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キマイラ捜索


 さて、これまで敢えて後回しにしてきた、この世界の地理についてお話しようではないか。


 決して、地図の説明が苦手だから後回しにしてきたわけではない。

 いやでも絵の説明って難しくない?

 例えば小さい子に人気の、パンを模したヒーロー。

 あれを的確に文字で説明できるだろうか?

 ……無理だって。


 だがまぁざっくりとした説明ならきっと私にもできるはずだ。


 えぇと……まず、この世界に大陸は一つ。

 その大陸はものすごくデフォルメさせると、横に長い長方形のように見える……。

 見えるんだよ!

 ちょっと長方形の左上の角がムニュッと半島のように突き出しているとか、その半島の下は逆に湾ができていてくぼんでいるとか細かな差異はあるけど、とにかく長方形なのだ!!


 で、勇者達が育った孤児院のある、ホルンの町は長方形の右下の角にある。

 そのちょっと上に私のいた迷いの森と、カティア(最初の町)がある寸法だ。

 火の聖域もこの付近。

 

 右上の角に、シューロス(二番目の町)と氷の聖域があり、長方形の中央に神都ラヴァティー(三番目の街)がある。

 雷の聖域はラヴァティーのちょっと上。

 そこから左にまっすぐ行くと、ミバドゥ(四番目の町)がある。

 そこにある湾に水の聖域があるという位置づけ。

 つまりミバドゥは、長方形の左辺の真ん中にあるというわけだ。


 で、まだ行ってないけど長方形の左上に、セレネピア(最後の町)がある。

 町と言っても廃墟なのだが。

 ここが、ラスボスのルヴナンが封印された地になるのだ。


 つまり、私達は本来の最終目的地を目前にしながら、元いた場所にちんたら戻って行っている最中というわけだ。


「……やはり、こんなことをするより――」

「おっ、ラヴァティーの壁が見えてきたぞ!」


 ソル君としては、自分の命が助かるかもしれないという希望がありつつも、無駄足になるかもしれないという危惧を覚える旅程というわけだった。


「ラビー、ラヴァティーに入るか?」


 時刻はそろそろ夕暮れ。

 宿を取ってもいい時間帯ではあるのだが。


「……野宿しかないでござるよな……」

「……そうだな」


 頷く侍。


 私達が気にしているのは勇者新聞だ。

 災いの根源であるルヴナンの近くにまで行きながら帰ってくる勇者達を見て、どういうリアクションをされるかがちょっと読めない。

どうせ記事にされるにしても、人の多い街中で詰問されるとか、本当に勘弁して欲しいのだ。


 ……ゲームなら楽だった。

 ミバドゥまで行ってからラヴァティーに帰ってきても、怒ったり不審に思ったりするキャラクターはいなかった。NPCだから当然なんだろうけど。

 でもここは現実世界で、これからの旅を円滑に回して行くにはちょっとした気配りが必要だろうな、と思うわけだ。

 まぁ最悪、ルヴナンを封印ではなく倒す方法を探しているって言ってもいいんだけど。

 むしろ勇者新聞の取材を受けてインタビュー記事を作ってもらってもいいんだけど!

 ……でもそれも、月から帰ってからの方が無難だろうなぁ。


「聖域近くに、ちょっとした水場があっただろ?あそこでテント張ろうぜ」


 ジャンの言葉に頷きながら、私達は遥かに見えるラヴァティーの壁を横に見ながら迂回していった。




 雷の聖域にいる封印モンスターは、キマイラ様。

 彼はちょっぴりお茶目さんで、雷の聖域の外周部分にある壁の中で生活している恥ずかしがり屋さんだ。

 ……あんな巨体が壁の中で生活なんて不可能だろ?!というファンの声は常にあった。

 そういうのも込みでのお茶目さだ。

 きっと狙ってるのだ、そういう反応を。


「で、どこだいラビー」


 テント泊した翌朝、眩しい太陽の下で聖域の外周を巡る私達。

 う~ん、ゲームと違ってやたら広い外周部分の壁を探すのってけっこう難しい……。

 確かゲームでは、ちょっと壁の形状がギザギザしてる場所があって、そこだけ壁をすり抜けられる仕様になっていた。

 で、その先にあるボタンを押せばいざ尋常に勝負!だったのだが。


「う~、ちょっと待つでござるよ~」


 ひたすら壁の周りに沿ってうろうろ歩き回る私。


「むっ?!」


 なんか今、びびっと来た!

 何の変哲もないただの壁なのに、スイッと手が煙を押すように通り抜けられる場所があったのだ!


「ここでござるよっ!」


 喜び勇んでその目くらましの中に飛び込もうとしたら、シーフに捕獲された。


「はいはい、センセイは俺の後ろね」


 ……捕獲のやり方を、こいつは一度学んだ方がいい。

 いやしくもレディの襟首を掴んでぶら下げるとは、なんたる無礼であろうか!




 目くらましから入ったそこは、ゲームと同じくただの小部屋だった。

 で、目立たないように壁の上方にひっそり設置されているスイッチ。

 目立たないよう、とか言いながら、他に何もないから数分もすればいやでも気づくだろう絶妙さ。

 恥ずかしがりだけど、寂しがりでもあるよね、キマイラ様。


「……で?押していいのかな、アレ」


 おお、さすがは細かいソル君。

 数分と経たずに発見していたようだ!


「押したと同時に戦闘が始まるでござるから、準備ができていればいつでもいいでござるよ」


 私がそう言うと、


「じゃ、ここは狭いからセンセイは外な」


と言われて問答無用で小部屋から外に押し出された。


 ちょ、おい?!!


 ……あ、ゴゴゴッって音が聞こえてきた。


 ……お前は心配性の母親か?!


 そう言ってやろうと思ったけど、お仲間である封印モンスターの死に様を見なくていいから、それもまた良しと自分に言い聞かせたのであった。

 




読んでくださってありがとうございます!!

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