うさ耳フード
ジャンのキャラ崩壊について、私はテントに寝そべりながら深く考えていた。
ちなみにこのテント、箱の蓋を開ければ一瞬にして寝袋付きのテントが出来上がるという優れものだった。
これもアビリティによって作られたものらしい。
テント内にカーテンのような物が下がっていて、これで男女の仕切りができるということだった。
これが案外凄くて、ただの布のようなカーテンが実は壁のような遮蔽・遮音性を持っていることに驚愕したものだ。
おかげでルーナたんの着替えに神経を配ることもなく、安心してくつろぐことができるのだ……!!
だが問題はそこではない。
私は今、キャラ崩壊について本気で考えているのだ。
だってゲームでは女好き・色男だったジャンが、亜人のラビウサに異様な言動を繰り返す変態だったのだ……!
いや、本気じゃないとしてもちょっとしつこいというか変態的というか。
そりゃあソル君はゲームの空気感が嘘のように粘着系吝嗇勇者だけど。
……ディーノさんもまさかの甘党・ヒグマ父だったけども。
…………。
…………。
…………あれ?
むしろルーナたん以外、みんなキャラ崩壊してる……?!!
――私は目を閉じた。
世の中には、考え過ぎちゃいけないことがある。
疲れた時はさっさと寝るべし。
私はその日、新しい教訓を得たのだった。
翌朝。
「なぁセンセイ、先に精霊王と戦ってから下の宝箱取りに行ったらいいんじゃね?」
と宣うジャン。
手には朝からバーベキューの串。
アビリティで作ってくれた人に謝れと言いたい朝食風景だ。
「ダメでござる。精霊王様と戦う前に取らないと、中身が消滅してしまう宝箱があるんでござるよ!」
何を隠そう、17階の小部屋にある宝箱がそれだ。
17階という数字に、開発者様の深い意図を感じる。
18階までならその宝箱の中身だけ取ってセト戦に挑めた。
15階なら最初から諦めて、15階までの他の全ての宝箱を回収できた。
それなのに17階!なんて小憎たらしい数字だろうか……!!
「中身はなんだ、ラビー?」
問いかけるディーノさんに答える。
「なんとなんと、二着目のうさ耳フードでござる!!」
回避と精神を上げてくれる素晴らしい防具だ!
精神を上げることで、悪いステータス異常にかかる可能性を減らしてくれるのも地味に嬉しい。
私はBF6をプレイ中、終盤のレベル上げではパーティ全員にこれを装備させていた。
回避を上げ、素早さを上げるアクセサリを装備することで敵の行動を許さずハメ殺すことが可能になるのだ。
「……え~……」
だというのに!!
無礼千万にも勇者達は渋い顔を始めた。
「な、何が不満なんでござるよ?!うさ耳フードでござるよ?あのすんばらしい防具でござるよ?!」
「だってなぁ……ルーナと同じ恰好になるわけだろ?うさ耳。ルーナなら似合うだろうけど……百歩譲ってソルには似合うかもしんないけど、俺とディーノさんはなぁ……」
「はっっっ?!」
私は我に返ってしげしげと男性陣を眺め回した。
……百歩譲って、と言われたが、ソル君もダメな気がする。
大好きな彼女とペアルックしたくて失敗しちゃったイタい男の人に見える気がする。
例のテーマパークでしか許されないレベルの外しようが、勇者新聞によってこの世界にばらまかれるかもしれない……?!
「……え~……でも、3200ビル……」
せめて売るとか。
いやでもあの装備効果は捨てがたい。
「いや、重ね着とか……」
うさ耳フードの上にマントを着れば、ちょっとモコつくけどなんとか着れるんではなかろうか?
「……しょうがない、さっさと行って、取ってこようか」
守銭奴のソル君が決定を下した。
う~ん、現実世界の装備って難しいなぁ……。
まさか男性が『かっこ悪いから』って理由で装備を断るとは考えもしなかったよ。
全状態異常防御のムーンピアス、彼らは装備してくれるんだろうか……?
願わくばシンプルなデザインでありますように……!!
結論から言おう。
ソル君のうさ耳フードはアリだった。
たぶん、ジャンもイケると思う。
ディーノさんはバイキングみたいになりそうだけど、それはそれでアリだと思う。
何故か?
試しにソル君に着せてみると、色が勝手に変わったのだ。
黒に!
あと、うさ耳も猫の耳に変わったのだ。
「すごい装備でござるね!!人柄を読んで変化を起こすとは、まさに神秘の防具……!!」
「確かにソルって黒猫っぽいよな」
黒猫というと、不運を呼んじゃうアレの方かな。
運送屋さんの方じゃなさそうだ。
「ソルさん、似合ってる!カッコいい!――あっ……」
ルーナたん、しまったって顔で口元押さえるの、やめよう?
ソル君が気持ち悪いぐらいに上機嫌になっちゃうから。
あと、照れて赤くなるのもやめよう?
むしろそんな粘着質な問題物件、やめちゃおう?
ルーナたんがソル君のことをなんとも思っていなかった頃はソル君を憐れんでいた私だが、最近ルーナたんのベクトルがソル君に向かっているのを感じるとなんというかこう、舌打ちをしたくなるような気持ちに囚われる。
可愛い娘が悪い男に引っかかりそうなのを見ている母親の気分だ。
『世の中は広いんだからもっとイイ男見つけなさいよ!』って言ってやりたい。
あと、ソル君のにやけ顔が地味にムカつく。
「ルーナの方が似合っているよ。とても可愛――」
「はいっ、終了終了~!!」
無理やり割って入ってやった。
「ラビーちゃん」
ルーナたんがホッとしたように私を見た。
うんうん、プリンセスには刺激が強すぎるもんね。
大丈夫、私がちゃんと悪い虫から守ってあげるからね!
「――このクソウサギ……」
聞こえない聞こえない。
「さぁ、急いで精霊王様にお目もじするでござるよ!!」
確かこの旅って急ぐもんね!
イチャイチャしてる時間なんてないはずだもんね!
読んでくださってありがとうございます!!
今日はなんとか投稿できましたw




