旧街道にて
さて、これから私達は裏ボスのダンジョンに向かおうと思う。
裏ボスのダンジョン、略して裏ダンは、横に長い長方形の、下辺中央にある。
ラヴァティーのうんと南だ。
今いるカティアの、真西になる。
うん、たぶん西。
西っていうより、左?
まぁとにかくそんな感じの場所にある。
名前は、”砂岩の迷宮”。
カッパドキアの奇岩群みたいな感じの砂岩で出来た塔が乱立しているはずだ。
実を言うと、私が知ったのはBF6が先。
その後でネットから、迷宮のモデルがカッパドキアの奇岩群だと知ったのだ。
……ほらね、ゲームも勉強になるヨネ!
で、カティアからそこへ行き、また迷いの森に帰ってきて封印のプリンを倒し、再び迷宮に行って裏ボスを倒す。
はいはい、行ったり来たりだよね!
カティアから砂岩の迷宮まで、結構ある。
ここからラヴァティーに行くよりは多少近いと思えば、それでも3日はかかるんじゃないかと思う。
時間の無駄だよね?
そう思うよね?
だがしかし!
BF6には――というより、BFシリーズには終盤にだけ使える交通手段があるのだ!
その名も――移動魔法陣!
違うゲームでは飛行艇だったけど、BFシリーズでは魔法陣に乗ってお手軽移動という技が使えた。
もちろん、使用制限はあって、その制限解除の条件が2つ。
四大精霊王の加護を得ていること。
砂岩の迷宮に自力でたどり着くこと。
以上だ。
砂岩の迷宮は、カティア方面からしかアクセスできないようになっている。
そのため、カティアからてくてく歩いて迷宮にたどり着いて制限解除する必要がある。
だがその制限さえ解除してしまえば……砂岩の迷宮を経由することにはなるが、カティア、シューロス、ラヴァティー、ミバドゥの4都市を瞬時に行き来できるのだ!
魔法陣最高!
ゲームでしか乗ったことないけど、現実に魔法陣を使ったらどんな感触がするのか楽しみだ。
体に何か違和感とか感じるのだろうか?
カティアに戻る一度だけしかチャンスはないはずなので、じっくり楽しもうと思っている。
カティアでごっそり食料やテント、回復薬を買いこんだ私達は、さっそく砂岩の迷宮に向けて旅立った。
「……センセイ……」
「ラビー、本当にこんな所に道があるのか?」
ただ今、ちょびっと道なき道を踏破中である。
「も、もうちょっと行ったら旧街道に出るはずでござるよっ」
ジャンやソル君達の腰の辺りまである藪をかき分けながら進む山中。
彼らの腰の辺り、ということは……ラビーの頭より上という寸法になる。
……私にとっては、藪ではなくて密林だった……。
「ほらセンセイ、危ないからここに乗ってろよ」
ヒョイッとジャンに抱きかかえられて、やつの左肩に乗せられた。
……妖精さん、みたいな……?
いやむしろ憑依霊?
座敷童的な何かという見方もあるかもしれない。
「センセイ、どっちだよ?」
北欧美女に典型的王子様イケメン、ちょい悪イケメン、渋イケ侍に囲まれた、純日本人であるわたくしことラビー。
いや、本当はプリンだけどラビーの顔って透子に似てるからね。
「……疎外感が半端ないでござるな~……」
やはり座敷童か……。
「なんか黄昏れてる?!」
ただ単に方角を聞きたかっただけらしいジャンが変に狼狽えていた。
「あ~、あっちでござる」
たぶん、という言葉を飲み込んで、私は自信満々に指さして見せた。
藪をかき分けること30分程にして私達は旧街道に出た。
ちなみに、ここでの30分はジャン達コンパスの長い人間の30分である。
ラビウサの足では……たぶん、2時間ぐらいかな……だってあいつら脳筋男子ばっかだもん。
で、この旧街道だが、ラヴァティーから延びる街道のような石畳ではない。
土が踏み固められているだけの道だが、それでも藪の中を行くより断然歩きやすい。
私だって妖精さん状態を解除して普通に歩けるしね。
「この先にあるのは砂岩の迷宮と呼ぶでござるよ。
迷宮とは言っても実は一本道なんでござる」
私は歩きながら、これからの攻略情報をソル君に伝授中だ。
けしてルーナとのイチャイチャ冒険旅行を阻止したかったわけではない。
だって考えてもみて欲しい。
誰に情報を渡すか。
ジャンは、たぶん教えてもその情報を無視して脳筋戦法でいっちゃうと思うのだ。
ディーノさんは……いや、ディーノさんには深遠な考えがあるからね!
深謀遠慮が一周回って帰ってきてバク転した感じの深くて味わい深い思考回路をしてるから、小賢しい攻略情報は要らないと思うのだよ、うんうん。
ルーナでもいいんだけど、優しいルーナにはジャンとディーノさんを仕切る能力に不安がある。
脳筋戦法や深謀遠慮バク転戦法を押し通された場合、競り負けちゃうと思うのだ。
その点、ソル君は相手にとって不足がない!
会計担当なだけではなく、パーティを率いるリーダーとして非常に優れている!
……リーダーシップ力じゃなくて小姑力?
なんでもいいんだ、結果さえ出れば。
頑張れソル君、君の記憶力なら完璧に暗記できると信頼している!
「……わざわざソルに教えなくたって、センセイが教えてくれればいいだろ?」
鬱陶しそうに私の話を聞くソル君の横からジャンが口を挟んだ。
「っべ、別に情報の共有ぐらい構わないでござろうが!」
「情報の共有ねぇ……今までしてこなかったのになぁ?」
なんだ、この不良が優等生に絡んでくるようなねちっこい口調はっ。
「ラビーちゃん、最近ちょっと変だよ」
ルーナにまで言われた?!
「へ、変ってなんでござるよ?!」
私の、妙に喉に絡んだ声に、ルーナはとんでもない暴露を始めた。
「だって……今までお風呂は別だったのに、一緒にシャワー浴びようって言うし……」
っち、違う!
そろそろ冥途の土産を準備なんて意味合いはないんだっ!
「確かにこれまでも時々は一緒だったけど、最近ベッドも一緒だし……」
してない!
なんにも手は出してないよっ?
「寝る前のおやつも『あ~ん』って食べさせ合いっこだし……」
……ダメだ。
詰んだわ。
隣のソル君から半端ない殺気が飛んできてるわ……。
「――ラビー」
「……友情でござる」
ちょろっと弁解したら、満面の笑顔ソル君という悪夢を間近で見てしまった。
魘されるな、当分。
「ちょっとあっちで話してこようか」
……拷問だ。
絶対に拷問が待っている!
「……ルーナ、俺の話、台無し……」
「友情に口出しするのは野暮だと思うが」
お侍さんとシーフさん。
口だけじゃなくて、助けようよ?
「――っぎゃぁぁぁぁっ」
耳をわしっと掴んで茂みに連れて行かれ、正座でのお説教が一時間。
……足が痛い……。




