第6話 ドラゴン防衛戦 中編
さっきまで晴れていた天気が急に雨になった
まるでドラゴンを待っていたかのように天候が変わった
そして、40人以上の冒険者は必死にリザードドラゴンと闘っていた
そう、みんなこの町を守るために一致団結して戦っているのだ
だから俺も頑張って先輩の冒険者たちに負けないように
闘うことを決意した
まず簡単にこの戦いのメンバーと役割を説明する
この戦いに参加した冒険者の人数は44人で
そのうち20人がアタッカーで
ヒーラーが12人、ソーサラーが12人だ
これは俺と霧男と恋聖も含めて44人ということだ
今回与えられた俺の役割は後衛のアタッカーだ
なぜ前衛じゃないかというと
俺はレベルが30以下の初心者冒険者の為
前衛で闘うと最悪死に至る場合があるからだ
だから前衛で闘う冒険者は最低でも30以上ないと前衛で闘う事ができない
だから後衛で闘う俺は遠くから戦闘時に支給される剣を
投げてドラゴンにダメージを与えさせるのが主な役目
そしてこの剣は冒険者にあたらないようにプログラムがインプットされているため
間違って前衛の冒険者にダメージを与えさせるという事は一切できないため
それは安全してなげることができる
剣を投げるだけでなく
銃撃の玉も味方の冒険者には当たらないようになっている
剣を投げる役割は格闘士と剣術士などの後衛にダメージを与えることができない
冒険者のみ投げることができる
後は後衛でも攻撃ができる
攻撃魔術師や弓術士や銃撃士などはこの剣を投げることはできない
だが代わりに魔力回復薬や弓や銃の弾などが配布される
とにかく俺の役割は剣を投げる事だ
霧男は銃でドラゴンを討つことが役割
だから決められた役割をやるまでだ
「よーし、ちゃんと当たってくれよ!」
霧男は目標めがけて引き金をひたすら打っている
もちろん連射で容赦なく
ダダダダダダダダダダダダダダっと
音が発射されていく
霧男が撃った球は15回中9回あてることができた
よし、俺も負けないぜ
「えっとまずは剣を5本くらいストックして投げ飛ばせばいいんだよな」
目標をめがけてまず一本投げ飛ばす
するとダメージが表示され800ダメージと表示された
そして、今頃気づいたのだがこの44人の会話をボイスチャットできるらしい
だからそれぞれ情報を教え合い
闘えるようだ
そして、指揮をとってるあの人がボイスチャットで警告をした
(目標はアタッカー方面へ向かっているため東へ避難して攻撃体制を頼む!)
(ヒーラーとソーサラーはそのまま同じ体制で回復と補助をお願いする!)
彼女が今いるところはアタッカー前衛で闘っている
俺としゃべって別れた後また戦いと指揮の仕事に戻ったそうだ
彼女の攻撃力は44人の冒険者の中で最も高く
STRもVITも1000以上らしい
HPは5桁入っている最強のプレイヤーだ
この人のHPバーが半分以下になる事が見たことないという噂も聞こえるほど
最強の冒険者なんだ
俺はあの人の言われた通りに東へ移動して攻撃体制へ入る
(本作戦を必ず成功させるぞ!みんな!頑張ってくれ!)
