宝箱回収
神殿街を抜け、私たちは商業区に来た。
昼食がてらこの近辺の勇者貯金を集めようというわけなのだが。
「う~ん、ラビーちゃんにはどんな服が似合うかなぁ……」
我らがルーナたんは一人真剣に私の服を物色していた。
もちろん、子供服である。
サイズで言ったら110センチぐらいの子供服が私にはぴったりだ。
別に気にしてなんかいない。
だってラビウサだもん。
むしろ子供服があって良かったと心から思っている。
子供服さえサイズが合わないような体だと、本気で毛皮生活しなければいけないのだから。
「あぁ、あそこのお店に入ろうでござる」
ゲーム内の街並み、店構え、店の配色など、あらゆる面から判断して私は一件の雑貨屋を指さした。
あそこだ!……と思う。
「そろそろ当たりが出るといいねぇ」
ソル君がぼやいた。
うぅ、確かに3連続で外したのは悪かったと思ってるよ。
でもゲームと比べて店の数が多すぎるのが問題だと思うんだよっ!
商業区も神殿街と同じく石造りの建物が多い。
この雑貨屋さんも、窓枠はお洒落に木で作っているが基本は石造りだ。
でも雑貨屋らしく、随所に木のリースやドライフラワーを可愛らしく飾っていて、冷たい感じが全然しない。
私は、何度も繰り返した失敗を繰り返すことはせず、まずは初心に返ることにした。
「おいセンセイ?」
サカサカっと背を低くして店内を歩き回ってチェックする。
ゲーム内ではカウンター横の分かりにくい所に置いてあったが……あった!!
試着室と思しき小部屋とカウンターの間に、見慣れた茶色と緑色のやつが鎮座している……!!
むしろあんな誰でも取れる場所に置いておいて、本当に勇者貯金の意味はあるのかとオーナーに問いただしたい。
再びサカサカと勇者達の元に戻り、グイッと親指を立てた。
「あったでござるよっ!今度こそ正解でござるっ」
喜びを共有できるかと思いきや、男性どころかルーナたんまでも微妙な顔で沈黙していた。
「……センセイ、今の動きってゴキ虫っぽかった」
ゴキ虫とはBFシリーズでの真っ黒なビッグGの呼び名のことであるが、まさかこの真っ白なラビウサを捕まえてそんな評価をされることになるとは!
「ち、違うのラビーちゃんっ!
もう、ジャンさんもラビーちゃんが好きならそんなこと言っちゃダメだよっ?!」
私が本気でガーンとヘコんでいると、ルーナたんがフォローともつかぬフォローをしてくれた。
優しい良い子。
でも嘘がつけないんだね、ルーナたん!
「――いい動きだった。
戦闘に加えたいぐらいだ」
あ~、まぁ、デザートプリンセスとしてならイケるかもしれないけどねぇ。
でもディーノさんのコレもフォローじゃないよねぇ。
「ラビーの動きが不審なのは今に始まった話じゃないけどね。
さぁ、店主に話を聞きましょうか、ディーノさん」
私の中でモノクロの映像が流れ始めた。
同時に始まるナレーション。
『……時々、思うんだ。
ソル君が冷たく流してくれるのって、じつは分かりにくい優しさなんじゃないかな、ってさ』
――興味ないからってだけだろうけどな!
二つの宝箱を無事にオーナーから入手した。
偉大な犠牲だった。
「この街は広いから、勇者貯金を誰が持っているのか分からないでござるよねぇ……」
と呟くにしてはちょっぴり大きめの声で主張してみたら、気のいい店主さんは商業区に声をかけてくれると力強く請け負ってくれた。
「みんなに声かけとくわ!
なぁに、おっちゃんに任せとき!
ぜぇんぶかき集めて宿屋に持ってったるわ!」
なぜに関西弁。
いや、この商業区の人は全員関西弁だったけど。
ゲームではこんなことなかったんだけどなぁ。
「やっぱりラヴァティー訛りはええよなぁ」
呆然としていたらジャンまでそういう言葉で喋り始めた!
「おや兄ちゃん、ラヴァティー出身かいな!
そら安せなな!
なんでも買うていき!
二割引にしとくわ!」
「おっちゃんソレ勇者割引と一緒やんか!」
「こら参ったなぁ!」
……ダメだ。
ついて行けない。
「ラビー、コレはどうだ?」
ディーノさんがレースがピラッピラの、3歳女児が着たらそりゃ可愛いだろうけどね?というピンクのワンピースを差し出してきた。
……ダメだ。
考えるんじゃない、感じるんだ!
感じたまま、ダメ出しをする時が来たんだ!
「成人女子の着る服じゃないから却下でござる!」
無心だ、無心。
左で交わされる漫才、右で押しつけられそうなロリワンピ、前方で繰り広げられる、
「これなんてルーナに似合うんじゃないかな」
というリア充爆発。
今なら般若心経が唱えられるような気がする。
ぎゃ~ていぎゃ~ていはら……ほにゃららそわか~。
「ラビーはコレにするでござる!」
ガッシと掴んだ服は――ちびっ子執事服。
「え~?!そこはメイド服やろ?!」
とジャン。
「うっさいでござるよ変態。
ラビーはルーナたんを守るイケメン執事になりきるでござるよっ!」
そう言って私は速攻で服を購入、試着室で着替えたのだった。
店を出た今では分かる。
あの店には魔物が住んでいた。
その魔物に私の思考力まで持って行かれたのだ。
その名は混沌。
なんて恐ろしい魔物だろうか……!




