが一斉に私を見た。

「「「「プリンで良かったな(ね)」」」」

 ……お願い。

 もうちょっと詳しい説明モトム。




「え~……つまり?

 プリンの体だと半透明だから、命の核と封印の鍵が透けて見えていて?

 核を避けて鍵のみを取り出したと。

 ズボッと私の体に手を突っ込んで」

 私はあの激痛を思い出した。

 直前だったから、わりとすぐ記憶は再現できた。


「――むっちゃくちゃ痛かったでござるよっ!

 この、下手くそっ!」

 絶っ対に、ディーノさんの方がうまかった!

 天才外科医な感じで、ディーノさんの方が痛みに気を遣ってくれた!


「……やっぱり失言女王……」

 うっさいソル君!

「……へ~……下手くそ、なぁ……」

 ゆらり、とジャンが立ち上がった。

 なんだか妙な迫力がある。

「ほ、本当に痛かったんでござるよっ」

 言い返しながらも、腰が引けているのは自覚していた。


「じゃあ、お詫びに気持ちイイことしねぇとなぁ……?」

 セクハラだ!

 でもそれ以前に、貞操よりも命の危機を感じる……!

「け、けけけけっこうでござるっ!

 ちょ、ちょっと一人で休んで体力の回復を……っ!」

 じりじり後ずさっていた体を簡単に捕獲された。

 ひ、ひぃぃぃぃ……


「ジャン。

 婚前交渉は認めんぞ」

 ディーノさぁぁぁん?!

「寸止めしますんで」

 それって寸止まってないよね?!

 ちょ、ちょっと私ラビウサ!

 人間とは結婚も恋愛も出来ませんよっ?!


「……ほどほどにな」

 許可はNG!

 ちょ、誰か助けて!

「ルーナっ!」

 抱えられた体を無理やり動かして、ルーナに救援の眼差しを送った。

 ……申し訳なさそうな視線が返ってきた。

「ル、ルーナァァッ?!」

 ルーナの横で、ちゃっかりソル君が手を振っていた。


 つ、詰んだ?




 〈残された勇者達〉


「ジャンさん、無茶しないかしら……」

 ジャンの熱愛ぶりを側から見て思い知っているので、逆にラビーの身が心配になったルーナだった。

「まぁ、無茶しようとしても限界があるだろうから……」

 あの体格差で挿入は不可能だろうと、ソルは最低なことを考えていた。

「……やはり許可は出すべきではなかったか……」

 ルーナを嫁のように思っているディーノにとって、ラビーは孫娘だった。


「たまにはいい薬ですよ、ディーノさん。

 下手な隠し事で私達の気を揉ませた罰則ぐらいは受けてもらわないと」

 冷たく突き放した口ぶりだったが、ラビーの正体を知ってでくの坊のように突っ立っていたソルを知っているディーノは、柔らかく微笑んだ。

「……無事で、良かったな」

 照れくさそうな顔を背けて、ソルは呟いた。

「まだまだ私達には必要ですからね」

 ルーナは、僅かに頬を染めるソルを見上げて嬉しそうに微笑った。




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