ラヴァティー
セーフポイントを抜けると、そこは大きな街道が通っていた。
神都ラヴァティーから各都市へと向かう街道だ。
とは言っても、各都市に直結はしておらず、シューロスーラヴァティー間のように途中で途切れているものばかりだ。
でもまぁ、街道まで出れば宿屋もあるし、勇者一行が通る時でもなければ強いモンスターは出ない仕様だから一般的な旅人にはありがたい道路だ。
……勇者ってさぁ。
モンスターを引きつける匂いでも放散してるのかなぁ。
「えっ?!こんな所でガルーダがっ!
――勇者様!ありがとうございます!
いつもならこんな大物、出てこないはずなんですが……」
という会話が、この街道に入ってから既に3回目なのだが。
まだ最初の宿屋に到着はしていない。
さっきおやつの時間だったが、まだ太陽は夕日にもなっていない時間なのに、だ。
「ジャンの暗闇が効いてくれたから助かったね」
「ソルも魔力上がってねぇ?
お前の氷魔法であいつ、よろめいてたぞ?」
……勇者ってさぁ。
戦闘民族だよね。
ちなみにソル君の氷魔法が強くなっていたことに関しては私は一言もの申したい。
カーリーお姉様の時もそうだったけど、その属性の精霊(女)王の加護がもらえると、属性が強化されるのだ。
つまり、与えるダメージ量が増える。
まぁソル君が強くなっていないとは私も言わないけど、カーリーお姉様やツクヨミ様のおかげでもあるので、彼らに対する感謝と畏敬の念を忘れないようにしてもらいたいものだ。
「――っさすが勇者様だ……!すげぇ!」
感動している旅人A君、そもそもの元凶は彼らにあると思う。
勇者達モンスター誘因香でも放ってるんだよ。
はた迷惑な連れで申し訳ない。
はた迷惑な戦闘を、それから10度ほどこなしてようやく私たちは最初の宿屋に着いた。
もちろん、街道脇に目立たないように設置されていた宝箱は回収済みだ。
アイテムばっかりだったけど、Mp回復薬のエーテルはありがたい。
さてこの宿屋。
屋根の上に宝箱が見えます。
ゲーム内ではどうやってあの宝箱を取ろうか悩んで悩んで壁沿いにボタンを押しまくったりしたものだ。
「センセイ、あのあからさまな宝箱、取ってきてもいいか?」
出たよ脳筋シーフ。
いや、ジャンなら取ってこられると思うけど、ここは正攻法で――。
「ラビーちゃんっ、宿屋の女将さんがあの宝箱持ってくるからちょっと待っててくれって!」
――正攻法……正攻法ってなんだっけ。
「ジャン、勇者貯金は持ち主に確認を取ってから手を出せ」
はい、すみませんディーノさん。私もあそこの本棚の本を引っ張って、勝手に持ち去ろうと思ってました……。
「次こそルーナの防具があるといいんだけどね」
「……うさ耳フードがあるから当分要らないでござるよ……」
「あのマントを着ていると、ルーナを不躾な目で見てくる男が多いからね……」
不純だ!
天下のうさ耳フードをなんと心得おる?!
しばらく防具を買わないでいいほどの高性能のマントを手にしておきながら、ただの心の狭い粘着質な男が戯言をほざいている!
「可愛くて強いなんて最強の防具でござろうが?!」
「どこぞのウサギとお揃いだし」
「……あ~、嫉妬?」
もうこの際すっぱり聞いてみた。
そうするとなんたることか!
ソル君は頬を赤らめて
「っそんなんじゃない!」
と言い捨てて立ち去っていった。
え?自覚無し?
あんなにガッチガチに周りを固めておいて?
なるほどなぁ。
おかしいとは思ったんだよ。
ゲーム内のソル君は、最後までルーナたんへの想いを隠していた(途中からバレバレだったけど)。
なのに現実のソル君は初っぱなから飛ばしまくっている。
なんでかと思っていたら自覚してなかったわけか。
「……青いな」
「で、ござるな」
青い春と書いて青春。
……ソル君の青春かぁ。
今何となく鳥肌立ったよ。
このような旅程を経て、3日後にようやく私たちは神都ラヴァティーに到着した。
途中で手に入れた装備品はウォーターソードとサテンのローブ。
ルーナたんは前日の宿屋でうさ耳フードからサテンのローブに着替えさせられていた。
「戦闘はどうするでござるよっ」
と私が食ってかかったら、
「戦闘時に上から羽織れるだろう?」
と返された。
た、確かにゲーム内で防具は一つしか装備できないけど、例えば小手と鎧の併用なんて余裕で有りだ。
ワンピースのようなローブの上にマントも余裕でイケる。
「くっ!」
BF6マスターである私が、ゲームの常識に囚われて非常識になっているとか認めない!
……でもソル君って本当に頭がいいよね。
神都ラヴァティーが余りに大都会なので若干腰が引け気味の私とルーナたんだったが、あまりにいつもと変わらない勇者達を見ていると落ち着いてきた。
「すごく高い城壁だね」
ルーナたんがコソコソと話しかけてきたので、私もコソコソと囁き返す。
今までは城壁の高さにあんぐり口を開いていたので、喋る余裕がなかったのだ。
「あそこまで高いと日当たり悪そうでござるよね」
10メートルぐらいはありそうな壁だ。
「そろそろ行こうぜ!勇者一行だからお偉いさん用の門使えるしよ」
ラヴァティーの入り口である門には門番がいて、そこには長蛇の列が並んでいる。
が、入り口はもう一つあり、そちらは人影もまばらだ。
何故かと思っていたら、神殿の偉い人や町を治める長、役人などの専用門らしい。
そして勇者達はそこを顔パスで通られるらしい。
「精々一般の皆様に感謝するでござるよ!」
一番偉いのは納税者だと思うのだ、私は。




