亜人化
鑑定というアビリティでは、自分の詳細なステータスを見られる。
敵のはHpやMp、名前や弱点ぐらいの大まかなもの。
その鑑定で自分を見ると、私の外見まで映像化してくれる。
すごく便利だけど、何だろう、このホワイトチョコな苺ミルクプリン。
全然強そうじゃないし、進化した感じもしない。
強いて言うなら牛乳プリンよりちょびっと高そう、ということぐらいじゃないだろうか?
いやいや、きっと強くなってるんだわ!と気を取り直してデザートプリンセスという名前に意識を集中する。
デザートプリンセス:封印の四獣の一つで最弱。弱点は雷。デザートが作れる。
……あ~、何が衝撃って自分が封印モンスターだったってことだわ。
確かにね。
この低レベルの迷いの森でレベル42なんて、そんなモンスターいたっけ?とは思った。
ちらっとね。
でもなんてったって転生初心者な私は、『転生したからかなぁ』とスルーしたわけだ。
深く考える余裕もなかったしね。
勇者達が私に殺されてしまったらそこでこの世界は(たぶん)滅びてしまうことだし、焦ってもいた。
でも。
確かにいた!
迷いの森の、画面がちょこっとギザギザしている所から移動できる隠し場所にいるプリン状のモンスター。
確かBF6では封印のプリンという名前だったんだけど、正式名はデザートプリンセス(もしくはシュガープリン)だったんだ……。
この封印の四獣は、裏ボスの出現条件に深く関わってくるモンスターだ。
四獣を倒して封印の鍵を手に入れる。
その鍵を使って封印を解いたら裏ボスが出現する。
裏ボスを倒すことで真のエンディングに至る、という流れ。
この封印の四獣はなかなかくせ者で、プリンはまだ分かりやすい場所だけど、キマイラやらサーペントはかなり性格の悪い出現場所にいて、条件を満たさないと出てこない。
でも倒すと良い武器がゲットできるので、初期からレベルを上げて倒すという攻略法もあった。
私の場合はデスブリンガーをドロップする。
ディーノさんの専用武器だが、メインアタッカーであるディーノさんが終盤まで使える武器を序盤からゲットできるなら、ということで頑張るプレイヤーも多くいた。
ところが。なんとこのプリン、終盤になってシーフのジャンが覚えるアビリティ”よいものだけを盗む”を使うとムーンピアスを盗めるのだ!
BFシリーズ一貫して全状態異常(もしくは複数状態異常)を防ぐスーパーアクセサリー。
終盤の必需品。
しかも封印の四獣からしか盗めない。
私なら終盤に倒すね。デスブリンガーは惜しいけども。
……あ、倒されるのは私だよね、ハイ。
さて、気を取り直してステータスをチェックしよう。
デザートプリンセス Lv.42
Hp:8500
Mp:800
アビリティ:糖弾、鑑定、黒魔法(火・氷・水)、デザート作成、亜人化
進化したけどレベルはそのままのようだ。
でも、HpやMpが増えているし、アビリティも増えている。
と、いうか。
亜人化?
え?変身できるの?
亜人ってドワーフとかエルフとかそんな感じ?
う~ん?
でもBF6は基本的に人間の世界を描いているから亜人なんていたかなぁ?
これはあれだね!
やってみろってことだよね!
ということでやってみた亜人化。
なんとラビウサ族になってた~……。
いやいや、嬉しいよ?
BFシリーズ通して永遠の癒やしマスコットであるラビウサ族になれて。
全体的な雰囲気は、立って歩く白ウサギ。
とは言っても、鳥獣戯画図みたいななんちゃって二足歩行型ウサギじゃなくて、どちらかというとシルバニアファ○リーみたいな、しっかりと直立二足歩行できるウサギ。
でも耳は一般的なウサギの半分ぐらいの長さしかない。
身長はたぶん100センチほどじゃないだろうか。
癒やしキャラが癒やしキャラである所以の頭身は4頭身……弱。
全身の毛並みは白く、頭部にはショートボブ程度の白い髪があった。
そういえばトーコもこんな髪型だったよね。
全身の毛は6センチほどでフワフワ。
自分で触っても気持ちいい。
でも頭とか手の毛は短くて2センチ弱。
頭は毛の代わりに髪がある感じ。
顔の部分の毛も薄い。
ぶっちゃけトーコに似ているような気がする。
転生したんだからもっと絶世の美ラビウサにしてくれれば良かったのに。
特にこの鼻。
もうちょっと高くてもいいと思うんだよね。
眉毛と睫毛の色はちょっと濃いめの灰色。
目の色は薄い赤色(ピンクともいう)だ。
これってプリンの体の色と同じだよね?
プリンのカラメル部分の色が髪と毛の色に反映されてる感じ。
手も足もヒトと同じような指があるし、体の構造はヒトとほぼ一緒のような気がする。
歯もあるし。
違うのは毛皮と耳だけと強弁すればできるかも。だって亜”人”だもんね。
「え~、あ~、ごほんっ」
声が出た!明らかに高い声。
ギリギリで耳は痛くないはず。
「え~……”拙者、ラビ―でござる”」
ラビウサ族と言えばラビーである。
もちろん、派生形としてラビオ、ラビミ、ラビタ、ラビジローと色々あるけれど原型はラビ―。
そして侍みたいな喋り方までがテンプレ。
私はしげしげと両手を見た。
ふわっとした白い毛に覆われた、短いけれど人っぽい指。
体全体もフワフワした白い毛に覆われている。
だが何か不自然なものを感じる……。
「あ、裸……」
私は慌ててアイテムボックスを見た。
何か、ラビウサ族でも着れそうな服は……皮のワンピース。
長いからこれをショートダガーで切ろう。
「うむ、完璧でござるな」
生前からラビウサ族の喋り方はマスターしているので心からラビウサ族になりきれる。
「さて、ステータスは、と……」
デザートプリンセス(亜人化) Lv.2
Hp:85
Mp:20
アビリティ:デザート作成
「よ、弱いでござる?!」
叫んだ瞬間、嫌な視線に気づいた。
「?!」
狼とスライムの集団がじりじりこちらに近づいて来ていた。
「な、舐めるなでござるよ~っ」
シュンッとプリンに戻って、美味しくいただいた。
ご馳走様。
皮のワンピースがビリビリに破れてしまったので、次からプリンになる時は脱いでからにしようと思う。
さて、勇者達は無事に最初の町に到着したのだろうか?
カティア手前で無事にヒロイン・ルーナたんに出会えたのだろうか?
シュンッ
「ルーナたんっ!」
そうだ、我が愛しのプリンセス、月の巫女・ルーナたん。
「生ルーナたんが拝めるでござるよぅっ?」
遠目でいい。それでもルーナたんに会わずにはいられない!
こうして私は迷いの森を後にしたのだった。