トレジャーなあいつ
4方に評価していただきました!!
ありがとうございました!!
水の聖域は、随所に滝や広い池がある、とても屋内とは思えない広大なダンジョンだ。
水中戦はないが、小舟に乗って移動する時に敵とエンカウントすることはある。
ゲームでは、どうやって小舟の上で戦っていたんだろうと思っていたのだが……現実では、ジャンが瞬殺していた。
「ん?転覆したら困るだろ?」
そりゃまぁそうデスね。
トビウオかっていう感じで水中から弧を描いて小舟に突入しよう!
……とした人面魚を、
「きもっ」
とか言いながら一刀両断。お前は侍か。
「ジャン、経験値を独り占めしないでくれるかな」
「ソルもほら、来たぞ」
「ん」
片手間に電撃を飛ばして感電死させるソル君。
「切り口が甘いな。――そら」
ズバァァァッ!
水面まで切り裂くディーノさんの剛剣。
……ディーノさん、ジャンはシーフだから。
盗むのが本来の役目な人だから!
「う~ん、やっぱり手首の安定性が違うよなぁ……」
おいシーフ。侍剣士の甘言に乗るんじゃない!
「わ、私も――っ!」
「「「「ルーナは座って(なさい((ろ(て))))」」」」
全員による一斉射撃に、若干涙目のルーナ。
ダメだよルーナ。
あんな脳筋の戦い方を目指しちゃ。
「大丈夫、ルーナの出番もちゃんとあるから」
ソル君、その場限りのフォローは逆効果だと思うけど?
「はい、ソルさん……」
イ、イヤアァァァァァッ!!
私のルーナがチョロインになってるぅぅぅぅっっっ!!
不意にポン、と私の肩にディーノさんの掌が乗せられた。
「しょうがない、親とはそういうものだ」
「くっ」
「いやディーノさん、昨日センセイを子供扱いしたの、ディーノさんでしょ」
「嘘も方便と言ってな」
……なんかもういいや。
ディーノさんが渋くニヤッと笑ってくれたし。
「あ、その島を右回りに躱すでござるよ」
宝箱の回収も順調だ。
勇者達の現在レベルが大体50。
できればこのダンジョンで70まで上げたい。
20も上げるのかって?
フフフ、このダンジョンは後半の有名なレベル上げの場所があってね。
ショタ王を倒す前という条件下で、何度も出会える経験値の豊富なモンスターがいるのさ。
そのモンスターの名前とは……トレジャープリン!!
私じゃないぞ!
違うプリンだぞ!!
この水の聖域19階にある、とある小島にだけ出現する幻のプリン。
……いや、だから私じゃないって。
なぜかショタ王と戦う前なら何度でも再出現するお茶目なプリンだ。
さぁ、狩りの時間だ!!
その小島は、小高い丘のように高低差のある島だった。
とは言っても頂上までラビーの足で……20歩?ぐらい。
その頂上に、燦然と輝きながらブルブルッと体を震わせる、なぜか王冠を被った巨体こそ、トレジャープリンだ!!
トレジャーなプリンらしく、体色は眩い金色!
同色のせいで頭の王冠がちょっと霞んで見える気の毒さもポイントなキュートプリンだ。
……大きいけど。
「うわ~……」
さすがのジャンも、言葉もないらしい。
「ずいぶん、その……派手なモンスターだね。プリン、なのかな?」
「そうでござるよ」
そのプリンは、煌びやかな王冠を被っているだけではない。
なんと、体の随所に宝石(と思しき色のついた透明なナニカ)を埋め込んでいるのだ!!
あぁ……なんてゲーム通りのお姿。
想像よりちょっぴり大きくてちょっぴりブルブル早い動きだけど、何度もお世話になったあのお姿に間違いないわ~。
「……美味そうだな」
え?!
え……あぁ、透明な宝石っぽいアレがグミみたいに見えるんだろうか?
それとも全体的にゼリーみたいな感じ?
……ディーノさんってさ、山奥に籠もっても生きていけるタイプの人だよねっ。
「なぁセンセイ、あれって戦ってたら逃げたりしねぇの?」
あぁ、どこぞのメタリックなスライムみたいに?
……ゲームが違うわ!!
逃げないよ!!
むしろレベル50だと油断してると殺られるレベルだからね?!!
「むしろ自分たちが逃げる心配するでござるよ!!強いでござるからな?!全属性半減するから、ソルの戦力はあてにならないでござるよっ!!」
プリンには物理ではなく魔法、という思い込みを真っ向から否定してくれる、心憎いあいつなのだ。
「だからって剣も効きにくいでござるから、ひたすら耐久戦でござるよ!ベールとプロテクトをかけて、回復しつつ長期戦に挑むでござる!!」
勇者達の後方から叫ぶ私の声に、脳筋は生き生きした顔で笑った。
「強いんだと、アレ」
「腕が鳴るな」
「思いっきり魔法を放てるのは久しぶりだね」
なんだろう、いつの間にバーサクかかったんだろう……?
「が、頑張るね、ラビーちゃん」
「ルーナ!!」
ルーナだけが常識的な私の心の癒やしだよ!!
威勢はいいけど、結局とんずらで泣く泣く帰ってくるんじゃないかと思っていた時期が、私にもあった。
むしろちょびっとぐらいなら痛い目に合ってしまえとか、最初にこのトレジャープリンに全滅させられた経験を持つBF6マスターは思っていた。
だが。
グニュン、とディーノさんの剣を飲み込もうとするプリンに、それはもう修羅のような凄まじい笑みを浮かべつつ、飲み込まれた先のプリンの体内を切り刻むディーノさん。
楽しそうに精霊王を喚び出しては試し打ちするソル君。
これまでカーリーお姉様以外はあんまり使ってこなかったのだが、セト様の硬派な出現っぷりにちょっと満足そうだ。
あり得ない斜め上方からダガーごと降ってくるジャン。
そのまま体重を乗せて斬りつけた後、どうやってかまた空中に逃げていった……。
「……うわ~……」
後衛のルーナがフォローに回っている姿だけが癒やし要員だった。
「BF6マスターってナンダロ~……」
こいつらこんなに強かったんだ~……。
いや、むしろ敵が強ければ強いほど燃え上がるタイプと見た。
どこぞの星の戦闘民族か!
こうして、私のお仲間プリンは儚く、経験値の肥やしにされてしまったのだった……。
「これ、どうやったら再戦できるんだ?!」
戦闘の滾りを残したままっていう感じでいつもより若干目のぎらついたジャンがそう尋ねた時。
「うっさいでござる。男が強敵を倒した時は、黙って合掌でござろうが!!」
と八つ当たりしてしまった私は悪くない。
読んでくださってありがとうございます!!
勇者達がどんどん人外になっています。おかしい……そろそろシリアスパートが来るはずだったのに(笑)
シリアスってナンダロー。