「よーし!また剣をドラゴンに命中させるぜ!」
まず体の方を目がけて投げ飛ばしてみる
剣は思いっきり飛んだが、残念ながら外れてしまった
それにしてもこんなに支給品をどうやって集めたんだろうか
あ、そういえばもう一つ役割があるって言ってたな
本作戦に直接的に参加してない人達がギャザクラで町を救う手伝いをして
そのアイテムを戦う冒険者に支給しているのだろうか
だとすればこの戦いに関係している人は44人以上いるってことか
50000人くらい協力しているのだろうおそらくは
みんな町を救うために必死に戦って武器防具回復薬を作ってサポートしているんだな
俺はその期待に応えたいから、頑張ってひたすら剣を投げ飛ばした
10本も20本も、飛ばした、まぁ当たった数は8本程度だったが
「くっそー!はずしまくったか―!」
「霧男!」
「なんだよ、今忙しいんだって」
「この戦いが終わったらまたあの店で飯をたらふく食おうな!」
「あぁ!わかったぜ、だが、死亡フラグ立てるのはやめろよ!絶対生きてかえるんだぞ!」
「おう!」
一方そのころヒーラー役に回されていた恋聖は
アタッカーの回復をしていた
「聖なる光よ…徐々に癒しの祈りをささげすべての者に祝福を与えん…!」
「ヒールガディア発動!」
ヒールガディアとはすべての冒険者にHPを徐々に回復させることができる
ヒーラーは主にこのヒールガディアを利用し、全ての冒険者に1秒に50ずつのHP回復をすることができる
ちなみに効果の時間は1分ほど
ヒーラーの12人が同時にこの魔法を使うと一秒で600回復させることが可能の為
ヒーラーが多い方が死ぬリスクが少ないのだが
残念ながらヒーラーをクラスに選ぶ人が致命的に少ないため
回復体制はこれだけしか集まることができなかった
「恋聖!もっと集中して!」
「はい!すみません!」
そう、恋聖は集中することができなかった
何故ならこの戦いで勝てる見込みが見えていないからだ
だから恋聖は死ぬ恐怖に恐れ、そしてあの二人が心配で仕方なかったそうだ
(怖い…死ぬのが怖い…またあんなことになるかもしれない…あの二人は無事だろうか…
生きているのだろうか…怖くて怖くてたまらない、集中できない…
だけど、今の私が集中しないとみんなに迷惑をかけてしまう
だから、今は与えられた仕事を果たすまでなんだ…だから…頑張る)
一分がたってアタッカーのHP回復が消えたところで
また恋聖は回復体制へうつる
「聖なる光よ…徐々に癒しの祈りをささげすべての者に祝福を与えん…!」
「ヒールガディア発動!」
するとMPが1割を切ったため、恋聖は支給品の魔力回復薬を
無我夢中で飲み干した、MPが全回復したところで再び回復体制に移った
(私…怖いけど負けない!先輩たちに負けるわけにはいかない!)
恋聖はそう心の中に刻みながら回復体制へ集中した
今頃みんな何してるんだろう
現実の世界にいる人達は何してるんだろう
俺がいなくて心配してるんだろうか
その前に心配してる人なんているのだろうか
家族はどうしてるんだろう
俺が今このデスゲームの世界に召喚されたことをどう思うのだろう
それが恋聖がしたことだと言ったらどう反応するだろう
俺だって死ぬのは怖い、デスゲームの世界から早くでたいし
本当はこんな闘い嫌だ
だけど、召喚してくれた恋聖を恨んだりしない
恋聖だって好きでこの世界にきたわけではないし
俺もそうだ、この世界に行きたくてきたわけじゃない
それはみんな同じだと思う
みんな同じだからこそ俺はこの世界を救い
みんなを元の世界に帰してあげたい
これは自分の為でもあるしみんなの為でもある
だから俺は今並べられた仕事を片付けることが大事だということを知っている
「はああああああああ!!!」
俺は剣をもう50本も投げ飛ばした
霧男も何回も何回も撃った
だがあれからかれこれ20分経過したのだが未だにドラゴンのHPが8割もあまっている
このままだと何時間闘っても勝てるかわからない
単純に計算したら1時間以上かかる
こんなに地道に戦っていたら冒険者の体力がもつかどうかわからない
そしてこの戦いのタイムリミットも迫ってくる
そう、このレイドバトルには残り時間があり今の残り時間はなんと
50分もないのだ
このままだとこの戦いに敗れて死ぬかもしれない
いいや、死ぬ、確実に炎の渦に飲まれて死ぬ
そんな事を考えていたら
俺とともに戦っていた見ず知らずの前衛の冒険者のHPが1桁を切っていたことをしる
「うああああああ!!やめ…ろ…!俺は…死にたく…ねぇ…!」
一人の冒険者は抵抗し、暴れて死にたくないと泣き叫び
目の前のもう一人の冒険者は大声でこう叫んだ
「やめろ…やめろおおおおお!!この人を殺すなああああああ!!!」
その瞬間、一人の冒険者が死んだ
それと同時に43人のメンバーに絶望の風が吹き
その風は激しく襲いかかってきた
さらに激しく降ってきた雨が廻りにいる冒険者全員に
心に深く染み渡ってゆく
そしてそれは俺も霧男も例外ではなかった
「なんだ…と…人が死んだ…?
