忍刀・五月雨
さて、親愛なる私の強敵・トレジャープリンと再戦するには、いったん小舟に乗り込まなければならない。
「いや~、楽しかったなぁ!」
ウキウキした様子の戦闘民族。
「何もドロップしなかったけど、あれはそういうものなのかな?」
時々モンスターからドロップする装備品を満足そうに眺めていた会計担当。
「腹が減ったな」
食わねど高楊枝を、敢えてポリシーをもってしない侍。
「ラビーちゃんどうしたの?なんだか元気がないわ。……ね、笑って?」
うわぁぁぁぁんっっっ!!
「ルーナ!!ルーナが一番大好きでござるよぅぅぅっっっ!!」
「え、えと、うん。私も大好きよ」
ひしっと抱きしめ合う、美しい友情。
百合ではない。
断じて違う。
……う~ん、キスまでならできそうな気が……。
「で。ラビー?そろそろアレは再出現したんじゃないかな」
私の背筋を冷やっとしたソル君の声が撫でていった。
くっ、女同士の友情にまで嫉妬してくるとは、なんて心の狭いチョーローなんだ!!
私は丘の方を見上げた。
ミョインミョインと蠢く、金色の影。
……いる。
「あ~、いた、でござるな~」
私の声を聞くやいなや、うぉぉぉ、とかそんな感じの叫び声を上げてジャンが小舟から飛び降りていった。
それに続くソル君の背中が心なしか嬉しそうだ。
「……これを倒したら、昼にしよう」
ポン、と私の頭を撫でていく侍。
隠しきれない殺気がダダ洩れていた。
「じゃあラビーちゃん、私も頑張ってくるわね」
「無理しちゃダメでござるからな!気をつけるでござるよ!」
「うん」
にこっと笑うルーナに、私も笑い返した。
ルーナは丘の方に向き直ると、ビュンッと一度、ロッドを鋭く素振りして見せた。
え~……。
わ、私は何も見てない。
見なかった!!
私は後方から勇者達の戦いに見入っていた。
いずれ、彼らは封印のプリンである私のことも、ああいう風に倒しに来るわけだ。
……まずは、ディーノさんの武器を封じるべきだよな……なんか状態異常とかにできないかな……。
ソル君の魔法が一番怖いから、火とか氷の魔法を使ってきた時にダメージ受けたフリしてしれっとHp回復させるのも手だよなぁ……。
あと、何気にルーナの回復が痛いから、その辺も防御しにくい睡眠とかで封じれれば……。
ジャンはもう、氷魔法で包んで固めとくしかないよね。
はっ?!
い、いやいや。
あんな人外どもとガチで戦う気なんてないさ!!
ただちょっと対策とかをだな……。
むっ?!
そうだよ、私がどんだけ強くても、ここは敢えて倒されないと封印の鍵がドロップできないじゃん!!
そ、そうだよ、負けなきゃいけないんだよ。
う~む、負けるのはいいけど、プリンの体には痛覚なんてあるんだろうか?
痛覚があるとしたら、あんまり痛いのは嫌だなぁ。
ふむ、ディーノさんにひと思いに真っ二つにしてもらうのが一番かもしれない。
ソル君の電撃食らうのもその他諸々も、なんだか痛そうだ。
ジャンは……どんな手を使うか分からないからなぁ。
当たりなら痛くない、外れたら激痛なんて結果になりそうだ。
うん。
やっぱり止めはディーノさんにお願いしたいところだね!!
ルーナ、泣くかなぁ。
泣きそうだよなぁ。
ラビーとは全然関係ない顔して倒されれば、それでいいのかもしれないけど……でも、お別れとか今後の裏ボス攻略も言っときたいしなぁ。
私は、ちょっぴり脳内シミュレーションしてみた。
『お前、モンスターだったのかよ?!俺たち騙してたのか?!』
からのボコボコパターン。
……メンタルがガリガリ削れた。
『いや、いやよラビーちゃん!!ラビーちゃんを殺せない!!』
からの、ノーマルエンドコース。
真っ青な空に、息絶えたルーナを抱きかかえるソル君。
……メンタルがゼロになった。
「お~いセンセイ、倒してきたぞ~!……?なに寝てるんだよ?」
「うっさいでござる。乙女の傷心分かれでござる」
私は深くため息をついた。
生きるのも死ぬのも、なんだか大変そうだ。
このトレジャープリンは、だいたいのレベルが65付近に設定されている。
らしい。
で、レベルが65未満のパーティには美味しい経験値なのだが、65を越えると途端に経験値の上がりが悪くなる。
勇者達があっさりとトレジャープリンを倒せるようになると、私は終息を宣言した。
ここに至るまでにドロップさせた忍刀・五月雨は6本。
大収穫である。
「とりあえず今日はこの島でテント張って休むでござるよ。船に乗らない限り、プリンは現われないでござるからな」
この忍刀・五月雨が覚えさせてくれるアビリティ”五月雨斬り”がすごいのだ。
なんと4連続のダメージを敵に与えてくれるのだ!!
お分かりだろうか?
つまり力のステータスを上限までカンストさせると、4連続で9999のダメージを1回の攻撃で稼いでくれるのだ!!
ルーナがイベントで覚える”サクラメント”と並んで、最強アビリティの一つなのだ!!
返す返すもディーノさんやソル君に同様の複数攻撃手段がないことが悔やまれる。
彼らはどんだけ頑張って、どんだけ強くなっても一度に9999のダメージしか与えられないのだから。
そう、最強に育ててしまった時、最強なのはジャンなのだ、悔しいことに。
次点でルーナ。
次点なのは何故かというと、”サクラメント”は魔法で、けっこうMpも必要とするので連射性が低いのだ。
”五月雨斬り”もMpはいるけど、ルーナのに比べると笑えるほど低い。
ジャンの最大Mpを換算したって低すぎるぐらい低いのだ。
「くっ、開発者様は意地悪でござるっ……」
あの!!
あのディーノさんが最強でないなんて!!
世の中はなんて不公平なんだ……!!
「センセイ、そんなに肉食いたかったのかよ~」
「うむ、育ち盛りだからな」
……私はありがたくハンバーグを追加してもらった。
え?
結果オーライだよね?
読んでくださってありがとうございます!!




