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ノーマルエンディング


 BF6には、2つのエンディングがある。

 ノーマルと、トゥルーエンディングだ。

 真のエンディングともいう。

 ノーマルエンディングでは、ルーナが月の剣を入手してからそのままラボス戦に挑むことになる。

 ラスボスのHpをゼロにまで減らしたところで、イベントが始まるんだ。


『ルーナ いまこそ つきのけん を!』

 二頭身のルーナが、その言葉と共にルヴナンへ剣を突き立てる。

『ぎゃあぁぁぁぁっっっ!』

 ルヴナンは、月の剣によって呆気なく消滅した。

 その煙がおさまった時、その場に倒れていたのが……ルーナだ。

『ルーナ? どうしたんだ ルーナ?』

 ソル君()は、せっかくラスボス戦が終わったのに倒れているルーナを見て、ものすごい嫌な予感に捕らわれる。

 それは、月から帰ってから折々にルーナが見せていた、憂いのある言葉によって裏付けられてもいた。

『ソル さん……どうか しあ わ せ……に……』

 ルーナの、最期の言葉。

 抱き上げるソル君()の腕の中で、ガクッと脱力するルーナが映る。

 そうしてルーナの顔が、二頭身の顔が、真っ青になっていって……息絶えた、ことが分かるのだ。

『どうして……!どうして ルーナ!』

 しっかりとルーナを抱きしめながら泣くソル君()

 驚きと、それまで降り積もっていた嫌な予感と、失われてはならない者が失われたことへの嘆きで、涙が止まらない。

 テレビ画面は涙でぐちゃぐちゃに滲んで、ルーナを抱きしめるソル君の姿が朧に見えるだけだ。


 そこに、透明感のあるメロディーが流れ始める。

 和音なんて3和音ぐらいしかないだろうに、その美しいメロディーは単純で、でもどこまでも透き通っていた。

 まるで、最期のルーナの願いがそのまま音楽になったみたいだった。

 ソル君達を映していた画面は徐々に上を向き、晴れ渡った青空が画面を埋め尽くす。

 私の涙で歪んだ目には、その空は今までで見た、一番綺麗な空に映っていた。


 例えば、台風が過ぎた後の晴れ渡った空。

 例えば、初めてデートをした時の、綺麗な雲がぽっかり浮かぶ空。

 例えば、お父さんにおんぶしてもらった時の、夏空。


 そんな、私が今まで見た中で一番綺麗な空が、そこに映っていた。




 そんなの、認めない。

 

 そりゃあさ、真のエンディングはリア充エンドとも呼ばれて、キャッキャウフフしてる二人が映るというルーナファンにとってはちょっぴり複雑なエンディングだけども。

 美しさ、完成度、という意味では確かにノーマルエンドの方が優れているのかもしれないけれども。

 でもあんな空を、ソル君には見せてやらない。

 死の美学なんて、ルーナには要らない。


 つまりだ。

 私のすることはこれまでと一緒だというだけなんだ。

 だってさ、ルーナが死んだ場合、ソル君ってどうなると思う?

 プレイヤーが後ろにいない、粘着系チョーロー勇者のソル君。

 なんかさ、第二のルヴナンになりそうじゃない?

 それか魔王とか。

 そりゃまぁ、ディーノさんとジャンがいればストッパーにはなると思うよ?

 でもさ、ディーノさんは山奥で出会った熊と素手で決闘の挙げ句瀕死の重傷負いそうだし、ジャンは何股かかけてた女性から背中を刺されそうだ。

 そうなった場合、ソル君を止められる人間はいなくなる。


 魔王、爆誕……!


 おうふ。

 そんなんで架空のBF6-2を作らないで欲しい。

 2は要らないのだよ。

 2は。




 私達は無事にカティア(最初の町)に戻って来た。

 ポッド君はそのまま月へ戻ることになった。

 彼は、墓守になるのだ。

 そう、ルーナ(最後の民)が命じたから。

 

 白い雲を描きながら上空を飛び去っていくポッド君を見送るルーナの横顔は、どこまでも静謐で穏やかだった。

 覚悟を、もう決めてしまっている顔だった。

「ルーナ」

 呼びかけて手を軽く引っ張ると、ルーナは私を見下ろしてにこっと小さく微笑ってくれた。

 でも視線はすぐに去って行くポッド君に戻る。

 ……何を考えてるんだろう。

 ……きっと、もうすぐ私もそっちに行くからとかなんとか、そんな感じのアレじゃなかろうか。


「そんなの、認めないでござるよ……」

 私の名前を言ってみろ……!

 私はこの、BF6マスターなのだ……!




 ポッド君が飛び去ったカティア近郊の森で、私は宣言した。

「ちょっと話があるでござるよ」

 私の声に、勇者達は振り向いた。

 ソル君は私というより、ルーナを気にしている。

 ふむふむ、さすがは粘着系勇者。早速恋人の異変に気づいているようだ。

 いや、むしろそこはぜひとも気づいてもらいたい。

 ジャンは期待に満ちた、キラキラ輝く眼差しを私に向けた。

 ……どういう期待をされているのかちょっとよく分からない。

 おやつ希望とか?

 ディーノさんは全くもって読めない眼差しを私に向けてきた。

 たぶんあんな硬派な顔でおやつ……とか思ってるんだろう、ディーノさんは。


「……あ~、じゃあまずはおやつにしようでござる……」

 ディーノさんの物言わぬ眼差しに、私は勝手に敗北してしまった。 

 いや、だって私がおやつを作れるのももう何回かだけだろうし。

 忘れて欲しくないってわけじゃないけど、私のおやつを食べて笑ってるみんなの顔を心に焼き付けておきたいっていう殊勝な気持ちに負けたっていいではないか。

 覚えておくなら、笑顔がいい。

 ずっと憧れてたヒーローやヒロインの、無防備な笑顔。 

 墓場まで持っていったって、罰は当たらないと思うのだ!




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