なぁ嘘だろ…?嘘だと言えよおおおおおおお!!!!」
気づいたら霧男が怒っていた、憎しみがあふれていた
(もう駄目だ…もう勝てっこない…)
(俺達も死ぬのか…)
(嫌…!そんなの嫌よ!!)
(誰か…助けてくれ…!)
(夢だ…これは…夢だぁぁぁぁぁあああああ)
ボイスチャットでそんな会話が続いていた
俺も人が死んだことを目の当たりにしたのを見て
絶望した、もう残り時間も48分しかない、もう俺達死ぬしかないのか…?
そんなの嫌だ、いやだ…!嫌!死にたくねぇよ!
死にたく…ねぇんだよおおおおお!!!!!!!
恋聖も人が死ぬ姿を見ていて、絶望の渦が襲ってきた
(人が死んだ…?回復はちゃんとしていたはずなのに…?)
「人が死んだの…?うそでしょ…?」
これは嘘じゃない、現実だ
受け入れがたい現実なんだ
「これ現実じゃないよね…?私…変な夢でも見てるんだよね!?ねぇ!誰か答えてよ…!」
しかし誰も答える人間がいなかった
恋聖も何をいえばいいのかわからなかった
(嫌…死にたくない…私…死にたくない…)
俺と同じように絶望している
男、霧男が一言つぶやいた
「人の命ってなんでこんなに儚いんだよ…!」
そうだ、人はすぐに死ぬ弱い生き物だ
強いものだけがいきる世界
それはこの異世界でも変わらないんだ
俺は怒りもでないほどの絶望が溜まっていた
もはや深紅の炎も出すことができないだろう
もうこの世界は終わりなんだ
だが…
たった一人だけ希望を捨てなかった者がいた
そう、その人の名前は…焔心魔零だ
(みんな…一人の命が失われたのは…私の責任だ…私は人が死なせた事を償わなくてはならないんだ
だけど、みんなが諦めていたらこの町も壊れてしまうし、あの冒険者の命も
みんな無駄になってしまうんだ、だからあの冒険者の為にもあきらめるな!
私もまだあきらめてはいない…!この町を救うためには
冒険者の力が必要なんだ!だから!もっと力を振り絞れ!)
その声が町中に広まり拡散して
その言葉が43人の心の中に響いた
勿論俺の心の中にも
(そうか、まだ終わりじゃないよな)
(あいつの為にも俺たちが頑張らないでどうするんだ…)
(私、死ぬの怖いけどあの人の為にもこの戦いに勝たないと…)
あの言葉は霧男にも響いた
「そうだよな…もっと力を出さないとな…あいつの分までな…」
霧男は自分を完全に取り戻した
(そうさ、まだ限界だなんてみとめちゃいないさ!)
(さぁ!みんな!頑張るぞ!)
おー!!!
その声が43人の歓声が響き渡り
皆の心を強くさせ、本当の一致団結を達成させた
さぁ…本当の闘いはこれからだ…!
もう何があってもこの戦いで負けるわけにはいかねぇんだよ!!
こん畜生めぇ!!!
続く…!