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準備


 おばちゃんが帰ってきた。

 その後ろには何人かのおじちゃん達を連れている。

 クマ柄セーター率は8割だった。

 おばちゃんは居間には行ってくるなりおじちゃん達を急かした。


「勇者様、ささやかな品ですが受け取ってくださいねぇ。

 ――ほらあんた達、さっさと出しな!」

 前半と後半の語調の違いがウケる。

 こういうおばちゃん大好きだ。

 おじちゃん達は、あ~とかう~とか言いながら今の机にそそっとブツを置いてまたささっと出て行った。

 お礼を言う暇もなかった。


「――すみませんねぇ、どいつもこいつも物怖じしてるんですよ。

 ほら、なんせ勇者様ですからねぇ」

「ちゃんとお礼を言いたかったでござる」

 うさ耳をペタンと萎れさせてそう訴えると、おばちゃんは意外に繊細な指で頭を撫でてくれた。

「ごめんねぇ、どいつもこいつもクマみたいな顔してるから、美形を見るとビビっちまってねぇ」

 そう言いながらおばちゃんはソル君とルーナたんに目を向けた。

 あぁ、笑顔が可愛いルーナたんはともかく、むっつり無表情なソル君は迫力があると言えば言えなくもない。


「無意味な美形でござるよねぇ」

 ソル君を見ながらしみじみ頷く。

 もうちょっと温かみのあるというか人間味のある表情をしていれば、遠巻きにされるんじゃなくて人気者になれたのに。

 まぁソル君はアレだもんね。

 色々女性にまとわりつかれてトラウマになっちゃった過去があるからしょうがない。


「リーダーが申し訳なかったでござる。

 ああ見えても感謝しているでござる。

 皆さん方にはよろしく伝えて欲しいでござるよ」

 大人な私はきっちりフォローした。


「うむ、感謝している」

 後ろで重々しくディーノさんが頭を下げている。

 それを見て慌てて頭を下げるジャンとルーナたん。

 ソル君も一拍置いて頭を下げた。

 うんうん、いい子いい子。

「こりゃまたありがたいことですよ!

 ……ちゃんとみんなには伝えておきます。喜びますよ」

 ふわっと微笑むおばちゃんは、ちょっと可愛く見えた。




 さて、そのまま民家の居間で戦利品をチェックする。

 ついに。

 ようやく巡り会えたオークスタッフ!

 これまで散々精神攻撃でソル君が使用してきた氷魔法を、ついにソル君は名実ともに使う事ができるのだ!

 ふむふむ、ちゃんとエーテルにテント、ブロンズヘルムもあるね。


 テントって初めて見たけど、ぱっと見はただの四角い箱だ。

 ではなぜテントだと分かるのか?

 書いてあるからだ。

 商品名っぽいのがデカデカと。

 『テント』と。


 これで実はいわゆるテントじゃなくてメガポーションとかだったら笑える。

 泣きながら笑う自信がある。

 ちなみに姿勢は土下座態勢で、だ。


「これでいよいよ氷の聖域に突入できるでござるね!」

 いよいよこれでジェンダーレスなツクヨミ様にお目通りが叶うのだ!

「道具は?

 ポーションとかもっと買っといた方がいいんじゃないか?」

 ジャンが私を覗き込みながらしごく真っ当なことを言ったので、私は一瞬呆気にとられた。

「ご飯もいるよね?携帯食の美味しい所、教えてもらったの」

 ニコニコしながら、役に立つのが嬉しくてたまらないみたいに胸を張るルーナたん。

 おいジャン、あんまり胸元見てるとソル君が――


「じゃあルーナは私と一緒に買いに行きましょうか」

 ソル君がジャンの首を180度捻った。

 し、死んでない?ソレ……。

「ではラビーは俺と一緒に道具屋と果物屋に寄るとするか」

 白目を剥いてるジャンを小突いて正気に返らせたディーノさんは落ち着いてそう言った。

 一瞬、ガハッという呼吸音が聞こえた気がしたが、気にしたらダメな気がする。

 えぇと、おやつ作りも旅には必須なんですね、ディーノさん?


「あ、じゃあ卵も買いたいでござる」

 頷くディーノさん。

 ……なんか……なんか新婚さんみたいだねっ!

「気をつけて行ってきな~」

 なんとなくおばちゃんの目線が生温かい気がしたけど……。

 うん、気にしたらダメだ。




 さて、いよいよ氷の聖域に向けて出発である。

 思っていたよりもみんながしっかりしていたので安心である。

 タジタジになんてなったりしてない。

 任せるって素晴らしいなと感動しているだけだ。

 ゲームと実際の生活は違うんだ、なんて衝撃に思ったりしてない!


「ディーノ殿、冷たいからってブロンズヘルムを脱ぐのはやめるでござるっ!

 そんなことしてたらアビリティが覚えられないでござるよっ!」

 確かに氷原を進むときに熱伝導性の良い兜をかぶって進むのは苦痛かもしれないが、ここは是非とも耐えてほしいところだ。

 だってアビリティの”ディフェンスブレイク”が覚えられないではないか!?

 敵の防御力を下げられるその技を使えば、ずいぶん戦闘が楽になるんだよっ?!


「敵が現れたらかぶる」

 えぇ~……まぁいいか。

 寒いもんね。

「センセ~、おやつはまだですか~?」

「……死にかけたのに元気でござるな……」

「ん?あぁ、あれぐらいなら大丈夫。心配した?」

 嬉しそうだな、ジャンよ。


「うむ。死体をどうしようか心配したでござる」

 なにせ勇者一行は記者に見張られているのだ。

 ”勇者一行が仲間割れで死体遺棄”なんて新聞は見たくない。

「またまた。照れてる先生も可愛いな」

「どっちにしてもジャンのおやつはないでござるよ?

 3回おやつ抜きって言ったの、忘れたでござるか?」

 ジャンがハッッ?!って顔をしていたので思わず噴き出した。


「そうよ、ジャンさんはお仕置きでおやつ抜きなんですからっ」

 後ろから腕が回って、私はルーナたんに抱き上げられた。

 後頭部に幸せな膨らみが当たる。

 ポヨンって。

 ジャンの絶叫は軽くスルーして私はその膨らみを堪能した。

 やっぱりいいよね~、女子の柔らかさって。



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