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ステータス上げ


 遠くでグチャッという音が響いたが、誰も気にしていない。

 っていうかルーナの汚らわしいものでも見るような目線が怖い。

 お願いルーナ、怖いお顔、めっ!


「で、これは何かな」

 ソル君が手にした指輪を私達に見せた。

 深い海を思わせるサファイアが輝く指輪だ。

「それは、サファイアリングでござるよ!

 装備しているだけで徐々にMpが回復するという、夢のアクセサリでござる!」

 是非ともソル君に装備してもらいたいところだ。

 これからのステータス上げに必須ともいえる装備だからね!


 

 いよいよ、砂岩の迷宮に入る。

 地上部からそのまま入った場所は、実は尖塔の上部に当たる。

 砂岩の迷宮はすり鉢状の構造になっており、外縁部が最も高く、中心部が最も低くなっている。

 中心部に裏ボスであるファントムがいることは言わずもがな。

 

 入り口である尖塔から一本道が、曲がりくねりながらも中心部へ繋がっている。

 その道には4カ所の広場があり、そこで行われるのが中ボス戦という寸法だ。

 さて、私達は今、入り口の尖塔に入ったわけだが。


「ラビー。これは……魔法陣?」

 尖塔と言っても、中の構造はだだっ広い。

 直径20メートルほどあるのかと思われるような広さの部屋が、入り口から入ったすぐそこにあった。

 その床には、四つの魔法陣がある。

 深紅、蒼、琥珀、藍の色を滲ませた魔法陣が、窓から漏れた日差しに反射してうっすら発光していた。


「そうでござる。

 この魔法陣を踏めば、それぞれの聖域の近くにある都市に、一瞬で跳べるでござるよ。

 深紅はカティア、蒼はシューロス、――」

「――黄色いのがラヴァティーで濃い青がミバドゥ。だろ?」

 ジャンの言葉に、私は頷いた。

「そうでござる。

 ジャンさえ分かってるようなら、皆は分かるでござるな?

 魔法陣の色と属性の色が対応してるんでござるよ」

 私の言葉に、ディーノさんとルーナが、『へぇ~』という顔をした。

 ……あれ?


「で、まさかこのままこの一本道を下っていくわけではないんだろう?

 ラビーの言うような強大な敵と戦うには、私達はいささか準備不足のように思うけど?」

「うむ。まだ封印モンスターを一体倒していないでござるからな。

 それでもここに連れてきたのは、ここが最適な狩り場だからでござるよ」

 この部屋から出る道は、暗闇に向かって延びる中心部への通路、だけに見える。

 だが、この部屋には実はもう一つの扉が隠されているのだ!


「こっちでござるっ」

 砂岩の壁に溶け込むように作られた、扉。

 ……ゲームでは○ボタンを押せば開いたのだが、この取っ手も何もない扉を開けるにはどうすればいいものか……。

「へ~。こんな所に扉があるんだな。

 ん?取っ手がねぇな。

 センセイ、ちょっとどいてろよ」

 

 ドゴォォォン


 ……うん。

 知ってた。

 脳筋的解決法があるって、ずっと前から知ってた。

 



 脳筋が蹴り開けた……というか、蹴り砕いた先には、砂岩の迷宮外縁部のダンジョンが広がっていた。

 ダンジョンと言ってもそう広くはない。

 炎天下、至る所にあるサボテンの茂み。

 その、露天の岩砂漠が絶好の狩り場なのだ。


「なんだこれ……サボテン?」

 ここに出てくるモンスターは一体のみ。

 その名も……サボッテンダー!

 キューティーカクタスのようないかにもなサボテンの形をしているのだが、なんせ体がぶよぶよと大きい。

 そして……ここが重要なのだが、なぜか腕(?)を枕にして寝そべっている。


「ここのサボッテンダーは攻撃してこない上に、こちらの攻撃がどれほど強力でもダメージが1にしかならない強烈な防御力を誇ってるでござるよ!

 逆に言えばつまり、どれだけ攻撃しても相手は死なないし、こちらを攻撃もしてこない。

 アビリティを無駄打ちするには最高の相手なんでござる!

 しかも!しかも倒せば莫大な経験値を落としてくれるんでござるよっ!」

 まさしく、開発者様(神様)の生み出してくれた夢のモンスターである!


「ラビー。だが倒せないのではないのか?」

 ディーノさんが鋭い質問を投げかけてきた。

 うむ。

 さすがイケ侍。

「それなんでござるが、例外的にルーナの”サクラメント”だけは有効なんでござる。

 ”サクラメント”はモンスター浄化の効果もあるでござろう?

 その効果のおかげで、”サクラメント”を唱えれば即死してしまうんでござるよ」

 どれだけ戦っても倒せない鉄壁の防御力を誇るサボッテンダーが、サクラメントの一発で即死。

 これを発見した先人プレイヤーの功績は偉大である。


「さ、頑張ってくるでござるよ!」

 にこやかに送りだそうとしたら、ガシッとジャンに腕を掴まれた。

「……なんでござるよ?」

 変態シーフはにこやかな笑顔で宣った。

「センセイもレベル上げ。

 強くなれば、事故で怪我する確率も下がるだろ?」

 は?

「ラビーちゃん、頑張ろうね!」

 え?

「最初は石でも投げてもらうかな……」

 うえ?

「……なせばなる」

 はぁぁ?!


 地獄の特訓が、ここに開幕した……。

 




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