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勝利と記憶


 (前世)から思ってたんだけど。

 ボス一体に対して4人で袋叩きって卑怯じゃないだろうか。


 ソル君のねちっこいファイア攻撃でついにツクヨミ様は止めを刺されてしまった。

 もちろん絶世の麗人ツクヨミ様だから、消え去る時にウボァーとかは言わない。

 悲しい、哀しい蒼い目を伏せて頽れ、雪の結晶が溶けて行くみたいに儚く消えていくだけだ。

 ……ちょっとソル君の方が悪者に見える。

 いやいや、感傷に浸っている場合ではない。

 ラビーに戻ってルーナたんとお揃いのワンピースを着込まねば!


『弱きは罪。願わくば我が罪の贖われんことを』

 ツクヨミ様の辞世の句が聞こえてきた。

 うわ~ん、ツクヨミ様が八つ当たりって言っちゃったけど、そんなことないよ~!

 確かにルーナたんは月の民だから元凶っちゃ元凶だし。

 ツクヨミ様がルヴナンからこの世界(テラ)を守れなかった後悔は分かるけど、そんなに自分を責めないでよ~!

 BF6のゲーム画面でも同じ台詞読んだけど、実際にツクヨミ様の哀しい悲しい声で言われると堪えるよ~!


「――何が言いたかったんだか」

 ソル君が吐き捨てた。

「そこへ直れでござるぅぅぅっっ!」

 思わず涙目で岩陰から躍り出た。


「ラ、ラビーちゃんっ――」

「心底見下げ果てた男でござる!

 ツクヨミ様がどんな思いであの言葉を仰ったか知らぬでござろうに!」

「いや、そりゃ知らねぇわ」

 冷静に突っ込んできたジャンをギリッと睨みつけた。


「知ってんなら教えて欲しいけどその前に。

 センセイ、なんでその服脱げかけなんだ?」

 んん??

 私は自分の体を見下ろした。

 可愛いくるみボタンが全部外れていた。

 ワンピースというか前を開いたパーカーみたいになっている。


「あ、悪いでござる」

 くるみボタンは可愛いけど、この毛むくじゃらの指ではなかなか留めにくいんだよねぇ。 

 もたもたと留めていると、慌てたルーナたんが駆け寄ってきて手伝ってくれた。

 なんていい子!


「もうっ、駄目だよラビーちゃん。

 女の子なんだから気をつけないと!」

「まぁラビーも同族の前では羞じらうかもしれないでござるがねぇ」

 嘘だ。

 同族で男性のラビウサがいたら抱きついて愛でると思う。


「もうっ、ジャンさんの前では気をつけないといけないでしょっ?!」

 ん??

 私はちらっとジャンを見た。

 うん。

 普通の顔してソル君と話している。

「ジャンはラビーにぬいぐるみ的な可愛さを求めてるだけでござるよ」

 タシタシとしゃがみ込んだルーナたんの肩を叩くと、ルーナたんらしくないため息をつかれた。

 何故だ。




 ツクヨミ様が消え去った、空虚な玉座を見つめて、ルーナたんは呟いた。

「……私、こんな景色を、見たことがあるわ……」

 ルーナたんの言動に敏感なソル君が、パッとルーナたんを見つめた。

「ルーナ、何か思い出したのかい?」

 探るようなソル君の声に、ルーナたんはゆっくり首を振った。


「ううん……でも、見覚えが……一人……寒くて、寂しくて……わたくしは、ずっと一人だった……ローライト、様……どこ、に……」

 ルーナたんはフラッと揺れた。

 水面に落ちる木の葉みたいに揺れて、そのまま気を失った。

「ルーナ!」

 ソル君がルーナたんを抱き留める。


「――センセイ、なんか知ってる?」

 ジャンが私に囁いた。

 知ってる。

 ルーナたんの月での部屋はこんな感じで青くて透明な柱があった。

 さすがにプライバシーの問題があるから壁は不透明だったけど、柱とか机や椅子などの家具とかはこういう感じで青く透明。

 だから、ルーナたんはそれを思い出したんだ。

 ローライトはルーナたんの婚約者。

 唯一、ルーナたんの部屋に出入りが許された男性。


「……いや?全然でござる」

 今、私が知っている情報を明かして、それでこの物語はちゃんと進む?

 全ての出会いに意味があるかもしれないのに?

 全部端折って先に進んで、それで本当にみんなが笑える未来が手に入る?

 私は首を振った。

 順番に、だ。

 何も飛ばすべきじゃない。

 例え、順番に辿る未来でルーナたんが泣いたとしても、それでも順番が必要だと思う。

 

 大丈夫。

 ちゃんと、見守るから。




 

 〈ラビーの素肌を見たジャンは〉


 ラビーがルーナに手伝われて服を着込んでいるのをジャンは横目で見ていた。

「やっぱり欲情してるじゃないか」

 ソルが手厳しく突っ込んだ。

「してねぇ。俺は巨乳が好きなんだ」

 最低だった。




「本当に全身が毛に覆われているのだな」

 ディーノはちゃっかりじっくり見ていた。

「――俺よりディーノさんのがヤバいじゃん」

「くっ、あんなのが義母(はは)なんてごめんだっ……!」

 父親としてディーノを慕っているのだとうっかりゲロってしまうソル。

 そもそもその言動からバレバレだったジャンとディーノは温かく見守った。

 ジャンはちょっぴり生温かい視線だった。


「いやでもディーノさん、あんまり年取ってから菓子だのケーキだの食ってたら体に悪いですからねぇ」

 さり気ないように見せながら牽制するジャン。

 ディーノはそれにも温かい視線を送った。

「くっ、勝てる気がしねぇ……!」

 勝手に負けたジャンだった。




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