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多すぎるフラグ


 なんとなく雲行きが怪しいなと感じ始めたのは、ラヴァティー(三つめの街)に着いた辺りだった。

 ただ、この怪しいと思う気持ちもいまいち一つに絞りきれなくて、困ったんだが……。

 ラビー(センセイ)は、ソルとルーナに気を遣ってる。

 なんていうか、元気に見えるけど実は重病な人間を見るみたいな感じで見ている、ような気がした。


 そもそもソルはものすごくセンセイに対して失礼なのに、当のセンセイがあんまり怒らないんだ。

 トーコなら、もうちょっと喧嘩っ早かった気がする。

 弱い癖に戦闘民族で、つき合う前から見ていてハラハラすることが多かった。

 そんなトーコなら、ソルのあの無礼な対応にもう少し怒ってもいいと思うんだが、やけに大人の対応を心がけていた。


 ……まぁ、ソルは頭はいいけど性格が可愛い所があるから、センセイもそういう目線なのかな、とも思った。

 しかもソルの未来を考えると……たぶん、センセイはあのことを知ってるんだろう。

 でも……ルーナを見る目が、ソルを見る目と同じような、時々切なそうなのものに見えた。

 BFシリーズでは主要キャラが死亡とかいうのはなかったと思うんだが、初期のBFでは主要キャラの犠牲で先に進めたりするイベントもあった。

 俺はリメイクしたのをプレイしたんだけど。


 だから、もしかしたらルーナもそんなキャラなのかもしれない。

 そんな風に嫌な予感はしてたんだけど、まさかその予感がセンセイにまで範囲を広げるなんて思いもよらなかった。





「どうせルーナやディーノさんにはただなんだろ?

 いいじゃねぇか、二割引!」


 わいわいといつものように言い合って、クールに俺を放置して寝始めたトーコの頬は……濡れていた。

 あの時、俺はラビーと俺の未来の話をしていた。

 ……なぁんか、嫌な予感になるだろう?


 この世界が危険だから、何があるか分からないから。

 そんなのとは別次元の、もっと確率の高い話として……トーコに、ラビーに何かあるんじゃないか。

 そのことが決まってるんじゃないか。

 

 この世界で奇跡的に会えた、トーコ(大好きな人)を失うかもしれない。

 そんな予感に震えた俺ができることなんて、体を鍛えるための訓練しかないわけで。

 強くなれば、トーコを失わずにいられるかもしれないと、俺はいっそう真剣に訓練にのめり込んだのだった。


 だから、BFシリーズの常連である美脚担当のアテ嬢がトーコを吹っ飛ばした時、俺の理性もぶっ飛んだ。

 トーコと一緒に下着をのぞき見たこともあったのに、あの時の俺にはただ『る』という二文字しか浮かんでなくて。

 ルーナのおかげでトーコは回復して、俺も回復魔法習えないかとルーナに問い合わせ、プラチナブロンドの美女から生温かい目で

「ジャンさんには、無理だと思うな……」

 と告げられた時はわりとショックだった。


「大丈夫、ラビーちゃんは私が守るから!」

 いやいやいや、それ俺の役割だから!

 ……全く、ルーナが戦闘民族になったのは、センセイのせいもあると思う。

 チョコチョコ動き回るセンセイを敵から守るのも、人がやるより自分でやった方が精神衛生上いいからな!




 センセイのフラグ立てが留まることを知らないまま、ルーナの死亡フラグは破壊され、ソルはルーナに思いを打ち明けた。

「りょ、両想いだったんだよ……っ!」

 と感涙にむせんでいたあの姿をぜひルーナにも見せたかった。

 どう見ても両想いだったのに、本人達だけが気づいていない甘酸っぱい空気からようやく解放されてホッと……できなかった。

 

 ……おいトーコ。

 なに勝手に死ぬの覚悟してんだよ、こら。


 とはいえ、センセイは俺の娘ポジションだから。

 ちょっと親子にしては濃い目かな? ってぐらいの触れあいしかしていない。

 ほら、センセイは照れ屋だから。

 ……そして、たぶんトーコはまだ隠し事してる。


 それが分かったのは、もうどうしようもないタイミングだったけど。

「プリンを倒さないと、本物の月の剣は手に入らないでござる。

 月の剣がなければ、ルーナかソルが死ぬでござる。

 もしくは、テラが滅びるでござる。

 だから。

 だから、絶対に倒すでござるよ」


 そういうことか……。

 トーコはラビウサじゃなくて、このピンク色のプリンだったわけだ。

 ……プリンになっても可愛いのな、トーコ。

 あと、ソレっぽい鍵、透けて見えてるぞ。


 ディーノさんはわりと大ざっぱだし、ここはトーコの一大事だ。

 娘ポジションのセンセイの一大事でもあるわけで。

 だから俺がプリントーコと対峙した。


「――センセイ。

 ちょっとだけ痛いの、ごめんな」

 なるべく痛くないように、とは思っても、体内に拳を突っ込むのは相当痛いと思う。

 とにかく、迅速にやり遂げてルーナに回復してもらわないと。


「ジャン、先に盗めって言ったでござるよ!?

 あと、倒さないとダメでござろうがっ!

 せっかくちょっとは見直したってのに!」

 せっかく無事に乗り切った大手術――気分は天才外科医による難易度の高い頭蓋内手術を執行した気分だ――もなんのその、トーコは怒り狂っていた。


 え、怒り狂っていいの、俺の方だよな?

 プリンだったから良かったものの、キマイラとかでトーコに万一のことあったら、この世界のことなんてどうでも良くなってんぞ、俺。

 まぁ、トーコが無事だったからもういいや。

 転生してましたなんて、今さらな事情を打ち明けてくれる程度には心を許してくれてるんだろうと思えたし。


 ……トーコ、ラビウサじゃなくて人間に変身できないのかな……そう思った俺は、絶対に悪くない。





 

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