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火事場泥棒と友情

 

 よくさ、ゲームであるじゃん。

 制限時間イベント。

 制限時間内に何かしなきゃいけないのに、その途中にはレア宝箱があったりして、いかに無駄なく宝箱を開けるか、なんてのが攻略の鍵だった。

 途中の敵とのエンカウントによっては時間切れになっちゃうから、ロードし直したりして。


 あとさ、むっちゃ悲しくて泣けるようなイベント中に、うろうろ歩き回って宝箱回収しないといけないこととかもあるじゃん?

 その時限定の宝箱とかさ。

 アタシこんなイベント中になにやってるんだろう……って、賢者モードになれるやつ。

 宝箱開ける効果音がイベントの邪魔になったりしないかとか、変にひやひやするんだよね。

 あと、他の仲間から顰蹙買わないんだろうかとか考えたり。

 『こんな時になにやってるんだ?!』って思われてないかな、とか。




 今が、まさにそうだった。

 月は、今しか来れない。

 今しか宝箱を開けるチャンスはないのだ。

 そしてそこには貴重な武器防具もあったりする。

 特にルーナの最強防具。

 物理攻撃に弱いルーナだけど、常時プロテクトとアクセルの効果がある、最強防具なのだ。

 ルーナの精神も上げてくれる万能さも持ち合わせている。

 期間限定、今だけ入手のチャンス!


 ……で、でも、このくっそ重い空気の中、『宝箱開けに行こ~』なんて言い出せない……!!




「お兄様……どうして……っ」


 手記を胸に抱きしめて嘆くルーナ。


「……ルーナ……」


 もどかしげにルーナを見つめるソル君。


 い、言えないっ。

 ちょっと寄り道して、ルーナが住んでた部屋探しに行こう、なんて……!!

 こ、こういう時はどうすればいいんだ……?!


「……センセイ、さっきからなにソワソワして……はっ?!まさかトイレ?!」


 小声で囁いてきたシーフの足はきっちり踏んでおいた。

 ふむ、しかしジャンを巻き込むというのは案外、いい考えかもしれない。


「――ジャン、ちょっと散歩に行くでござるよっ!」


 小声で囁いて部屋を出る。

 戦えるのがジャンだけというのは心細いのでディーノさんも引っ張ってきた。


「――どうした、ラビー」

「こういう時は二人っきりにさせてやるでござるよ。ついでにここら辺を”お散歩”するでござる」


 まさかソル君も、泣いてる女の子相手に無体なことはしないだろうしね。


「それは構わんが……」


 よっし、ちょっぴり外野の二人を巻き込むことに成功したぞ!!




 し、死ぬかと思った……。


 いや、途中までは順調だったんだよ。

 二人ともレベルだけじゃなくてステータスも高いから。

 でも、途中で物理攻撃無効のクリムゾンエレメントが運悪く出てきてさ。


 二人とも脳筋じゃん?

 物理判定以外の攻撃に、銭投げがあるって気づいた頃にはHpが半分以下に減ってたよ……。

 そして、とてもソル君には言えない額を浪費しちゃったよ……。

 これがゲームだったら迷わずリセットしたのに……!!


 うん、あれはとんずらしなかったジャンが悪い。

 なぁ~にが、


「センセイの足だと追いつかれる」


 だよ。

 ラビーの俊足なめるんじゃないよっ!


「……ふぅ、ここまで帰ってくれば安心でござるね」


 入手すべき宝箱は全部開けてきた。

 ガラシャマントもゲットした。

 スーパーエリクサーもゲットしたし、賢者のローブもゲットした。

 その他回復アイテムもばっちりだ。


 月に勇者貯金なんてシステムはないだろうから、私達が今やったことはまさしくどろぼ――いや!なんでもない!

 生きてる人間、しかも勇者の糧になるのだ。

 きっと遺していった人達も本望なはず。

 うんうん。


「――ったく、ひやひやしたぜ、センセイ」


 ジャンが地味に私の”お散歩”を非難している!


「ひやひやしたのはこっちでござる!」


 脳筋潰し、なんて恐ろしいエレメントだろうか。




「ラビーちゃん!」


 元の部屋に戻ると、真っ赤な目をしたルーナが私に抱きついてきた。

 ……身長差があるから、抱きかかえられた。


「どこに行ってたの?気づいたらいなかったからもう、どうしようかと……」


 ぎゅっと抱きしめられてから床に下ろされた。

 ルーナは決意を秘めた目で言った。


「……わたくしの都合なんだけど、止めたい、人がいるの」


 そう言って、ジャンとディーノさんを見つめた。


「いいぜ?」

「寄り道ぐらい、構わん」


 さらっと同意するジャンとディーノさん。

 いいよね、なんかこういう”仲間”みたいなやり取りって。


「ラビーちゃんも、いい?」


 お?私も?


「うん、いいでござるよっ。……でも、ラビーは応援しかできないでござるが……」


 もはやデザートプリンセスに戻っても雑魚敵にすら負けちゃうからね。

 戦闘要員としては全くの無力だけどね!

 ……言っててちょっと悲しくなってきた……。

 だがまぁ、攻略のお手伝いとか、できることはあると思うのだ。


「ううん、いいの。ラビーちゃんの応援が、とても、嬉しいから」

「ルーナ~!!!!」


 ひしっと抱きついた。


「ルーナ、大好きでござるよ~!!!!」


 なんだろう、この可愛い人!!

 北欧美女なのに可愛いとはなんてチート!!

 もはや無敵!!

 私の心、持ってけどろぼう!!


 抱きついたのは腰だったけど、すぐにヒョイッと抱きかかえられた。

 ……無心だ私、無心になれ。

 ルーナの腕力とか余計なことは考えちゃダメだ!!


「私も大好きよ、ラビーちゃん!」


 両想いだね、ルーナ!




「…………」

「…………」

「……耐えろ、麗しい友情だ」

「…………」

「…………」


 ん?



読んでくださってありがとうございます!!


……友情デス。

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