表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/105

雷の聖域


 最初はどうなることかと思ったが、その後の勇者達は順調に聖域への道のりを進んでいった。

 街道を、モンスターを倒しながら進んでいくと見える、巨大な遺跡。

 石を積み上げて作ったような遺跡が、天高くそびえている。

 全体的に横に大きいが、一部だけ塔のように高い部分があり、そこが雲にかかるほど高く見えている。


 とは言っても実際に踏破するのは20階で、途中途中に上に向かうエレベーターのようなものがあって、それに乗って高さを稼げる構造になっているのだ。

 聖域の周りの雲だけがどんより曇り、不穏な稲光を蓄えている。


「野良犬に噛まれたと思ってさぁ」

 ルーナたんと私の前で、ジャンがソル君にじゃれかかっている。

 わざとソル君を怒らせてイチャイチャしようとする、私には理解しがたい男同士の友情を順調に育んでいるらしい。

「――黙れジャン」

 ソル君がルーナたんに聞こえないようにこそっと低く警告していた。


「巨乳美女とキスなんて役得でござろうにねぇ」

 私がついうっかり本音を言うと、クルリと振り返ったソル君から怪光線が飛んできた。

 精神波なアレだ。

 ゾクッと寒気が走ったので、私は慌てて口を閉じた。


「……キス……」

 その時、ぽつりとルーナたんが呟いた。

 唇に右手をそっと触れさせるというポーズ付きで。

 そうそう、あったよこういうイベント……というかシーンが!

 今頃ルーナたんの心の中では、(ルナ)にいた時の記憶が僅かに蘇ってきているのだ。

 ”キス”というキーザードで。


 ……あれ?

 私の言葉がきっかけ……?

 いやいやいやいや、違う!

 ジャンとソルの会話からすぐ分かるから!

 キーワードは!


「ルーナ……?」

 粘着系束縛男であるソル君が振り返ったままじっとルーナたんを見つめる。

 探るような色があるように見える。

 私の思い込みかもしれないが。


 ルーナたんはソル君の呟きに気づかないまま、口元に当てた指先をそっと揺らした。

 例のお嬢様とは違う、そっと触れるだけのキスを連想させる優しい動き。

 でもだがしかし。

 ソル君の形相が変わっているのを私は感じる。

 無表情なんだけど、無表情なりに眉毛の0.01ミリの僅かな動きとか、ぐっと肩に入った力とかでものすごく不穏な空気を感じるわけだ。

 おりしも空は雷色。

 なんてソル君の心情に合致した光景だろうか。


 いいじゃん、そっと触れあう軽いキスぐらい。

 しかもルーナたん的には親愛のキスだったんだしさぁ。

 ねぇ?

 例え婚約者であったローライトの方はルーナたんに特別な感情を抱いていたんだとしても、ルーナたん的にはドキドキしない心落ち着くキスだったんだからさぁ。

 っていうか、婚約者のローライトといいソル君といい、ルーナたんの周りの男ってちょっと粘着系入ってないかなぁ?

 男運悪くてルーナたん、可哀想……。

 ルーナたんは過去の断片を思い出しながら、心の中で呟くんだ。


『いやじゃなかったけど……ドキドキもしなかった……』

 ローライトさんっ!

 あなたの思いはこれっぽっちも伝わってなかったよ!

 あんまり好きなキャラじゃなかったけど、大好きな女の子に”ドキドキしなかった”なんて言われて心底可哀想だと今だけは同情するよ!


「――ルーナ」

 回想するルーナたんを見ながら身悶えしていたので、いつの間にかソル君が側にいて心底びっくりした。

 まぁ私の側というより、ルーナたんの側だけどね!

「――……ソルさん?」

 深い夢から覚めたみたいにルーナたんがソル君を、茫洋とした無防備すぎる眼差しで見上げた。

 だ、ダメだよそれ!

 自分の感情を隠している(つもりでいる)ソル君でもクラッときてブチュッてしちゃうよっ!


「――っ。……ルーナ。

 行こう。聖域はもうすぐだから」

 ソル君……!

 よく耐えた!

 ここでブチュッてしちゃったら多分だけどシナリオ狂っちゃうからね。

 ナイスファイトッ!




 遺跡の1階部分は僅かに水没していた。

 とはいっても、靴を濡らす程度の水没具合だが。

 この1階でのみ、水属性のモンスターが現われ、藍色の小石を落としてくれるのは開発者様(神様)のご意志だと思う。

 ここまで来て、なおかつ水属性の攻撃手段を持たないプレイヤーがいるとは思えないが、これから先、アタッカーのMpが切れた時のための保険も兼ねているのだろう。


「この階ではアビリティのことは忘れて本気で戦っていいでござる。

 この階である程度小石を集めたら、2階からは今まで通りアビリティ無駄打ち戦法で頑張るでござるよ!」

 なんせこの1階部分の敵は水属性である。

 つまり弱点は雷属性なのだが、残念ながら今のところ勇者達は雷属性の攻撃手段を持たないから油断しているとそれなりに危ない。

 それなりというのは、開発者様(神様)のご意向によるサービス階なので、出てくる敵のレベルが低く、属性攻撃を使わなくてもあっさり倒せる敵ばかりだからだ。

 とはいっても、油断しきってビル投げやら盗むを連打できるほどではない。


 なので簡単に倒しつつ小石集めが正しい攻略だ。

 ついでにソル君がファイアやブリザードを使って魔法の進化を試みてもいいが、やはりこれから長丁場になるのでMpは節約した方がいいだろう。

 ルーナたんも回復はケアーじゃなくてホワイトワンドで殴っておく方がいいだろう。

 何回も言うが、長いので。

「さぁ!頑張るでござるよ!」

 私は戦わないけどね!




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